劇場版「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」

セリフとト書き

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ブリタイ7018: ダスダカン デ メルトラン チャーツ!?(あの艦が、女共の物でないだと!?)。
エキセドル4970: サ。ミ プロトガドラス プレギルツ ミ デブランダカン デカンチャーツ マイクラーンズカラ オ チャーツ ザルグ エスケスタ(これまでの戦闘で捕獲した敵艦の残骸に、マイクローンサイズの物体を多数確認しました)。ウート ミスケス(表示します)。
[ エキセドル4970、コンソールを操作する ]
ブリタイ7018: マイクラーンズカラ…(マイクローンサイズか…)。エスケスト オ メルトランチャーツ デ ダンツ ラスカス(確かに女共の物ではないようだ)。
エキセドル4970: タルニ ニルケ デブランダカン メナ デ カルチャ エルケルザーン ギルテスタ デ ガドラス テルネスタ ゼントラン メーナエスケスタ(しかも、敵艦付近で奇妙な音波信号を受信し、戦闘不能に陥った兵士が何人もおります)。
ブリタイ7018: デ ガドラス テルネスタ!?(戦闘不能だと!?)。ミ デブランダカン ヤット デ アルケス(あの艦に一体何があるというのだ)。

[ タイトル ]

[ マクロス・ブリッジ ]
未沙: ASK。接触推定ライン確認。デルタ1よりアームド1へ。スカル、エンゼル、アポロ各小隊、発進スタンバイ。

[ アームド1 ]
管制官A: All system is green. Good luck !
輝: サンキュー!
[ 一条機、発進 ]

[ マクロス市街地。遠くからミンメイの歌う「私の彼はパイロット」が聴こえてくる。コンサート・ホール。歌いおわったミンメイに拍手と歓声、ミンメイ・コールが起こる ]
ミンメイ: みなさん、こんばんは。リン・ミンメイです!
[ 湧きあがる会場 ]
ミンメイ: 今夜はわたしのはじめてのコンサートに、こんなに大勢の方に集まっていただいて、ほんとうにありがとうございます。
観客A: ミンメ〜イ!
ミンメイ: [ 声のしたほうへ ]ありがとう。え〜、あたしたちのマクロスが地球を飛びたってからもう5ヶ月になりますけど、そのあいだほんとうにいろんなことがありましたし、つらい思いをされた方も大勢いらっしゃると思います。[ 間 ]でも、今夜はそんな悲しいことはわすれて、思いっきり楽しんでください!
[ ミンメイ、左手を高だかとあげる。歓声 ]
ミンメイ: それでは、こんど発売になるわたしのファースト・アルバムのなかから、メドレーでお送りします。
[ 歌「小白竜」。歌の途中で空襲警報が鳴る ]
ミンメイ: あっ! ええ?
乗組員A(女): Attention, Attention ! The ship into the transformation, 30 minute. Go to the near shelter as first as possible.
[ コンサート・ホールの天井が閉まりはじめる ]
観客B: 変形だ!
観客C: また変形だ!
ミンメイ: [ 閉まる天井を見て ]ああっ…。

[ スカル小隊 ]
未沙: デルタ1より、スカル、エンゼル、アポロ小隊各機へ。コース修正308、プラスA15。30秒後に射程圏内に入る。迎撃態勢に移れ!
フォッカー: スカル・リーダーより各機へ。聞いてのとおりだ! これより迎撃フォーメーション17に移る、いいな!
スカル小隊: 了解!
[ 敵機補足。バルキリー隊、ミサイル発射 ]
輝: はあ、はあ、はあ…。
[ リガート隊の一部がミサイルに撃墜される ]
柿崎: やったあ!
フォッカー: 喜ぶのはまだはやいぞ。相対速度をあわせ、迎撃態勢に移る。全機散開して、逆加速に移れいっ!
[ フォッカー機、逆噴射 ]
輝: 了解。[ 逆噴射の衝撃 ]ううっ…。あっ!
[ 一条機のモニタが敵機を補足 ]
輝: 3機か、ようし!
[ 一条機、ミサイル発射。リガート2機を撃墜する ]
輝: やるな!
[ 一条機、背後をとられて攻撃をうける ]
輝: うわあ。[ 回避 ]行ったぞ、マックス!
マックス: 了解。
[ マックス機、またたく間に3機を撃墜する ]
マックス: 3機撃墜!
輝: や〜るう。
柿崎: ほんと、天才だぜ。
輝: 俺だって。
[ 前方のリガートと交差して逆噴射をかける ]
輝: [ 逆噴射の衝撃 ]ううっ!
[ 加速してリガートを追う ]
輝: うっ!
[ 一条機、リガート1機を撃墜する ]
輝: やったあ!
フォッカー: [ リガートを撃墜して ]ふう。[ モニタに警告音が鳴る ]
未沙: デルタ1より各機へ。エリア108に大型戦艦出現。艦載機多数、本艦へ向けて接近中。至急迎撃に向かえ!
輝: えっ、こっちの敵はおとりか!

[ マクロスとゼントラーディ軍の攻防。ゼントラーディ軍砲艦からの攻撃をうけてマクロスの装甲に穴があく。ヌージャデル・ガー4機が艦内に侵入する。そのうち1機は防護シャッターにはさまれて爆発 ]

[ マクロス・ブリッジの正面にとりついたヌージャデル・ガーを、一条機が撃破する ]
未沙: デルタ1よりスカル11へ。あなたの担当は敵戦艦の迎撃のはずよ。すみやかに持ち場に向かいなさい!
輝: 冗談じゃない! 助けてやったのに、そんないいかたないだろう!
未沙: 命令違反は営倉入りよ。新入りのくせに逆らわないで。
輝: 敵機が侵入してるんだ! 黙ってられるか!
未沙: 第2防衛隊にまかせなさい! これは命令です。
輝: 女の指図はうけるか! 艦内に入って敵を撃破する、以上。[ 通信を切る ]
未沙: あっ、ちょっと待ってよ! もうっ、男と女とどっちが偉いっていうの!?

