第5話「トランス・フォーメーション」

セリフとト書き

[ オープニング ]

ナレーター: 異星人のとつぜんの攻撃を避けるため、超空間移動を試みた宇宙戦艦マクロスは、周囲の街を、島を、そしてあたりの海までを飲みこんで宇宙空間をはるか遠く跳ばされ、冥王星軌道付近へとたどり着いた。
マクロス艦内に街ぐるみ収容された人びとは、絶望の日々を過ごしていた。だが不安をいただきながらも、人びとは徐々に立ちなおりの兆しを見せはじめ、街は落ちつきをとり戻していた。

[ ミンメイが中華料理店「娘娘」のテーブルを拭いている ]
ミンメイ: [ 口ずさむ ]るーるる、るーるる、るーらら、らーんらららら、らー。
ミンメイ叔父: あれだけならんで、これっぽっちなあ。
ミンメイ叔母: ええ。
ミンメイ: あら、おかえりなさい。
ミンメイ叔母: ミンメイ、もう起きていいの?
ミンメイ: ええ、もう平気よ、叔母さん。
ミンメイ叔母: そう、それはよかったわ。ところで輝くんは?
ミンメイ: さあ、まだ寝てるんじゃない?
ミンメイ叔母: 無理もないわねえ。2週間ちかくもあなたの面倒を見ていたんじゃ。うふふふ。
ミンメイ: んふふ、そうかもね。それより叔母さん、こんなに散らかしっぱなしで、お店は開かないの?
ミンメイ叔父: お店を開くってなあ!
ミンメイ: そうよ、これだけみんなそろってるんだもん。
ミンメイ叔父: ああ…、そうはいってもなあ、かんじんの食糧の配給が、これだけなあ。
ミンメイ: たったこれっぽっち…? でも統合戦争のときだって、お店やってたんでしょう?
ミンメイ叔父: ああ、それはな戦争中、軍のほうから臨時の配給があってな。
ミンメイ叔母: それにここは宇宙船のなかですよ?
ミンメイ: そんなことないわよ。お店を開くっていえば、もっと配給してもらえるわ。ねえ叔父さん、叔母さん。
ミンメイ叔父: どうするなあ。このままブラブラしててもしかたないなあ。
ミンメイ叔母: んん、そうねえ。お店でもやってたほうが、気晴らしになるかもしれないわね。
ミンメイ叔父: あいな、ここはひとつ、やってみるかな!
ミンメイ: そうよ、そうこなくっちゃ! [ パチンと指を鳴らす ]わたし、着がえてくる。
ミンメイ叔母: あは、ミンメイったら。
ミンメイ叔父: わしらものんびりしてはおれんなあ。
ミンメイ叔母: ほんとね。

[ チャイナ服に着がえたミンメイが、叔父とふたりで看板を外に運びだしている ]
ミンメイ叔父: 気〜つけるな、ミンメイ。
ミンメイ: は〜い。よいしょっ。
ミンメイ叔父: おいしょ、ああ。
[ 看板を置く ]
ミンメイ: これでいいわね。
ミンメイ叔父: ああ。
[ ミンメイとミンメイ叔父、店の入口で町会長夫妻と行きあう ]
町会長: なにをはじめるんでっか?
町会長夫人: ねえ?
ミンメイ: あら、町会長さん、お店に決まってるじゃない!
町会長: [ 驚く ]店はじめるやって。本気かいな、こんな宇宙のはての戦艦のなかで…。
ミンメイ: いやだわ、町会長さん。地球をどんなに遠く離れたって、宇宙船のなかだって、この街はわたしたちの街じゃない。いままでとおなじことをやるのよ。
町会長: そやなあ、そやそのとおりや。
[ ジープに乗った軍人3名が、店を見てとまる ]
軍人A: この店、まさかやってんのかい?
ミンメイ: いらっしゃいませ。中華料理店「娘娘」、本日開店です。

