第15話「チャイナ・タウン」

セリフとト書き

[ オープニング ]

[ グローバル艦長と未沙、けわしい表情で軍用機に乗りこむ。離陸。護衛のバルキリー2機が後続する ]

[ マクロス・ブリッジ ]
キム: あ〜あ、行っちゃった。
シャミー: いいなあ、あたしも行きたい。
クローディア: なにいってるの! アラスカの統合軍総司令部なんて、気づまりだったらないわ。残ってるほうがよっぽど気が楽よ。
シャミー: だってえ。
ヴァネッサ: やっぱり降りたいわよ。
[ キムとシャミー、なんどもうなずく。ブリッジにマイストロフが入ってくるが、ドアの天井に頭をぶつける ]
マイストロフ: いたっ! ああ、つ…。
クローディア: あ?
ブリッジ3人娘: あ?
クローディア: マイストロフ大佐、そこ低くなっていますので、お気をつけて。
マイストロフ: 忠告ありがとう。ああ、しかしもう手遅れのようだ。グローバル艦長の留守中、代行をおおせつかった。
クローディア: うかがっております。
マイストロフ: うん。
[ マイストロフ、あたりを見まわし、懐中から葉巻を取りだす ]
シャミー: 大佐、ブリッジは禁煙です!
マイストロフ: だ、ああ、んんあ! んん〜、わかっとる。くわえとるだけだ。
[ クローディア、ヴァネッサ、キム、笑う ]
クローディア: それでは大佐、わたくし失礼します。
マイストロフ: ん?
クローディア: 勤務時間が終わりましたので。[ 敬礼 ]
マイストロフ: ああ、ご苦労だった。[ 敬礼 ]
ヴァネッサ: お疲れさま。
シャミー: ああん、中尉ったらひとりでマクロス帰還祝いのお祭り、行くつもりでしょう。
クローディア: さあ、どうかしらね。

[ ダイダロス甲板で、市民によるマクロス帰還祝いがおこなわれている ]
町会長: さあ、今日から三日三晩、無礼講や!
男A: 町会長、三日三晩って荷づくりは。
町会長: ええい、んなもんじきにできるがな。なにをいうとんじゃい。長いあいだ世話になったマクロスと名残惜しんでもバチあたらんぞ。
男A: はあ、降りるのは何日かさきですから。
町会長: そやぁ、バーッといってみよう、バッーと。
ワレラ: なんでここの連中は惑星に降りたぐらいでこんなに騒ぐんだ。
コンダ: [ 酔っている ]知るかっ! それよりこの酒はうまいぞ、おら。おまえも飲めよ。
[ ワレラ、わたされたジョッキを干す ]
コンダ: お、なかなかの飲みっぷりじゃねえか、ヘヘヘ。
ロリー: [ 酔っている ]う〜、記録を…、とらないと…、いけない…。ええいっ、今日は仕事ぬきだ!

[ クローディア、フォッカーの部屋のドアをノックする。返事なし。合鍵を使って部屋に入る。フォッカー、いびきをかきながら寝ている ]
クローディア: んん、絶世の美女が来てるのに。[ 寝顔をのぞきこんで ]ふふ、かわいい顔して、不死身のフォッカーがね。…さあ、シャワーでも、浴びよっかな。
[ クローディアがうしろを向いた瞬間、フォッカーの手が臀部をなでる ]
クローディア: あっ!
フォッカー: はっはは。あいかわらずいい曲線だな。いや、すこしやつれたかな?
クローディア: なにいってるの。あっ!
[ クローディア、フォッカーに引きよせられてベッドに倒れこむ。キス ]