[ コンサート・ホール控室 ]
乗組員A(女): Transformation starts in 1 minute.
ミンメイ: 今日はだいじょうぶかしら…?
[ 爆発の衝撃 ]
カイフン: ああっ! いつもより激しいな。

[ 侵入したヌージャデル・ガー3機、装甲を破る。下方にマクロス市街地が見える。人工重力の影響をうけて機体が落下する。あたまから落ちたヌージャデル・ガーが、コンサート・ホール控室の天井を突きやぶる ]
人びと: きゃあ〜!! うわあ!
カイフン: ミンメイ、逃げるんだ!
[ コンダ88333、ミンメイとカイフンの逃げるうしろ姿を見て ]
コンダ88333: ヤック!?(これは!?)。ゼントラン テ メルトラン!(男と女だ!)。
ロリー28356: ゼントラン テ メルトラン!?(男と女!?)。
コンダ88333: ゼントラン テ メルトラン タルケ ダカン!(男と女が同じ場所にいるぞ!)。
ゼントラーディ兵士A: ヤック!?(なんだと!?)。ヤック…、ヤック デ カルチャー…(こんな恐ろしいことが…)。
乗組員A(女): Transformation ... in 5 seconds. 4, 3 ...
ミンメイ: [ 転ぶ ]あっ!
カイフン: ミンメイ!
乗組員A(女): ... 2, 1. Transfort !
[ カイフン、ミンメイのもとにもどろうとするが、道路がせりあがって行く手をはばむ ]
カイフン: どわっ、だあっ!
ミンメイ: きゃ。
[ ミンメイにヌージャデル・ガーの影が近づく ]
ミンメイ: きゃあ!!
[ マクロス、変形開始。ヌージャデル・ガーがミンメイを捕まえようとする ]
ミンメイ: きゃあ!
[ 一条機があらわれて、ヌージャデル・ガーを撃墜する ]

[ マクロス・ブリッジ ]
乗組員A: 重力制御システム、11番損傷。
乗組員B: サブ・システム作動不能。

[ マクロス市街地の重力制御がきかなくなる。あらゆるものが宙に浮かびあがり、下方に落ちてゆく ]
ミンメイ: [ 落下 ]きゃあ〜…!!
[ 輝、落ちてゆくミンメイに気づく ]
輝: あ、ああっ!
[ 一条機、ミンメイを追って手につかまえる ]
輝: ふう。[ 前方を見て ]うわあ!
[ 一条機、前方のエンジン・ブロックに突っこんでゆく。ブロックのシャッターが閉じる ]

[ 偵察機キャッツ・アイ ]
パイロットA: Enemy ship is approaching course a 107.
ヴァネッサ: コース確認。自動追尾装置作動。
クローディア: エネルギー・レベル上昇。砲撃スタンバイ。
[ マクロス、主砲ビームが稼働 ]
グローバル: 撃てえっ!
[ マクロス、主砲発射。一撃でゼントラーディ軍艦を破壊する。マクロス付近の戦闘ポッド群が退却をはじめる ]

[ 薄暗いエンジン・ブロック。バルキリーのコクピットから輝が出てくる ]
輝: おいしょ。
[ 輝、懐中からライトを取りだして、あたりを見まわす。気をうしなったミンメイを見つける ]
輝: ああっ、まさか!
[ 輝、驚いた拍子にライトを落とし、うっかり踏みつぶしてしまう ]
輝: ほんものだ…。
[ 輝、ミンメイに手をのばす ]
ミンメイ: う、ううん…。[ 気づく ]あっ! あなた、わたしを?
輝: あ、はいっ!
ミンメイ: ああ…。助けてくれたのね。
輝: [ 敬礼 ]ぼ、僕は地球統合軍バルキリー・スカル小隊所属、一条輝しょ、う…、少尉です。
ミンメイ: ありがとう、少尉さん。
輝: い、いいんです。大ファンですから。
ミンメイ: うふ、うれしい。あたしの歌、聴いてくれてるの?
輝: は、はい。いつも。
ミンメイ: みんな、心配してるだろうなあ。[ 立ちあがって髪をかきあげる ]ねえ、少尉さん、ここどこかしら…?
輝: [ さえぎって ]あのう、サインしてもらえます?
[ 輝、ハンカチとペンを差しだす ]
ミンメイ: えっ!? あ、はい…。[ サインする ]どうぞ。
輝: うわあ、ありがとう!
ミンメイ: あはっ。
輝: エンジン・ブロックに、落っこっちゃったんですよ。
ミンメイ: どこかに出口は?
輝: ちょっと見てみます。
[ 輝、駆けだしてつまずく ]
輝: うわあ…。[ 照れ笑い ]あ、あははは、あは、あは。
[ 輝、壁を調べる ]
輝: ないみたい。
ミンメイ: 壊せないの?
輝: 無理です。ハイパー・カーボン製ですから。[ 壁をたたく ]ちょっと待ってください。[ 腕の通信機を操作する ]ノイズが多くて、無理か…。
ミンメイ: 飛行機の無線は使えないの?
輝: あれはダメです。壊れちゃいました。
ミンメイ: ああ、そう…。[ きゅうに大声で ]誰か〜! 誰かいませんか〜?
[ 輝、ヘルメットを脱ぐ ]
ミンメイ: はあ、ダメか。[ 腰を降ろして ]あは、ちょうどいいわ。過密スケジュールはもうたくさん。
輝: ええ?
ミンメイ: これでひと息つけるってこと。うふっ。
[ 振動が起こる ]
ミンメイ: ああ! どうしたの? ねえ、少尉さん。
[ ミンメイ、輝の腕にすがりつく。輝、動揺する ]
輝: う、マクロスがタイタン(土星の衛星のひとつ)から発進したんです。
ミンメイ: ええ!?
[ ミンメイ、さらに腕にすがりつく ]
輝: う、ほんとうです…。
[ マクロス、上昇する。ミンメイの身体が浮かびあがる ]
ミンメイ: いやあん。
輝: あ、重力制御がきかないんだ。[ 浮かぶ ]おわっと。
ミンメイ: ああ、ああ…。
輝: ちょ、ちょっとミンメイさん、そ、そんなにしがみついたら…。
[ ミンメイをひき離すつもりでのばした輝の手が、ミンメイの胸をさわってしまう ]
ミンメイ: いやん! [ 突きとばす ]
輝: ああっ!
[ ミンメイ、突きとばした反動で身体が回転してしまう ]
ミンメイ: あああ…。
輝: [ 手を見ながらいいわけする ]あ、あ、事故です! ま、まちがいです!
ミンメイ: もう、それよりなんとかして。
輝: あ、ああ。[ 手近なものにつかまる ]そこで足を前に振って、ゆっくりとめて。
ミンメイ: こう? [ とまる ]うわあ。
輝: いいぞ、その調子。
ミンメイ: あはは、おもしろ〜い。
[ ミンメイ、壁を蹴って暗闇に向かって遊泳してゆく ]
輝: あ、ミンメイさん。そっちへ行くと!
ミンメイ: ああ!
輝: ちょ、ちょっと!
ミンメイ: あ? ああ!
輝: ミンメイさん! いてっ! いけねえ、ライトは壊しちゃったんだ。はっ!
[ 輝、きゅうに前方があかるくなったのに驚く。ミンメイのコンサート衣装がかがやいて発光している ]
輝: あっ!
ミンメイ: あははは。
[ ミンメイ、パイプからパイプへ飛ぶ ]
輝: ああ…。
ミンメイ: 見て見て。あはは。どう? この服、最新式のライト・フォログラフィよ。
[ 輝とミンメイ、エンジン・ブロックを遊泳しながら探検する。空間にいろいろなものが浮かんでいる ]
ミンメイ: うわあ、お野菜やマグロが泳いでる。
輝: みんな落っこってきたんだ。
ミンメイ: あら、あたしの人形まである。ちょん!
[ ミンメイ、ただよっていたミンメイ人形を指でつつく。歌「0−G Love」。ミンメイが缶ジュースの栓を開けると、なかから水泡が飛びだす。ストローでジュースを飲む輝とミンメイ。シャワーを浴びるミンメイ。着がえを見つけ、洗濯をして、柱に身体を結わえつけて眠る。ふたりが漂流生活に順応してゆく様子がえがかれる ]