[ 「娘娘」店内。ミンメイ、テーブルに着いた軍人3名にお冷やをくばる ]
ミンメイ: うれしいわ、兵隊さんたちが宇宙の中華料理店、最初のお客さまよ。
軍人A: そりゃ光栄だなあ。しかし、きみが噂のミンメイちゃんとはねえ。すごい冒険したんだってな。
ミンメイ: そうよ、たいへんだったんだから!
軍人B: 男の子と2週間ちかくもふたりっきりだったんだってね。ふたりで、なにしてたんだい?
ミンメイ: なにって?
軍人B: ほら、とぼけちゃってえ。
軍人C: 決まってるじゃないか。
[ ミンメイ、顔を赤らめる ]
ミンメイ: んん、もう知らない!
軍人C: ほんとになにもなかったのかい?
ミンメイ: ありませんっ!
[ 2階から輝が降りてくる。階下の話し声が聞こえる ]
軍人B: そういやその男の子、上に寝泊まりしてるっていうじゃないか。
ミンメイ: そうだけど。
軍人A: 相思相愛、つきあったんじゃないの?
ミンメイ: んん、もう怒るから! ほんとになんでもないの。ただのお友だちよ。
[ 輝、ミンメイの「ただのお友だち」という言葉にショックをうける ]
ミンメイ: それよりご注文は?
軍人A: ああ、そうかそうか。俺はラーメンだ。
軍人B: ん、ラーメンがいいな。
軍人C: じゃあ俺も…、ラーメン!
ミンメイ: はい、ラーメン3丁ですね。

[ 輝は部屋にもどる ]
輝: たんなるお友だち…か。
[ 輝の回想 ]
ミンメイ: どうせ死ぬなら、このままひと思いに外に飛びだして、一緒に死のう!
輝: [ 自嘲気味に ]一夜あければ、たんなるお友だちか…。

[ マクロス技術室 ]
グローバル: どうかね、主砲は使えそうかね?
技師長: [ 敬礼 ]はっ! これをごらんください。[ マクロスの断面図を見る ]これがメイン反応炉。こちらが主砲のエネルギー・コンバータです。このあいだをエネルギー・パイプがフォールド・システムとつながっていたわけですが…。
グローバル: フォールド・システムの消滅で離れてしまったというわけだな。これだけのエネルギー・パイプの予備はないだろうに、どうするのかね。
技師長: はい。マクロスの船体がブロック構造でつくられていることを利用します。つまり、このブロックとこのブロックを、こう入れかえます。
グローバル: なるほど…!
技師長: しかし、問題はマクロスをこのように「トランス・フォーメーション」せねば、主砲が撃てないということです。
グローバル: 「トランス・フォーメーション」!
技師長: はい。艦の内外をこのように変形させるということは、かなりの混乱を起こすことに…。
グローバル: んん。ほかに主砲を撃つ方法はないのかね。
技師長: はい。残念ながら、トランス・フォーメーション以外には手だてはありません。
グローバル: う〜ん、それはできん。やっと整然となりかけた街をふたたび混乱の渦に巻きこむような…、そんな真似はできん!

[ 「娘娘」店内 ]
客A: お〜い、こっちはチャーシュー麺ふたつに、チャーハンだ!
ミンメイ: は〜い。[ 輝が店を出てゆくのを見て ]輝、どこ行くの?
[ 輝、無言でミンメイの横をとおりすぎる ]
ミンメイ: はっ、輝…。

[ 輝はスクラップ同然となったファンレーサーのもとへ行く。機体をなでる ]
輝: みじめだな。
フォッカー: 輝! 捜したぞ。
輝: 先輩!
フォッカー: この、ゴキブリ野郎が!
輝: ん、ええ!?
フォッカー: どんなことがあっても生きのびてるゴキブリだ。
輝: ん、ひどい! 先輩と一緒にしないでくださいよ。
フォッカー: ふ、ふっははは…。そうかもなあ、あっははは…。[ 真顔で ]よかった。
輝: ええ。
フォッカー: なんだ、このスクラップは!?
輝: スクラップ!? 先輩、これはね、俺が命のつぎに大事にしてたレーサーなんですよ。それをスクラップだなんて…。
フォッカー: だって現実に鉄くずだ、しかたないだろう。
輝: んん、まったく。
フォッカー: 輝、どうだ、散歩でもせんか?
輝: え?
フォッカー: そんなさえない顔をして。おまえらしくないぞ。