[ 待機中のファンライナーのかたわらに立つ輝。人びとから歓声があがる。歓声のなかをミンメイを乗せた車がとおる ]
運転手A: さあ、どいてどいて!
ミンメイ: はあ、うっかり叔父さんとこへ、あいさつにも寄れない。
[ ミンメイの乗せた車、輝の前でとまる。降りてきたミンメイ、輝にほほえむ ]
輝: やあ。ん?
[ ミンメイ、ファンの声援にこたえて手をふる ]
輝: ん?
[ 輝の視線のさきに、ミンメイに声援を送る大勢の市民の姿がある ]
輝: ああ! たいへんそうだね。
ミンメイ: うん。でも、みんな大切なファンの人たちだもんね。
輝: ん、そんなもんかい?
[ ミンメイがファンライナーの後部座席に乗る際、輝が手を貸す ]
ミンメイ: ありがとう。最初に会ったころよりやさしいわね。
輝: [ 照れて頬を赤らめる ]そう…かな。
マネージャー: 一条中尉、くれぐれもよろしくね!
輝: 承知してます。[ 敬礼 ]
マネージャー: [ ミンメイに ]時間どおり帰ってよ。いくらご両親のところへ帰るといっても、スケジュールに穴をあけたらマネージャーの私として…。
ミンメイ: わかってるわ。あたしだってもう素人じゃないもん。
マネージャー: そう、わかってるならいいの。
輝: 行きます。離れてください。
マネージャー: お、じゃ、じゃあね!
[ ファンライナー発進 ]

[ ファンライナー、飛んでいる ]
輝: わすれてたな、この感じ。
ミンメイ: なにが?
輝: 行くよ!
ミンメイ: え? あっ!
[ ファンライナー、旋回 ]

[ グローバル艦長、未沙を乗せた軍用機、アラスカ統合軍総司令部に到着 ]

[ ファンライナーの後方に護衛のバルキリー2機が見える ]
マックス: なにはしゃいでんですか、隊長。
輝: なんだ、おまえらか。
柿崎: なんだはないでしょう。
輝: すまん、すまん。
マックス: われわれはこれから帰艦します。
柿崎: 隊長はここからさき、ミンメイちゃんとふたりっきりで恋の道ゆき。ぐふふふ、いいな、いいな〜。あははあ。
輝: バカッ、そんなんじゃない!
柿崎: 照れなくてもいいですよ。では、どうぞごゆっくり。
[ マックス、柿崎、反転する ]
ミンメイ: ひさしぶりね、ふたりきりになれるなんて。
輝: うん。
ミンメイ: う〜ん、ようやくゆっくりできるわ。でも帰ってからがまたたいへん。休んだぶん、埋めなくちゃならないの。
輝: あんまり無理するなよ。
ミンメイ: えーと、帰ってすぐテレビの録画録りでしょ。それから舞台と、あとは映画も撮るのよ!
輝: へえ。
ミンメイ: 映画なんてはじめて。なかなかたいへんなのよ。それとLPも吹きこむの。1枚プレゼントするわ。
輝: あっは、ありがとう。でも、そんなハードスケジュールで、身体だいじょうぶなのかい? [ 返事がない ]…ミンメイ!? ミ…。
[ 輝が後部座席を振りむくと、ミンメイは寝ている ]
輝: ふう。

[ アラスカ地球統合軍総司令部 ]
未沙: ぜいたくなつくりですねえ。
グローバル: ごらん、まだこんなところだ。なにしろ深さ、6キロはあるからな。ところできみは、「グランド・キャノン」というのを知っているかね?
未沙: あ、いいえ。
グローバル: 地球の重力場をエネルギー源に、マクロスの主砲原理を応用して7、8年前から作業をすすめているものだ。砲身はなんとこの縦穴を利用するという、どでかい代物だよ。
未沙: まあ。じゃあ、みんな大砲のなかで暮らしているわけですか。
グローバル: そういうところだな、はっは。きみは、ここははじめてだったのか?
未沙: いえ、父に連れられてなんどか。でもメイン・シャフトで最下層まで降りたことはないんです。
グローバル: そうだろうね。士官学校の学生どころか、士官でさえも滅多に入れんところだ。しかし、まあ…、ふっふふふ。
[ 未沙、グローバルの笑いの意味がつかめず ]
未沙: あ…、はい。
グローバル: ええ、いやいや。厳しさには定評のある早瀬提督も、ひとり娘には甘いというわけだ。
未沙: あの、父がですか? 知りませんでした。
グローバル: ま、もっとも統合戦争でわたしの上官として前線に出ていたころはね、上層部と食料配分でもめて、けっきょくひと部隊ひき連れて味方の倉庫からかっぱらったなんて、バカもやったもんだよ。
未沙: まあ、艦長もご一緒に? うっふふふ。あははは。うふふふ。あはは…。
グローバル: ふふ、いい顔だ、早瀬くん。
未沙: え?
グローバル: 敵から脱出してこっち、そういう笑顔を見なかったからね。
未沙: あ…、ああ。[ 笑み ]
グローバル: 総司令部が本腰を入れてくれればすこしは事態もよくなるだろうが、首脳部を説得させることができるかどうかがカギだな。きみには荷が重いかもしれんが、わしと一緒にがんばってみてくれたまえ。
未沙: はい、努力してみます。
グローバル: うん、けっこうだ。
[ グローバル艦長、パイプをとりだして火をさがす ]
コンピュータ: カプセル内は禁煙です。
グローバル: んん?
コンピュータ: たばこはご遠慮ください。
グローバル: やれやれここでもか。シャミーばかりか機械にまでいわれてしもうた。
未沙: うふふふ。艦長、残してきたマクロスが気になるんですね。
グローバル: ん、なぜかな?
未沙: 艦長は、心配ごととかなにかがあると、すぐにパイプを。
グローバル: あ、ああ、そうか。それは気づかなかった。ま、すぐには攻めてはくるまい。敵の指揮系統に乱れがあるように見えた。
未沙: それが、いつまでのことか。
グローバル: そう長くはあるまい。
[ グローバル艦長と未沙を乗せたシャフトが地下へ降りてゆく ]