[ 土星リング付近に停泊中のブリタイ艦隊 ]
エキセドル4970: ミ デブランダカン ケルカスタ ケルガドラス エルケスト デ カルチャ(敵艦内侵入部隊より恐るべき情報を入手)。フォダンツ ミ デブランダカン マイクラーン アルケス。タルニ(敵艦内には、やはりマイクローン人間存在。しかも)。
ブリタイ7018: [ さえぎって ]ウテマ テス ウ ゴルグ(まて、画面拡大)。
[ モニタに男と女の姿が映る ]
ブリタイ7018: ヤット… ゼントラン テ メルトラン マイクラーン!?(これは…、男と女のマイクローン!?)。
エキセドル4970: サ デ テレス タルニ ゼントラン テ メルトラン ウ ケスト メーナ マルテス エスケスタ(他にも、男と女が共存している場面が多数確認されています)。
ブリタイ7018: ヤック デ タンツ(何ということだ)。
エキセドル4970: メーナ デ カルチャー ホルトラスカス(何やら恐ろしい予感がいたします)。ミ ゼントラン プロトガドラ マルテスト。「デ ケルカス マイクラーン マーカケルカスラーン デ ザンツ」(我々の古き戦闘マニュアルにこうあります。「マイクローンには手を出すな。触れたる者は滅びる」と)。
ブリタイ7018: ヤック デ ザンツ!? ゼントラン ザルグダタン デ ガンツ。フンッ デ カルチャー…(滅びる!? わが艦隊が負けるというのか。バカな…)。

[ ゼントラーディ兵士たち、ミンメイ人形のまわりをとりかこんで銃をかまえている ]
ゼントラーディ兵士B: マーカム マイクラーン マイクラーン(マイクローンのマイクローンなのか?)。
[ ゼントラーディ兵士のひとりがミンメイ人形に近づき、銃のさきでつつく。ミンメイ人形はいったん倒れ、ふたたび起きあがって「私の彼はパイロット」を歌いはじめる ]
ゼントラーディ兵士C: ウゴイタ!(動いた!)
ゼントラーディ兵士D: ウゴケスタ!(退避!)
ゼントラーディ兵士E: ヤック!?(なんだ、これは!?)。
ゼントラーディ兵士F: デ カルチャ ガドラザーン!(音波兵器だ!)
ゼントラーディ兵士G: デ カルチャ ザーン!!(なんて音なんだ!!)
[ ゼントラーディ兵士たち、恐怖して逃げだす。銃をかまえて撃とうとするが、やがて銃を落とし、歌の不思議な感覚に気がつく ]

[ 土星を航行するマクロス。市街地の復興風景。マクロス艦内のラウンジで、フォッカーとマックス、柿崎が話している ]
フォッカー: とにかく、まだ死んだと決まったわけじゃない。
マックス: はい。
柿崎: はい。
マックス: 今日は西側ブロックを徹底的にさがしてみます。
フォッカー: ああ、頼む。
[ フォッカー、立ちあがる。マックスと柿崎も起立して敬礼 ]
マックス: では、失礼します。
柿崎: では、失礼します。
[ フォッカー、カウンター席にいるクローディアと未沙に近づく ]
クローディア: あの坊や、まだ見つからないようね。
未沙: あれからもう3日よ。軍に入ってはみたけれど、恐くなって逃げだしたんじゃないかしら。
クローディア: まさか。
未沙: あの子、軍人向きじゃないと思うわ。男の子は仕事を誤ると一生不幸よ。いまからでも仕事をかえたほうが、かれのためって思っただけよ。
クローディア: あいかわらず厳しいのねえ。そんなことだと…。
未沙: いつまでたっても、お嫁のもらい手がない。
クローディア: あっははは。
未沙: いいのよ。わたしはもう女の子だなんて気持ち、とっくに捨てちゃったんだから。
クローディア: また、オバンみたいなこといって。でもだいじょうぶよ、あたしが保証する。未沙は…。

[ クローディアの声が遠のき、未沙の回想。幼いころの未沙が、初恋の人ライバー少尉と向かいあっている。ライバー、未沙に敬礼。未沙も笑って敬礼をかえす。ライバーの面影が風に吹きとばされるように消える ]

[ マクロスのエンジン・ブロック ]
ミンメイ: それでね、父さんも母さんもこういうのよ。「兄さんがどれだけ苦労したか、わかってるか。いうこと聞かないなら、親子の縁を切ってやる」。だからこういってやったの。長いあいだお世話になりました。あたしは、かならず歌手になりますってね。
輝: それから?
ミンメイ: あっは。…そのまんま家を飛びだしちゃった。
輝: すごいんだ。
ミンメイ: でもね…。ちょっといいすぎだったかもね。父さんや母さん、無事だといいけど…。
輝: マクロスに乗ってないの?
ミンメイ: 地球よ。
輝: 地球か。
[ 間 ]
ミンメイ: あなた、地球がどうなったか知らない?
輝: 発表では、電波妨害が強くて連絡とれないってことだけど…。
ミンメイ: そうじゃなくて、ほんとうのこと。
輝: あんな大爆撃をうけたんだから、ただではすまないと、思うけどね。
ミンメイ: そう…。
輝: あっ、そんなに心配することないよ。どうせあと1ヶ月もすれば、地球にもどれるんだし。
ミンメイ: うん…。
[ 輝、話題をかえてミンメイを元気づけたいと考える ]
輝: ねえ、ちょっと聞いてもいいかな。
ミンメイ: え?
輝: こないだのテレビのこと。
ミンメイ: テレビ?
輝: そっ、「泣きたい夜に」。あの相手役の人との噂。
ミンメイ: ええっ、あなたも本気にしてるの? あんなの雑誌社のでっちあげよ。
輝: だけど…、なんていうのか、あのラブ・シーン、すごく真に迫ってたから…。
ミンメイ: あは。あっはは、やあだ、あっははは…。あんなの演技でできんのよ、ビジネスよ。うっふふ。
輝: う、うっそ〜!
ミンメイ: やってみせましょうか。
輝: やるって?
ミンメイ: うふふ。
輝: あ、ああ…。
[ ミンメイ、輝に接近して身体を密着させる ]
ミンメイ: [ 演技している ]ねえ、輝。
輝: ええっ!?
ミンメイ: あたしね、ほんとはあなたのこと、ずっと好きだったの。愛してるっていって。
輝: で、でもっ!
ミンメイ: そう…。あたしを愛してないのね。
輝: ち、ちがうよ、好きだよ。
ミンメイ: ほんとうに?
輝: ほ、ほんとうだよ。
ミンメイ: うれしい…。
[ ミンメイ、輝に顔を寄せてくる。くちづけ。輝とミンメイは抱きあったまま、ゆっくり下降してゆく。下部の装甲シャッターが開き、取材陣がなかへなだれこむ ]
取材陣: [ 口ぐちに ]おおっ!
カメラマンA: スクープだっ!
[ キスして抱きあっている輝とミンメイに向けて、いくつものカメラのフラッシュが焚かれる。ようやく気づくふたり ]
輝: あっ!
ミンメイ: あっ!