[ フォッカーと輝、窓のついたラウンジにやってくる。マクロス左舷にプロメテウスが接続されている ]
輝: あ、ああ!
[ プロメテウスから2機のVF−1バルキリーが飛びたってゆく ]
輝: 先輩、あの戦闘機、宇宙も飛べるんですね!
フォッカー: ああ、バルキリーのエンジンは熱化学反応タイプだ。強制推進剤さえ積みこめば、どこでも飛べる。
輝: すごいや!
フォッカー: んん。
[ フォッカー、輝の肩に手をおく ]
輝: 先輩。
フォッカー: どうだ、輝。もういちど、あれに乗ってみようとは思わないか?
輝: 軍隊に入れっていうんですか?
フォッカー: このままなんにもしないで、ブラブラ暮らしてもしょうがないだろう。[ 輝の様子を見て ]どうした、輝?
輝: 先輩。
フォッカー: ん?
輝: 俺…。
フォッカー: ふむ。
輝: 女の子って、一日でかわれるもんなんですか?
フォッカー: なんだあ?
輝: 昨日と今日で、ガラッとかわれるもんなんですか?
フォッカー: ん、ぐっふふふ…、あっはっははは、あっははは…。
輝: 笑わなくってもいいでしょう!
フォッカー: ひっいひひひ…。おまえ惚れたな!
輝: え!? そ、そんなんじゃ…。
フォッカー: 心配するなよ、輝。おまえがしょんぼりしてるから見てきてほしいって、ミンメイがいっていたぞ。元気を出して、ミンメイのところへもどってやれ。ふっははは…。もっともあの手の女の子は気まぐれだからな、ほかの男にとられんように気をつけろよ!
[ フォッカー、立ちさる ]
輝: 先輩。

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ブリタイ: なに、異星人の母星の記録が!?
エキセドル: はい、とれました。ごらんください。偵察用リガートから撮影したものです。
ブリタイ: んん。
[ モニタに南アタリア島での市街戦の様子が映しだされる ]
ブリタイ: な、なに!? んん…。この異星人はマイクローンなのか。
エキセドル: は、わたしもこれを見たときは…。
ブリタイ: んん〜!
エキセドル: 我がゼントラーディ軍のふるい記録にこのようないい伝えが残されております。
ブリタイ: なんだ?
エキセドル: はい。「マイクローンの住む星には手を出すな」と。
ブリタイ: ふむ、「マイクローンの住む星には手を出すな」か。
エキセドル: これ以上、あの星には関わらないほうがよいと思われますが…。
ブリタイ: ふむ。
エキセドル: こんごは例の戦艦だけを追うことに徹したほうが得策かと…。
ブリタイ: わかった。すぐにフォールドしてやつらを追う。
エキセドル: はい。
ブリタイ: デフォールドと同時に戦艦を1隻、調査に向かわせろ。敵の出かたを見たい。
[ ブリタイ艦隊、フォールド開始 ]

[ アイキャッチ ]

[ ミンメイの部屋の前で、輝がノックしようとしてためらっている。階段からミンメイがあがってくる ]
ミンメイ: あら、輝。帰ってたの? なにかご用?
輝: え、いや。たいしたことじゃ…。
ミンメイ: うふっ、いいわ。なかに入って。
[ ミンメイ、自室のドアを開ける ]
ミンメイ: どうぞ! あ、窓を開けてくれる?
輝: うん。
[ 輝、窓を開ける ]
ミンメイ: どうかしたの?
輝: いや、もういいんだ。ん? これ、もしかしたら、こないだ僕がバトロイドに乗ってて壊しちゃったやつかな?
ミンメイ: 気にしないでいいわ。
輝: これは?
[ 小型の本棚の上に1通の手紙が置いてある ]
ミンメイ: こないだ、わたしが取りにもどろうとした忘れものよ。その途中で、あなたに助けてもらったわけ。
輝: ふ〜ん。
[ 輝、手紙を手にとる ]
輝: これ、もしかして恋人からの手紙かな?
ミンメイ: まさか〜! なかを見ていいわよ。
輝: う、うん。
[ 輝、手紙を見る。オリオン・レコード会社からの通知 ]
輝: か、歌手のオーディション、予選合格通知! これ…。
ミンメイ: うん。
輝: へえ。どうりで歌、うまいわけだ。
ミンメイ: ありがとう。でも、もう役にたたないわ。ここは地球じゃないものね。
輝: そ、そんなことはないよ。地球に帰ったら、もういちどオーディションを受ければいいじゃないか!
ミンメイ: もどれればね。
[ 窓の外を、損壊した家屋がクレーンで運ばれてゆく ]
ミンメイ: ね、輝。
輝: え?
ミンメイ: あなたはなにか、夢を持ってる?
輝: 夢?
ミンメイ: うん。
輝: 夢か。前はあったけど、壊れちゃった。スクラップさ。
ミンメイ: あなたの飛行機のこと?
輝: ああ、もう夢なんて、持てやしないよ。
ミンメイ: そうなの…。

[ マクロス・レーダー探知室 ]
乗組員A: 6時の方向にデフォールド反応!