[ アイキャッチ ]

[ ファンライナー内 ]
輝: ミンメイ、起きろよ。
ミンメイ: ん…。
[ 輝、左方向を指さす ]
ミンメイ: ああ!
[ 富士山が見える。やがてファンライナーは横浜上空に来る ]

[ アラスカ地球統合軍総司令部。一室の中央にグローバル艦長と未沙が座っている。周囲の巨大なパネルに軍首脳部の面めんが映しだされる。グローバル艦長と未沙、起立して敬礼する ]
早瀬提督: ひさしぶりだな、グローバルくん。マクロスが出撃して以来だ。
グローバル: はっ!
早瀬提督: きみも、早瀬大尉。
未沙: はい、提督。
早瀬提督: うむ。ふたりとも着席したまえ。
[ グローバル艦長、未沙、着席する ]
軍幹部A: それでははじめようか。

ナレーター: レポートを手にした統合軍首脳は、グローバルと未沙への詰問を開始した。そしてその直後、ふたりは総司令部の反応にたいする観測の甘さを痛いほど思い知らされることになったのである。

[ 港の見える丘公園 ]
ミンメイ: うわあ、この潮風のにおい! [ 吸いこんで ]ちがうのよね、ほかとは。[ 大声で ]んん、横浜なんだわ!
輝: [ 制止して ]お、おい、みんな見てるよ。
ミンメイ: ん、せっかく港の見える丘公園にいるっていうのに、ムードないんだから!
輝: ん、だってさあ。

[ ニュー・マリンタワー ]
ミンメイ: ほら、あれがニュー・マリンタワー。建ったときは高さ900メートルで世界一高かったのよ。うふん、あたしと同い年なの。
輝: [ 興味なさそうに ]ふ〜ん、そう。
ミンメイ: こらっ、もっと感激しろ。

[ 横浜中華街 ]
ミンメイ: えっと「横浜大飯店」、で「広東菜館」があって…、よかった、かわってない!
輝: 日本じゃないみたいだ。
ミンメイ: だから中華街っていうのよ。「海南飯店」すぎて…、ここ!
輝: ここ?
ミンメイ: そう!
[ 輝、ミンメイ、「明謝楼」に到着する ]
ミンメイ: よかった。あたしの家はまだあった。
輝: だって、まだ1年もたってないんだから。
ミンメイ: ううん、もう10年にも感じちゃう。ただいま!
[ 輝とミンメイ、店内に入る ]
ミンメイ: は〜。[ 店内を見まわす ]
陳: はっ! [ 自分の頬をひとつたたいて ]お、お嬢さん! あっ、と…。
[ 店員、あわてて奥へ引っこむ ]
陳: とにかく、とにかく。
ミンメイ母(リン・しげよ): とにかくって陳、なにが…。あっ、ミンメイ!
ミンメイ: ただいま!
[ ミンメイ母、ミンメイに抱きつく ]
ミンメイ母: あんたって人は! 統合戦争に巻きこまれて死んだってとっくに…。
ミンメイ: 統合戦争?
ミンメイ母: [ 輝を見て ]この方は?
ミンメイ: 輝くん。あたし、この人に助けてもらったの。
ミンメイ母: えっ。[ 輝の手をとって ]ありがとうございます。
輝: いやあ、そんな。こまっちゃうなあ。
ミンメイ父(リン・パオチュン): ミンメイ! この、心配させおって。生きてるなら生きてると、連絡ぐらい…。