[ マクロス艦内の一室 ]
未沙: 今回はミンメイさんを助けたことで、広報課から特別に許すようにいわれました。ただし、こんご命令違反をおかしたらただではおきません。厳しく処罰します。そのつもりで。
[ 未沙、立ちさろうとする ]
輝: [ 聞こえるように ]ふう。
未沙: [ 振りむいて ]なにか不服でも?
輝: [ 椅子にすわったまま仏頂面 ]いいえ。
未沙: [ 輝に近づいて ]以後気をつけるように。いいですね。
[ 輝、すわったまま未沙をにらみつける ]
未沙: いいですね!
輝: はい〜っ!
[ きゅうに立ちあがって敬礼する ]
未沙: [ 驚いて ]う…。
[ 敬礼した輝の背面のポスターで、ミンメイが笑いながら敬礼している ]
未沙: ん…、んっ!
[ 未沙、腹をたてて部屋から出てゆく ]
輝: ちぇっ、あれでも女かよ。

[ 車に乗ったミンメイとカイフン。浮かない表情のミンメイ ]

[ 部屋にフォッカーとマックス、柿崎が走りこんでくる ]
フォッカー: やったな、やったな、輝!
輝: うわあ、先輩。
柿崎: この、この色男。うまいことやっちゃって。
輝: いやあ。
フォッカー: どうだった、われらがアイドル、ミンメイちゃんのお味は?
輝: ええっ?
マックス: 一条先輩はそんな人だったんですか。残念です。
柿崎: くわしく教えろ!
輝: ぼ、僕はなにもしてないですよ。
フォッカー: このっ、嘘つき!
[ フォッカー、輝の頬を指ではじく ]
柿崎: ほんとほんと。とぼけちゃって。
マックス: 絶対、責任をとるべきです。
輝: ほんとに、なにもしてないよっ!
柿崎: じゃ、3日もふたりっきりで、なにもしなかったのか!?
輝: しない。
フォッカー: なんだあ、おまえそれでも男か!?
輝: う…。
マックス: バカ。
柿崎: バ〜カ。
フォッカー: バ〜カ。
輝: え?
[ 輝、呆気にとられる ]

[ 私服のブリッジ3人娘が、マクロス市街地の喫茶店でお茶を飲んでいる。キム、週刊誌を読みあげる ]
キム: 「バルキリー隊パイロット、一条少尉となにをしていた? 清純派卒業…」
ヴァネッサ: [ キムから雑誌をとりあげて ]ええっ!? 「相手は軍人。けがれた関係か」だって。
キム: ほ〜ら、やっぱりあたしのいってたとおりでしょう?
ヴァネッサ: ほんとねえ、いまどき清純派なんているわけないのよねえ。
キム: う〜ん、芸能界なんて乱れてとうぜんよ。こんどの男だって、いったい何人めだか…。
シャミー: やあねえ、そんなふうに恋人をのりかえるなんて!
ヴァネッサ: うっふふ、なにいってんの。あんた、ほんとはうらやましいくせに。
シャミー: うん。
ヴァネッサ: うっふふ、やだ! あっははは。
キム: あっははは…。
ヴァネッサ: [ 笑いながら ]ほんとはなにもわかってないのよ。
キム: [ 笑いながら ]うん、そうそう。
[ なぜ笑われているのかわからないシャミー ]

[ ミンメイの家。テレビの芸能番組がながれている ]
芸能評論家A: いま、疑惑の渦中にあるミンメイちゃんと一条輝って軍人は、出ようと思えば閉鎖区域から出られたわけ。
芸能評論家B: ふ〜ん。
芸能評論家A: なのに、出なかった!
芸能評論家B: ほお。
芸能評論家A: ここが疑問点なの。
芸能評論家B: なるほど。
芸能評論家A: なぜ出なかったか。
[ 暗い部屋で番組を見ていたミンメイは耐えられなくなり、テレビのスイッチを切る。ベッドにあおむけに寝ころぶ ]
ミンメイ: [ 大きくため息 ]はあ!

[ マクロス艦内のバー。フォッカーとクローディア、未沙が飲んでいる席に輝が近づく ]
輝: 少佐、明日のパトロール編成表をお持ちしました。
フォッカー: あ、ん、ご苦労。ま、一杯飲んでけ。
輝: い、いいえ…。
フォッカー: いいからすわれ。
[ 輝、あいている席が未沙のとなりであることを気にしている ]
輝: でも…。
未沙: あ、あたし、帰ります。
フォッカー: あ?
未沙: おじゃまでしょうから。
フォッカー: ほらあ、輝。上官が気ぃつかって。はやくすわれ。
輝: はあ。
[ 輝、しかたなく未沙のとなりにすわるが、未沙は身をよけて顔をそむける ]
フォッカー: なんだなんだ早瀬、そのツラは! ったく、職務を離れたらすこしは女らしくしろ。
未沙: かんたんに性格はなおせません。
フォッカー: ふっははは…。まいったな。[ 酒を飲む ]いいか早瀬、いくら士官学校首席といっても、おまえは女だ。[ グラスに酒をつぐ ]ときには男のいうことがまちがっていても、そうですかって認めるのも大事なんだ。
[ 未沙、黙って聞いている ]
フォッカー: おい、輝!
輝: は、はいっ!
フォッカー: 男ってのはなあ、ときには強引さが必要なんだ。女の気持ちを考えてグタグタするな。ほんとうに好きならば、力づくでもものにしちまうぐらいの積極性が大事なんだ。
輝: はあ…。
クローディア: ロイ、おしゃべりが過ぎるわよ。
フォッカー: いいか、これから男と女のすばらしさを教えてやる。よく眼をかっぽじって見ていろ。
クローディア: あ…、ロイ!
[ フォッカー、クローディアにキスする ]
クローディア: バ…、ふたりがあきれてるじゃないの。
フォッカー: かまうもんか。
[ フォッカー、ふたたびクローディアにキスして、そのまま座席に押したおしてしまう ]
クローディア: ロイ! ロイったら!
フォッカー: ふふふふ、クローディア。ふふふ…。
クローディア: ああん。ロイ!
[ 輝、呆気にとられている。未沙はせつなそうに表情をくもらせる ]
店員A: 失礼します。一条さまにお電話が入っております。
輝: 僕に?
店員A: ご家族の方からです。
輝: 家族!?
[ 電話機が輝に近づいてくる。輝、受話器をとる ]
輝: あのう、一条ですが…。えっ、うそお。わ、わかった。すぐ行く。それじゃ。
[ 輝、受話器をおいて立ちあがる ]
フォッカー: どうした、輝?
輝: ちょ、ちょっと家族の者が急病で。[ 敬礼 ]失礼します!
[ 輝、走って去ってゆく ]
フォッカー: あ? 家族だ?