[ マクロス・ブリッジ ]
ヴァネッサ: レーダー探知室より入電。後方に未確認飛行物体、急速接近中。
未沙: 敵艦隊です!
グローバル: 来たか…。早瀬くん、ただちに応戦態勢だ。
未沙: 了解。敵機襲来、敵機襲来。バルキリー隊、全機スクランブル。繰りかえす。バルキリー隊、全機スクランブル!
[ フォッカー、搭乗。プロメテウスからバルキリー隊が発進してゆく ]

[ 輝とミンメイ、街を見おろす高台に来ている ]
ミンメイ: うわあ、すてきな街ね。
輝: ああ。
[ ミンメイ、輝の不機嫌な返事に肩をすくめる。とつぜんサイレンが鳴る ]
キム: [ 艦内放送 ]空襲警報発令、空襲警報発令。
ミンメイ: だいじょうぶかしら?
輝: [ 皮肉な気持ちになっている ]平気さ。先輩たちがなんとかしてくれるよ。
ミンメイ: ん…。いつも、先輩先輩ね。あなただって、あんなに操縦うまいのに、ね。

[ バルキリー隊とリガート隊の交戦 ]
フォッカー: くっそう。地上とちがってなんてすばしこいんだ! こいつはちょっと、手ごわいぜ、うっと。
[ フォッカー機、左旋回 ]

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ゼントラーディ兵士A: 先行艦、有効射程圏内突入。
エキセドル: おかしいですな、主砲を撃ってこないとは。
ブリタイ: マイクローンめ、いったいどういうつもりだ。
エキセドル: もうすこし痛めつけて、反応を見てはいかがかと…。
ブリタイ: うむ、それもよかろう。先行艦に発砲許可を。敵艦を撃破せぬていどに痛めつけろ。
[ ゼントラーディ軍先行艦より砲撃開始 ]

[ マクロス・ブリッジ ]
未沙: [ 衝撃 ]あっ!
グローバル: いまのは!?
未沙: 敵艦が砲撃を!
グローバル: んんっ…!!
[ マクロス乗組員たちが消火活動にあたる ]
乗組員B: サブ・コントロール・システムの一部が損傷。しかし、なんとか切りぬけられそうです。
グローバル: [ 通信機に ]頼むぞ。[ 衝撃 ]うおっ。
[ バルキリー隊とリガート隊の交戦。敵戦艦からの砲撃はつづく ]
ブリッジ: ああ!
グローバル: うう!
[ グローバル艦長の帽子が脱げて、床に落ちる ]
グローバル: おおっ、えええい…。
ヴァネッサ: 艦長。第2、および第5副砲塔がやられました。即時修理不可能です。
クローディア: 第4機関区壊滅状態。
未沙: サブ・コントロール・システム損傷。負傷者多数!
グローバル: ん、んん…。
[ グローバル艦長、決心して立ちあがる ]
グローバル: ようし、全機関に告ぐ。主砲発射準備。
未沙: え!
クローディア: えっ!
ヴァネッサ: はっ!
グローバル: 本艦はこれより、トランス・フォーメーションを決行する。
キム: でも、それではせっかくつくった街が…。
シャミー: そ、そうですう。
グローバル: はやくしろ。時間がない。
[ 敵の攻撃による衝撃 ]
ブリッジ: ああ!

[ マクロス・ブリッジ ]
未沙: 全機関に告ぐ、全機関に告ぐ。主砲発射態勢に入る。トランス・フォーメーション、始動3分前。
乗組員C: え、トランス・フォーメーションするって!?
乗組員D: ばかな、無茶だ。
未沙: [ 艦内放送 ]2分30秒前。
乗組員C: ちっきしょう。[ 乗組員Dとともに駆けだす ]

[ 高台の輝とミンメイ ]
キム: [ 艦内放送 ]市民のみなさまにお知らせします。本艦はあと60秒でトランス・フォーメーションに入ります。危険ですから、手近なものにおつかまりください。
輝: トランス・フォーメーション?
ミンメイ: トランス・フォーメーション? なにかしら?
輝: さあねえ。
ミンメイ: フォッカーさんたち、いまごろ戦ってるんでしょうね。
輝: それ、軍隊に入れってこと?
ミンメイ: べつにそういうわけじゃないけど。飛行機があなたの夢なんでしょう?
輝: うん、まあね。だけど軍隊に入ったら、あんまり会えなくなるね。
ミンメイ: ばかねえ、おなじ船のなかじゃない。休暇になればいつでも会えるわ。
輝: 生きてればね!
ミンメイ: ん、でも、そんなこといったら、お店に来る兵隊さんたちだって、みんなおなじじゃない?
輝: みんなおなじか。どうせ、そんなこったろうさ!
ミンメイ: え?