[ アラスカ地球統合軍総司令部 ]
軍幹部B: グローバルくん、それに早瀬大尉。わたしは君たちをもうすこしちがう人物だと思っていたのだがね。
軍幹部A: 第一、敵にそれほどの戦力がありながら、なぜマクロスは帰ってこれた。
未沙: ですから、その理由はさっきの報告のなかに…。
軍幹部B: たとえ報告が事実としてもギャップがだね。
未沙: それは…。
早瀬提督: 早瀬大尉、いい加減にしたまえ。
未沙: 提督。
[ グローバル艦長、立ちあがって未沙を制止する ]
グローバル: 閣下、わたしの提出した要請は認可いただけますか。
軍幹部A: 交渉プランと、5万6千人の避難民の処遇か。
軍幹部B: その件に関してはこれから審議をおこなう。
[ 軍首脳部、モニタから全員消える ]
未沙: [ くやしそうに手を握りしめて ]艦長、どうしてなんですか?
グローバル: あれだけが本心とは思えんが。
未沙: 本心ではないというと?
グローバル: かれらは政治家でもあるのだよ、早瀬大尉。
未沙: 駆けひきなんかしていて、間にあうんでしょうか、あたしたち。
[ 時計が8時25分をさしている ]

[ 「明謝楼」 ]
ミンメイ父: ゆるさ〜ん!
[ ミンメイ父、テーブルをたたく ]
ミンメイ母: そうですよ。せっかく生きて帰れたというのに、軍艦のなかで歌手だなんて。
ミンメイ父: どうせ慰問部隊みたいなもんだろう。
ミンメイ: 古いんだわ、慰問部隊だなんて。なんどいわれようとあたし、マクロスに帰るもん。こんなチャンス逃して、たまるもんですか。
ミンメイ父: いかんいかん! おまえはもうどこへも行ってはならん。
ミンメイ: 行く〜! マクロスにだってテレビ局はあるし、レコードだって出るし。こんどは映画にも出演するんだもん。ね、輝!
輝: えっ、ん、んん。
ミンメイ父: そんなつくり話、誰が信じる。
ミンメイ: ほんとうだもん!
ミンメイ母: ああ、ひとり娘だというのに。ゆくゆくはこの店を継いで、婿をとって。
[ ミンメイ、むくれて横を向く ]
ミンメイ父: [ 輝に向かって ]あなたどうです、ひとつ、この子と?
輝: え、僕が! いやあ、そ、それは、あの…。[ まんざらでもない ]
ミンメイ: やめてよ! 輝、こまってるじゃない。そんな関係じゃないんだから。
[ 輝、一抹のさびしさをおぼえる ]
ミンメイ: それにあたしには、何万人ものファンを裏切ることはできないの。これでもいちおうプロなんですからね!
ミンメイ母: まだそんなこといって。
カイフン: なにがあったんです?
ミンメイ: はっ。
カイフン: 重大事って。
[ カイフン、階段から降りてくる ]
カイフン: ミンメイ!
ミンメイ: うわあ、やっぱりカイフン兄さん!
[ ミンメイ、カイフンに走りよって抱きつく ]
カイフン: 俺は夢でも見てるのか、あっははは!
輝: ん?
ミンメイ: カイフン兄さんこそ、こんなところで会えるなんて。
カイフン: ああ。平和運動に入ってから、マクロスのそばなんかとんでもないってことで、家を飛びだしたのはいいけど、おやじたちの様子を見にもどろうとしたら船便もなにもないし。聞けば島が壊滅したっていうじゃないか。
ミンメイ: すごかったもんね。
カイフン: いや、ミンメイだけでも生きていてよかった。
ミンメイ: あら、叔父さんや叔母さんも元気でいるわよ。
カイフン: ほんとか!? どこに?
ミンメイ: マクロスのなか。
カイフン: マクロスの。
ミンメイ: 知らなかったの?
カイフン: なにも。[ 輝に気づいて ]あ、失礼。
ミンメイ: 紹介するわ。輝。従兄のリン・カイフン。わたしのお兄さんがわりなの。
カイフン: よろしく。
輝: あっ。
[ 輝、立ちあがる ]
ミンメイ: こちら一条中尉、マクロスの戦闘機乗り。あたしの命の恩人よ。
輝: 一条輝です。
カイフン: [ 軍人と聞いて敵意をあらわにする ]そうですか、軍人が民間人を助けるのはとうぜんですが。
輝: うっ…。
カイフン: ま、感謝しておきましょう。
ミンメイ: あら、あたしを助けたときはまだ軍人じゃなかったわよ。
カイフン: ほう、それじゃ、あとで入隊?
輝: そうです。
カイフン: 軍隊のどこがいいんですか。
輝: えっ!?