[ 夜の公園。変装したミンメイがベンチで待っている。私服に着がえた輝が駆けてくる ]
輝: はあ、はあ…。お待たせ。
ミンメイ: やだ…、[ サングラスをすこしはずして ]わかっちゃった?
[ 輝、ミンメイのとなりに腰かける ]
輝: わかるよ、写真集みんな持ってるもん。
ミンメイ: 一生懸命、変装したのに。
輝: こんなことしてだいじょうぶなの?
ミンメイ: あたしと一緒じゃ、イヤ?
輝: え…?
[ 輝、なにかを思いきって立ちあがる ]
輝: ようし、それじゃ今夜はひとつ、パーッと行きますか!
ミンメイ: うん!

[ マクロス市街地をデートする輝とミンメイ。ミンメイ、ショーウィンドウに飾られた動くマネキンのポーズをまねる。つづいて台上にのると瞬時に、さまざまなキャラクターに仮装できる娯楽施設「スーパー・ルーム」にやってくる。輝、騎士、メキシコふうからアラビアふうの衣装、水兵、案山子に転じる。ミンメイは童話の少女ふう、和服、チャイナ・ドレス。最後に純白のウェディング・ドレスになる ]
ミンメイ: うわあ!
[ 輝、ミンメイのとなりに立つと白い燕尾服にかわる。輝とミンメイは新郎新婦のように手をとりあうが、台から降りた瞬間、もとの格好にもどってしまう。つづいてミンメイは輝の手をひいて、ネオンで派手に彩色された建物に入りたがる。輝、それがモーテル「ペルシアン・ラブ」だと指さして教える。ミンメイ、輝の背中を押してその場から退散。ハンバーガー店「ポポ PoPo」でハンバーガーを食べていると、うしろの男2人組がミンメイに気づき、サインをもとめて近づいてくる。ミンメイは知らないふりをして逃げだす。走りつづける輝、ミンメイ ]

[ マクロス展望台。ベンチに輝とミンメイがすわっている ]
ミンメイ: イヤになっちゃった。
輝: え?
ミンメイ: いまの暮らし。
輝: 歌手になるの、夢だったんだろう? すこしくらい我慢しなくちゃ。
ミンメイ: ふう。
[ きゅうに周囲が、外からの光であかるくなる ]
ミンメイ: あ。
[ 土星が見える ]
ミンメイ: きれい! 行ってみたいな、あんなとこ。

[ 訓練用のVF−1D複座式バルキリーが飛ぶ。輝とミンメイが乗っている ]
ミンメイ: [ ヘルメットをとって ]はあ〜!
[ 遠方に木星の大赤斑が見える ]
ミンメイ: でも、勝手に使って叱られない?
輝: いいもの、見せてあげようか?
ミンメイ: え?
輝: 行くよ!
[ 一条機、急降下 ]
ミンメイ: きゃ!
[ 一条機、反転して止まる ]
輝: さあ、眼をあけてごらん!
ミンメイ: うん。[ 眼をあける ]うわあ!
[ 眼の前に土星の虹が出ている ]
ミンメイ: すてき!
輝: 土星の虹さあ。
ミンメイ: うわあ、もう最高!
[ ミンメイ、輝の肩に飛びつく ]

[ ブリタイ艦ブリッジ。モニタにボドルザーがあらわれる ]
ボドルザー: ブリタイ ジム ゼム イン バン(ブリタイ7018)。
ブリタイ7018: サ!
ボドルザー: エルケルト エスケスタ(報告は分析した)。デブラン マルテスト ホルトギルツ!(敵マイクローン人間のサンプルを捕獲せよ!)。
ブリタイ7018: エスケス(了解)。
[ 通信終わる ]
ブリタイ7018: ヤット マイクラーン ホルトギルツ マーカラスカス(サンプルを入手してどうするのだろう)。
エキセドル4970: ゴルボドルザ メナ ホルトガドラスカス(総司令には、何か戦略がおありになるのでしょう)。
ブリタイ7018: ウム。
ゼントラーディ兵士H: エルケスト。
ブリタイ7018: ン!?
ゼントラーディ兵士H: ロム デルリガート。メルトラン イン ガドラデカン ダンツイン ニルケガドラ メルケス(偵察部隊より入電。女共の戦艦一隻、第一警戒ライン上に出現)。
ブリタイ7018: ヤック!
ゼントラーディ兵士H: マーカ ウケスト?
ブリタイ7018: オ ガドラス ズカラ バドラ ウ ザラク。メルトランダカン ウ デルケス!(警備部隊の防御網を強化。女共を接近させるな!)。
ゼントラーディ兵士H: エスケス!
エキセドル4970: マーカ ホルト デ ウケイ メルトラン ホルト ウ ガンツ…(早急に対処せねば女共に先を越される可能性が…)。
ブリタイ7018: ウーム。ダンツニルケ マイクラーン ギルツ ウ ケルカス(よろしい、ただちにマイクローン捕獲作戦開始)。