[ マクロス・ブリッジ ]
クローディア: 始動10秒前。
グローバル: 各セクション、異常ないか?
キム: GブロックとDブロックが遅れていますが、なんとかなるはずです。
グローバル: よろしい!
クローディア: 始動5秒前。3、2、1、ゼロ!
グローバル: 全艦トランス・フォーメーション。
シャミー: J、K、L各ブロック、トランス・フォーメーションを開始してください。
キム: 第7反応炉出力、上昇を。
乗組員E: 第78セクション、作動開始。
乗組員F: Gブロックのパワーが足りない。
クローディア: 全艦トランス・フォーメーション、作動開始しました。
グローバル: うむ。

[ 高台の輝とミンメイ。輝はミンメイに自分の気持ちをわかってもらえず、やけになっている ]
輝: ひと思いに、街でもなんでも宇宙の塵になってしまえば、スッキリするかもね。
ミンメイ: なによ、勝手なこといわないでよ。あなたなんて、大嫌い!
輝: けっこうだね! 俺だっておまえなんか…。あ!
[ トランス・フォーメーション開始。天井から巨大な柱が降りてくる ]
輝: うわああああ!
ミンメイ: あ、あ、きゃあ〜!!
[ 地面に亀裂が生じ、ミンメイは裂けめに転落。かろうじて片手で壁面につかまり、落下をまぬがれる ]
輝: ミンメ〜イ!
[ 輝、ジャンプしてミンメイのいる地面の側に跳びうつる ]
輝: ミンメイ!
[ ミンメイの手が身体をささえきれなくなる瞬間、輝の両手がミンメイの手をつかむ ]
ミンメイ: 輝!

[ マクロス、トランス・フォーメーション ]
クローディア: トランス・フォーメーション発令より3分経過。変形率、11.5パーセント。
[ 変形開始。いったん開いた防護壁から、車や資材が宇宙空間に放出されてゆく。落下物の下敷きになる人びと、押しつぶされるビル、電柱に衝突する車。重力は制御不能となって、すべての人や物が浮かびあがる ]
人びと: [ 口ぐちに ]うわ〜!!
[ マクロス、変形しはじめる ]
フォッカー: なんだっ!?
キム: マクロス、右翼部変形率75パーセント。
シャミー: マクロス、左翼部変形率80パーセント。主砲システム上昇。
フォッカー: これがマクロスの、トランス・フォーメーション…!!
[ マクロス、宇宙戦艦型から右舷に強襲揚陸艦ダイダロス、左舷に攻撃空母プロメテウスを擁した巨大ロボット型(強攻型)に変形する ]
未沙: トランス・フォーメーション、完了。
クローディア: 敵艦より、さらに小型戦闘機4、50機、近づいてきます。
グローバル: かまわん。主砲発射!
クローディア: イエッサー!
[ マクロス、主砲ビーム発射。軸線上にいるリガート隊、先行艦隊を殲滅 ]
ゼントラーディ兵士B: おわああ…!!

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ブリタイ: な、なんだと!?
エキセドル: いったいこれは…。

[ マクロス・ブリッジ ]
ヴァネッサ: 敵艦、消滅しました。
ブリッジ: [ 笑いながら口ぐちに ]ああ、よかった! やった!
[ グローバル艦長の重い沈黙に気づいて、ブリッジ全員が口をつぐむ ]
グローバル: ただちに、艦内の損害を調査しろ。

[ 高台の輝とミンメイ ]
キム: [ 艦内放送 ]市民のみなさま、ただいまはたいへんご迷惑をおかけしました。みなさまのご協力により主砲を撃つことができ、敵艦を撃沈することができました。なおケガをなさった方、家屋を損壊された方は、最寄りの出張所、交番までお知らせください。
ミンメイ: あなたが、街なんか壊れちゃえなんていうから…。
輝: いや、だって、ほんとにこんなことになるなんて。
ミンメイ: お店、壊れちゃったかな。
輝: 俺、やるよ、ミンメイ。
ミンメイ: え?
輝: 俺、軍隊に入る。
ミンメイ: 輝!
輝: このまま、なにもしないってわけには、いかないもんな!