[ アラスカ地球統合軍総司令部。時計が11時50分をさしている ]
グローバル: 遅いなあ。
[ モニタに軍首脳部が映る ]
未沙: はっ。
軍幹部B: 待たせたな。レポートを分析した結果、あるていど信頼できると判明した。
[ グローバル、期待をこめて立ちあがる ]
グローバル: そうですか!
軍幹部B: ただし敵軍との接触および停戦交渉案は却下。
グローバル: しかしあれだけの敵に対抗しつづけることは…!
軍幹部B: わかっとらんようだね。ゼントラーディ軍はわれわれとはまったくメンタリティの異なる異星人だ。たとえもしきみたちの推測どおり、かれらの祖先がわれわれによく似た人間だとしても、いまはちがうのだよ。
早瀬提督: グローバル准将。異星人相手にヘタな和平交渉はかえって逆効果になりかねん。
グローバル: わかりました。では、マクロスに乗っている5万6千人の民間人を降ろすだけでも…!
軍幹部B: かれらは全員死亡している。したがって下船することはありえん。
グローバル: なんですと?
未沙: いったいどういうことです?
軍幹部B: 異星人と交戦中であることを公表できると思うかね。地球全土にパニックが起こる。
早瀬提督: われわれはマクロスが宇宙に飛んだ直後、報道管制をしいた。マクロスを襲ったのは反統合軍残存ゲリラで、南アタリア島は壊滅。マクロスはテスト航海に出たとな。それをいまになって、ことの真相を知る5万6千人もの亡霊を解きはなてると思うか。
未沙: なんてことを…!
グローバル: かれらを、ここでひき留めれば暴動を起こしかねません。それこそ苦労の末に地球までたどり着いたんです!
軍幹部B: それを押さえるのが、きみの腕だ。それにもし、きみたちの報告どおり異星人が民間人にたいして多大な関心を示すのであれば、民間人を乗せたマクロスに敵の注意をひける。
グローバル: なんですと!?
早瀬提督: いままでどおり、敵の注意をひきつけてくれ。そのあいだにわれわれは、反撃準備を整える。危険だが、時間かせぎをしてもらおう。
未沙: お父さま、それはあんまりです! せめて民間人…。
早瀬提督: 大尉、私情を持ちこむな! きみとわたしは親子ではあるが、ここでは軍人どうしなのだ。
未沙: はっ…。
グローバル: 敵軍がマクロスを無視して、地球に直接攻撃をかける可能性もありますが!
早瀬提督: 分析の結果、その可能性は低い。くわしい作戦指示はおって伝える。以上。
[ 軍首脳部、モニタから消える ]

[ アラスカ地球統合軍総司令部の通路を歩くグローバル艦長と未沙。未沙、エレベータ前でボタンを押す ]
グローバル: 早瀬くん、父上に会っていかないのか。その…、親子としてだ。
[ エレベータに乗りこむ未沙 ]
未沙: 会いたくありません、いまは。 [ グローバル艦長がエレベータに乗りこむとドアが閉まる ]

[ 「明謝楼」 ]
カイフン: このままでは平行線だし、ミンメイの決意も固いようだし、行かせたらどうですか。
ミンメイ: さすが、カイフン兄さん!
ミンメイ父: おい、カイフン。
ミンメイ母: 小さいときから、おまえたち気があうから説得を任せたのに。
ミンメイ父: ぎゃくに説得されるとは。
カイフン: そのかわり、わたしが一緒に行きます。
ミンメイ: うわあ、カイフン兄さんと一緒なんて、もう最高!
[ 輝、つまらなそうな顔 ]
ミンメイ父: そうか、その手があったか!
ミンメイ母: カイフンなら安心して頼めるわ。
カイフン: 任せてください。
輝: [ 不満そうに、独白 ]ふ〜ん!