[ ミンメイ、バルキリーのなかで歌う。歌「サンセットビーチ」。輝、ミンメイ、遊覧飛行を楽しんでいる。歌の途中で警報が鳴る ]
ミンメイ: あっ!
未沙: 隠れたって無駄です、ミンメイさん。
ミンメイ: [ とっさに顔の前に出したヘルメットをどけて ]すみません…。
輝: 大尉。
未沙: あきれたわ、バルキリーを私用で使うなんて。
ミンメイ: 輝が悪いんじゃないわ。あたしが無理矢理、頼んだんです。
カイフン: ミンメイ、はやくもどるんだ。
ミンメイ: 兄さん!
カイフン: 一条くん、こんどのことがマスコミに発覚したら、ミンメイの歌手生命は終わりだ。軍のお偉方には手を打ったが、きみにたいしては容赦しないからな。
輝: わかってます。厳罰は覚悟の上です。
カイフン: なんて軍人だ! はやくもどりたまえ!
輝: わかりました。[ ミンメイに ]帰ろう。
ミンメイ: うん。
[ あらたに警報が鳴る。レーダーに敵影が映る ]
輝: やっば〜!!
[ ヌージャデル・ガー部隊が接近してくる ]
カイフン: 敵機だっ!
未沙: わかってます。
カイフン: なんとかしたまえ!
未沙: [ 通信機に ]早瀬です。フォッカー少佐の部屋へ、至急まわしてください。
ミンメイ: 輝…。
輝: だいじょうぶ、僕にまかせて。
[ 一条機、反転してトリガーを引くが、なにも発射されない ]
輝: いっけねえ! こいつ訓練用だった。
ミンメイ: ええ〜!?
[ 一条機、全速力で逃げる。ヌージャデル・ガー部隊のうち2機がシャトルの方向へ向かう ]
未沙: おかしいわ、なんで撃ってこないのかしら…?
[ ヌージャデル・ガーが一条機の直近をかすめてゆく ]
ミンメイ: ああっ!
輝: くっそう、からかいやがって…。
[ 一条機、敵機を振りきろうとする。ヌージャデル・ガーの1機がとつぜん銃撃をうけて爆発 ]
フォッカー: おらぁ、輝〜! また面倒かけやがって…、ヒック!
輝: 先輩!
フォッカー: [ ろれつがまわっていない ]だけど、よくやった。男はそのぐらい積極的じゃなくっちゃ、女はものにはできんっ、ヒック!
輝: 先輩、酔ってますね。
フォッカー: ばぁろ〜!! 酒が恐くて戦が、できるかってぇ。
[ フォッカー機、つぎつぎにヌージャデル・ガーを捕捉。あっという間に4機を撃墜する ]
輝: すごい!
[ 一条機の機体にヌージャデル・ガー3機がとりつく ]
ミンメイ: あっ!
輝: あっ!
ミンメイ: きゃあ!
輝: ちっきしょう!
フォッカー: イヤッホー!
[ フォッカー機、ヌージャデル・ガー1機を追って、やがて仕留める ]
フォッカー: 見たか、輝! …うおっ、しまった!
[ 一条機とシャトルが捕獲され、敵戦艦のなかに入ってゆく ]
フォッカー: まずい!
[ フォッカー機、バトロイドに変形して敵艦のハッチが閉まるまぎわに潜入するが、まわりをゼントラーディ兵士たちにとりかこまれ、どうすることもできない ]
フォッカー: ううう、く、くく…。

[ ブリタイ艦に地球人捕虜たちを乗せた連絡艇が入ってゆく。輝、未沙、ミンメイ、フォッカー、カイフンはひとつのカプセルのなかに入れられている。カプセルに足音と振動が伝わり、やがてブリタイ7018とエキセドル4970が姿をあらわす。ブリタイ7018、カプセルをのぞきこむ ]
未沙: はっ!
ミンメイ: きゃあ!
カイフン: なんだこいつは!?
エキセドル4970: デブランの言語はすでに変換可能だ。ゼントランの質問に答えよ!
ブリタイ7018: なぜ男と女のマイクローンが、一緒にいられるのだ?
輝: 男と女のマイクローン?
フォッカー: なんだあ?
未沙: なにが訊きたいのかしら。
ブリタイ7018: 男と女がひとつのダカンにいられることは、調査済みだっ!
輝: そんなこと調査して、なんになるんだ?
未沙: 文化形態がちがうみたいね。
ブリタイ7018: デブランはなぜ戦わん。なぜマイクローンになった?
未沙: あたしたちは、あなたがたのような巨人とちがって、生まれたときからずっとマイクローンです。なったわけではありません。
エキセドル4970: 「ウーマレタトキカラ」? 生まれるとは製造されることか?
未沙: 製造ですって…?
エキセドル4970: ちがうのか?
フォッカー: ま、男と女が協力してつくることにはちがいないがな。
エキセドル4970: 男と女が協力!? ヤック デ カルチャー!
ブリタイ7018: なぜ戦わん。
フォッカー: 戦う? 冗談じゃない。女は喧嘩するよりも抱くほうがいいに決まってるだろうが。
ブリタイ7018: 「ダ〜ク」? 抱くとはなんだ?
フォッカー: こうすることさ!
ミンメイ: ああっ!
[ フォッカー、ミンメイをひき寄せて両腕にかかえこむ ]
ブリタイ7018: [ 驚愕 ]うおおお…!
エキセドル4970: [ 驚愕 ]おおお…!
カイフン: ああ、なんてことするんだ!
[ カイフン、フォッカーとミンメイのあいだに割ってはいる ]
ブリタイ7018: おまえたちは男と女でそのようなデカルチャーをしておる。
フォッカー: ああ、キスだってなんだってしてる。
ブリタイ7018: 「キスウ」? キス〜というものをしてみろ!
フォッカー: [ 困惑 ]ああ、それは…。
ブリタイ7018: ム!
[ ブリタイ7018、とつぜん手でカプセルを破り、ミンメイをつかみ出す ]
ミンメイ: ああ、きゃあ、きゃあ!
カイフン: ミンメイ!
輝: なにするんだ!
ミンメイ: ああっ! う、うう…。
ブリタイ7018: キ〜ス〜 マーカ ウケイ。
フォッカー: ああ…。
[ 不安そうなミンメイ。カイフン、立ちあがる ]
カイフン: 俺がキスする。降ろせ!
ブリタイ7018: よろしい、マーカ ウケイ。
[ ブリタイ7018、ミンメイをカイフンの前に降ろす ]
ミンメイ: きゃあ〜!!
カイフン: [ 小声で ]はやく演技するんだっ! 殺されるぞ。
ミンメイ: ええ!?
[ カイフン、ミンメイにくちびるを寄せる ]
ミンメイ: あ…。[ キス ]
エキセドル4970: [ 恐怖 ]あ、ああ…!
ブリタイ7018: [ 恐怖 ]ああ、キ〜ス〜、おおっ…!

[ 地球人捕虜たちが移送されてゆく。捕虜は輝、未沙、フォッカー組と、ミンメイ、カイフン組のふたつにわけられる。ミンメイ、離れてゆく輝を見る ]
輝: ミンメイ!
ミンメイ: 輝…。
輝: ミンメイ…。
フォッカー: やつら、なんでキスぐらいで驚いたんだろうな。
未沙: 男と女が戦ってるみたいだったけど。
[ とつぜん閃光と衝撃。移送車がかたむく ]
輝: うっ! ああ〜!!
未沙: はっ、ああ!
フォッカー: おうっ!
[ メルトランディ軍のクアドラン・ローがブリタイ艦に潜入。銃撃によって、移送車のガラスが破れる ]
輝: うわあ!
フォッカー: どわあ!
[ 移送車を誘導していたゼントラーディ兵士、倒れる ]
フォッカー: みんな、無事か!?
未沙: ええ!
輝: なんとか!