フォッカー: バルキリー隊、帰艦する。
[ バルキリー隊が強攻型になったマクロスに向けて飛んでゆく ]

[ 次回予告 ]

ナレーター: 暫定的防御システム、ピンポイント・バリアをそなえるにいたったマクロスは、はじめて反撃態勢に移った。そしてグローバル艦長は、その場を土星にさだめた。初陣の輝は、フォッカーにひきいられて土星のリング内を飛ぶ。
次回、「超時空要塞マクロス」、「ダイダロス・アタック」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(5)
リン・ミンメイ(5)
早瀬未沙(5)

ブルーノ・J.グローバル(5)
クローディア・ラサール(5)
ロイ・フォッカー(5)
ヴァネッサ・レイアード(5)
キム・キャビロフ(5)
シャミー・ミリオム(5)

ブリタイ・クリダニク(4)
エキセドル・フォルモ(3)

技師長(初)

町会長(4)
町会長夫人(初)
ミンメイ叔父(リン・シャオチン)(4)
ミンメイ叔母(リン・フェイチュン)(3)

軍人A - 中華料理店「娘娘」に来たはじめての客
軍人B - 中華料理店「娘娘」に来たはじめての客
軍人C - 中華料理店「娘娘」に来たはじめての客
客A - 中華料理店「娘娘」
乗組員A - レーダー探知室
乗組員B
乗組員C
乗組員D
乗組員E
乗組員F
ゼントラーディ兵士A
ゼントラーディ兵士B - リガート

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スタッフ

脚本 … 富田祐弘
絵コンテ … 康村正一
演出 … 康村正一
メカ作監 … 板野一郎
キャラ作監 … 鈴木英二
原画 … 丸山政治 栫 裕 森山雄治 香川浩 野島めぐみ
動画作監 … 藤高栄光
動画 … 佐藤裕司 菊川京子 服部圭子 吉川文代 山内英子

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ノート

ミンメイが歌手のオーディション予選に合格したレコード会社「オリオン・レコード」の綴りがまちがっている。通常は入るはずの「RECORDS」の「S」もぬけている。
RECOLD(誤) → RECORDS(正)。

トランス・フォーメーションによって地面の裂けめに落ちたミンメイが、輝にたすけられる場面は重要だ。その後、第21話「ミクロ・コスモス」でおなじような危険に遭遇し、こんどは従兄リン・カイフンに救出されるミンメイが、カイフンの姿と輝をだぶらせている。
「超時空要塞マクロス」ではフラッシュバックのテクニックをもちいて、対立的存在(この場合は輝−カイフン)の対照を際だたせる演出がたびたびなされる。たとえば物語冒頭、市街戦から輝にたすけだされたミンメイが輝の膝にのり、バルキリーでマクロスに帰還するシーンは、第27話「愛は流れる」における未沙救出の場面とあきらかに関連づいている。

本話では、なぜ宇宙戦艦が巨大ロボットに変形しなければならないか、という理由があきらかにされている。つまり船体の変形によって主砲エネルギー・コンバータとメイン反応炉を接続しないかぎり、マクロスには主砲を発射するすべがないというわけだ。

また本話では、ゼントラーディ軍の古い記録「マイクローンの住む星には手を出すな」が引用され、ブリタイ艦隊がマクロスを追跡するのみで地球にはいっさい接触しない理由づけもしている。それと同時にマイクローンをタブー視する言葉は、以後あきらかになるプロトカルチャーとゼントラーディ人との関係を暗示している。

輝が地球統合軍に入隊を決心したのは、兄貴分にあたるフォッカーの勧誘と、ミンメイの「飛行機があなたの夢なんでしょう?」という言葉によってである。
ミンメイは直接的に「軍に入れ」といったわけではないが、身近に戦闘がおこなわれている現場で戦闘機に乗ることをすすめるのは、死にたいする想像力がいかにもとぼしく、無邪気すぎるきらいはあるが、ミンメイの幼さ(14歳)からすれば無理からぬことかもしれない。すくなくともミンメイの発言の意図は、ファンレーサーがスクラップになって「もう夢なんて持てやしない」という無気力な輝にたいして夢を示し、励ますことにあったはずだ。

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