[ アラスカ統合軍総司令部から軍用機の部隊が飛びたってゆく。機内で未沙は、一通の手紙の封を切る。差出人は父親の早瀬隆司 ]
早瀬提督: [ 手紙 ]未沙、わたしの処分を怒っとるのだろうな。しかしあれは統合軍幹部としてとうぜんの処置なのだ。理解してほしい。そしてこれは親としての頼みなのだが、はやくマクロスを降りたまえ。いくらでも手配はしよう。あのような危険な場所に自分の娘を…。
[ 以降を読まずに、未沙は手紙をふたつに破る ]

[ 帰艦中のエアライナー。後部座席にミンメイとカイフン ]
ミンメイ: それでひとりも彼女できないの?
カイフン: ああ、世界中ふらついたからねえ。
ミンメイ: でも、兄さんに彼女ができたら妬いちゃうな。
カイフン: なんだ、一生独身でいさせるつもりか?
ミンメイ: そうじゃないけどさ。
カイフン: じゃあなんだ?
ミンメイ: いいじゃないよお。
輝: あのねえ、ただでさえ過重がかかってんだから暴れないでくれる?
ミンメイ: あははは、輝ったら気どっちゃってさ。
輝: べつに、気どってなんか…!

ナレーター: ひさびさに地球の土を踏んだかれらは、意外な運命の展開に戸惑いながら、それぞれの思いを胸に家路をいそいでいた。あのマクロスのなかの、わが家へと。

[ 次回予告 ]

ナレーター: ミンメイの従兄リン・カイフンは、マクロス艦内に移されたわが家に帰ってきた。そしてこの一風かわった乗船者は輝のみならず、マクロス艦内にもあらたな波紋を巻きおこしてゆく。
次回、「超時空要塞マクロス」、「カンフー・ダンディ」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(15)
リン・ミンメイ(15)
早瀬未沙(15)

ブルーノ・J.グローバル(14)
クローディア・ラサール(14)
ロイ・フォッカー(15)
マクシミリアン・ジーナス(マックス)(7)
柿崎速雄(8)
ヴァネッサ・レイアード(14)
キム・キャビロフ(12)
シャミー・ミリオム(13)

早瀬提督(初)
マイストロフ(2)

リン・カイフン(初)
町会長(8)
ミンメイ父(リン・パオチュン)(初)
ミンメイ母(リン・しげよ)(初)

ワレラ・ナンテス(7)
ロリー・ドセル(7)
コンダ・ブロムコ(7)

男A - 町会長の相棒役
運転手A - ミンメイとマネージャーを乗せた車
マネージャー - ミンメイ
陳 - 明謝楼
コンピュータ - アラスカ地球統合軍総司令部のエレベータ
軍幹部A - アラスカ地球統合軍総司令部
軍幹部B - アラスカ地球統合軍総司令部

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スタッフ

脚本 … 松崎健一
絵コンテ … 知吹愛弓
演出 … 高山文彦
メカ作監 … 板野一郎
キャラ作監 … 美樹本晴彦
原画 … 栫裕 山崎茂 門上洋子 島田英明 神原敏昭
動画 … 福田浩一 山本勝也 三坂徹 本猪木浩明 森川定美

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ノート

本話から、第2部がはじまる(第27話「愛は流れる」まで)。あたらしい物語の幕開けにふさわしく、新キャラクター、リン・カイフンが初登場。カイフンの存在は主要人物すべてになんらかの影響をあたえて、人間関係を大きくかえるきっかけとなる。

本話からさき第27話「愛は流れる」まで、輝とミンメイがふたりで会話する場面はほとんど見られなくなる。かわりに登場してくるのが未沙。

グローバル艦長と未沙の搭乗した軍用機の護衛についたバルキリーの後部座席に、ブルネットの美女がすわっている。スタッフの悪ふざけ。

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