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ゼントラーディ兵士I: メルトラン ガドラ ケルカス!(女共の突撃部隊侵入!)。
ゼントラーディ兵士J: テイ マイクラーン デ ギルツ デ ザンツ!(マイクローン3体、混乱に乗じて逃亡!)。
ブリタイ7018: アルマ デカン トガドーラ(全艦非常体制)。メルトラン ウ デ ザンツ タルニ マイクラーン ホルト ウ ゲルツ(敵機をせんめつし、マイクローンを捕獲せよ)。ナ メルトラン ガドラケルカス デ カルチャー…(女共の侵入を許すとは…)。
エキセドル4970: タルニ ブリタイ。
ブリタイ7018: ン?
エキセドル4970: アルマダーン ギルケスタ マイクローン エルケスト ウケイ トウ ゴルボドル(残った2体のマイクローンだけでも、総司令のもとへ届けねば)。
ブリタイ7018: ウム。

[ 輝、未沙、フォッカーがブリタイ艦の格納庫にあるバルキリーを発見する ]
フォッカー: あったぞ!
輝: ええ!
[ 3名が機体に乗りこもうとすると、ゼントラーディ兵士たちが向かってくる ]
輝: あっ!
未沙: はっ!
フォッカー: 輝! キスをするんだっ!
輝: え? そうか。[ 未沙に ]失礼します!
[ 未沙、顔をそむけるが、輝はひき寄せて強引にキスする。ゼントラーディ兵士たち、驚愕 ]
ゼントラーディ兵士: [ 口ぐちに ]アア オオ…。ヤック デ カルチャー…。
[ 未沙、身体をひき離して、輝をひっぱたく ]
輝: いてっ! ひでえなあ。
未沙: さっさと発進しなさい!
輝: ちぇっ、いわれなくったって。
[ 輝、コクピットのキャノピーを閉じる ]
輝: ミンメイを助けなくっちゃ。
[ 一条機の発進直後、クアドラン・ロー1機(ミリア639機)が格納庫に侵入してくる。一条機、ものかげで戦闘を見まもる。ミリア機、ゼントラーディ兵士たちに向けて砲撃 ]
ゼントラーディ兵士: [ 口ぐちに ]うわあ、ぎえ〜、ぐえ〜、うおお…。[ 倒れる ]
[ 奥からヌージャデル・ガー2機がやってくる。ミリア機、銃撃をすばやくよけつつ、1機を撃破。つづいて敵機頭部にこぶしを叩きこんでから、さらに弾丸を撃ちこんでもう1機を撃破する ]
ゼントラーディ兵士K: うわあああ…!!
ミリア639: フン デリーマ(フン、弱すぎる)。[ 警報が鳴る ]ン?
[ さらにヌージャデル・ガー部隊がやってくるが、ミリア639は不敵な笑みを浮かべて瞬時に撃破する ] ゼントラーディ兵士L: [ 撃たれる ]ぎゃあ〜!!
[ バラバラになったゼントラーディ兵士の身体が上から降ってくる。ミリア機、兵士の頭部を足で踏みつぶす ]
ミリア639: ティアンツ…。マーカ ミリア テレルケ マドラス デ アルケス…(情けない…。私と互角に戦える奴はいないのか…)。
[ ミリア機、離脱 ]
輝: すげえ…。

[ ミリア機、ほかのクアドラン・ロー2機と合流するが、うち1機が銃撃されて格納庫に墜落する。なかからメルトラン兵士が出てくるが、力つきて倒れる ]
メルトラン兵士A: ウ、ウウ…。ウウ…。アア…。[ 絶命 ]。
輝: 女だ!
未沙: 男と女が戦っている!
輝: どうなってんだ!?
フォッカー: 輝、いまのうちに脱出だ!
輝: 了解。
未沙: [ 上を見あげて驚く ]きゃあ!
[ カムジン03350のヌージャデル・ガーが上方からフォッカー機に飛びかかり、頭部をたたきつぶす ]
カムジン03350: ホルト ギルツ マイクローン!(のがすか、マイクローンめ!)。
輝: だああ〜!
[ 一条機、フォッカーを援護するために飛びだす。カムジン03350が気をとられた隙にフォッカーがヌージャデル・ガーを撃ちぬく ]
カムジン03350: デブラン!
[ カムジン03350、フォッカー機に一撃をくわえてから、機体を捨てて飛びかかってゆく ]
カムジン03350: ウワアアア!!
[ カムジン03350、コクピット上部にパンチ ]
フォッカー: [ 機器にはさまれて ]おうわっ!
輝: せんぱ〜い!
フォッカー: 来るな! ミンメイを助けに行くんだ!
輝: そんなこと!
カムジン03350: フン!
[ カムジン03350、フォッカー機のキャノピーをめくりかえす ]
フォッカー: [ 独白 ]くっそう…!
[ フォッカー機、ガンポッドでカムジン03350の背部を銃撃 ]
カムジン03350: ウワッ…。[ 血を吐いて、フォッカー機に倒れこむ ]
フォッカー: なあ…、輝よ…、クローディアに…、よろしくな…。[ 眼を閉じる ]
[ カムジン03350もろともフォッカー機が爆発 ]
輝: せんぱ〜い!!
未沙: いけないわ、少佐の死を無駄にしては!
輝: あんたって人は!!
[ 輝、後部座席の未沙を振りかえるが、未沙の悲痛な表情を見て思いとどまる ]
輝: う、は…。
未沙: ミンメイさんには、発信器をとりつけてあります。反応のほうへ向かってください…。
輝: 了解…。

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ゼントラーディ兵士M: ガーマ ズカラ ザルク(エネルギーレベル上昇)。
ゼントラーディ兵士N: ゴルボドルザ アルケス ズカラ ダンツ エスケスタ(ボドル基幹艦隊、座標算定完了)。
ブリタイ7018: ウ デルケ フォールド フォルトテーズ(長距離フォールド、スタンバイ)。

[ 一条機、装甲を破る ]
ミンメイ: はっ! ああ…。
[ 輝、ミンメイとカイフンを見つける ]
輝: ミンメイ!
未沙: はっ!
ミンメイ: 輝! 輝よ、輝が来てくれた!
[ 一条機、さらに装甲にあいた穴を押しひろげようとするが、フォールド航行がはじまって周囲に異変が起こる ]
ミンメイ: はあ。[ 異変に気づいて ]あっ!
カイフン: あっ!
[ ブリタイ艦が閃光につつまれる。物体が二重映しになる ]
輝: これは…!
未沙: フォールドだわ、この艦がフォールドしようとしている!
[ ブリタイ艦に着弾。外壁に穴があいて、なかの資材が外へ吸いだされてゆく。一条機も巻きこまれて艦外に射出されてしまう ]
輝: ミンメイ!
ミンメイ: 輝!!
輝: うわあああ!
ミンメイ: 輝、輝…。
[ ミンメイ、閃光につつまれる。ブリタイ艦にとりついていたクアドラン・ロー部隊が撤退するなか、一条機のみが光のなかに突っこんでゆき、消える。ブリタイ艦、フォールド ]

[ 一条機、デフォールド。荒涼とした惑星に着陸する。輝、レーダーで周囲を調べる ]
輝: はっ。ミンメイ…。
[ 気をうしなっていた未沙が眼をさます ]
未沙: う、うう…。はっ! ここは?
輝: 知るわけないでしょ。
未沙: はっ。 敵艦は?
輝: どこにも反応ありません。
未沙: そう…。
[ 未沙、周囲を見わたす。クレーターばかりの不毛な大地 ]
未沙: それにしても、気味の悪い星ねえ。あ、向こうに海が見えるわ、あっちへ向かってくれる?
輝: 行ってどうなるんです?
未沙: え?
輝: どうせ、ミンメイにはもう会えないんだ。
未沙: なにいってるの!
輝: ミンメイも殺されちまうんだ、先輩みたいに…。
[ 未沙、顔を曇らせる ]
輝: 俺が、土星になんか連れだしたりしなけりゃ…!
未沙: だけど、ここがどこだか調べるのも、わたしたちの任務。
輝: [ カッとして ]任務、任務! あんた、それしかないのかよお!
未沙: はっ、わかりました! もう頼みません。うっ!
[ 未沙、勝手に操縦桿を動かす。バルキリー、動きだす ]
輝: あ、ああ…、ちょ、ちょっと大尉! ああ!
[ 一条機、上昇してバランスをくずす ]
未沙: あっ! うう…。
輝: ああ! ぐう。[ 操縦桿を操作する ]
[ 一条機、砂浜に不時着する ]
輝: [ 衝撃 ]うっ!
未沙: [ 衝撃 ]うっ!
輝: [ 未沙を振りかえって ]バカなことするなっ!
[ 未沙、そむけた顔を起こしてなにかをいいかえそうとするが、眼の前のものに気づく ]
未沙: あ!
輝: ああ? [ 前方を見る ]あっ!
[ ふたつに折れた攻撃空母プロメテウスの残骸 ]
輝: これは…?
未沙: 統合軍…太平洋艦隊所属…攻撃空母…プロメテウス…。
輝: まさか…!
未沙: [ 涙ぐむ ]ここが、あたしたちの地球だなんて…!

[ ボドル基幹艦隊。ブリタイ艦、デフォールドする。ブリタイ艦からブリタイ7018とエキセドル4970、ミンメイとカイフンが監禁されている捕虜カプセルの乗った連絡艇が発進し、中枢部へすすむ ]

[ 捕虜カプセルのミンメイとカイフン。カイフン、勇気づけるようにミンメイの肩を抱く。ミンメイ、歌いはじめる。歌「シンデレラ」 ]

[ プロメテウス内部を探索する輝と未沙。部屋のドアを開けると、なかに多数の白骨化した遺体がある。波うちぎわですわりこむ未沙。輝は食料をさがして、食べられそうな缶詰などを調べている。輝、未沙のところへもどり、ひろいだしてきた缶詰を示すが、未沙は不機嫌そうに顔をそむける。怒った輝は缶詰を砂浜に投げだす ]

[ ボドル旗艦中枢部。ボドルザー、ブリタイ7018、エキセドル4970らが、カイフンに寄りそって「シンデレラ」を歌うミンメイの姿をモニタで見ている ]
ブリタイ7018: オオッ…!
エキセドル4970: オオッ…!
ボドルザー: プロトカルチャー!!(「プロトカルチャー」!!)。
ブリタイ7018: プロトカルチャー?
エキセドル4970: プロトカルチャー?
ボドルザー: アルケス ナ カールチューン マイクラーン ダンツ プロトカルチャー(「文化」を持つマイクローンは、すなわちプロトカルチャーだ)。
エキセドル4970: カールチューン?(「文化」?)
ボドルザー: カールチューン デ アルマ バドラ デ タルニ ザンツウケスト エト ボドルザ デ エスケス(「戦う以外の創造的活動」という他は私も詳しくは知らぬ)。
ブリタイ7018: ウ〜ム…。
エキセドル4970: ンン…。
ボドルザー: オ ゼントラン メルケス ザンツラン デ マルテスタ トウ ボドルザ メナ カールチューン(我々の製造者達は「文化」について何も私に教育しなかった)。ナ イン デタルニ デ ケルカス トウ カールチューン ウ マルテスト(ただ「文化には手を触れるな」というプログラムをのぞいてな)。
エキセドル4970: ダス デ カルチャ ザーン マーカ カールチューン?(あの恐るべき音が「文化」なのでしょうか?)
ボドルザー: デ カルチャ ザーン タルケ ミーゾーン(あれは「歌」という物だ)。
ブリタイ7018: ミーゾーン?(「歌」?)
エキセドル4970: ミーゾーン?(「歌」?)
ゼントラーディ士官A: ミーゾーン?(「歌」?)
ボドルザー: エト ボドルザ ロンメルケス ザンツ デルケ インダンゼンケ ズカラ アルケス(私とて製造以来、すでに12万周期を経た機動要塞だ)。ミ デルケ ザルクガドラ カールチューン ナ プロトカルチャー マーカ デザン エスケス ガーマ ギルテスト(無数の戦圧によってプロトカルチャーの文化も、わずかながら解読する能力を身につけたのだ)。
ブリタイ7018: オオッ!
エキセドル4970: オオッ!
ボドルザー: ア ミーゾーン ゼントラン テ メルトラン トウ イン カルチャガーマ マーカ アルケス(「歌」には男と女を引きよせる力があるらしい)。
ブリタイ7018: ヤック カルチャガーマ!?(何という力!?)。
ゼントラーディ士官A: カルチャガーマ マーカ デ ガドラスカス…(それが我らの戦意をうばうのか…)。
ボドルザー: ダンツ…。
[ ボドルザーの身体が振動しはじめる ]
ブリタイ7018: オオッ!
エキセドル4970: オオッ!
[ ボドルザーの身体から触手が1本のびてくる ]
ブリタイ7018: ヤット?(これは?)
ボドルザー: プロデルケ ギルテスト カールチューン デザンチャーツ(はるか昔に捕獲した「文化の断片」だ)。
エキセドル4970: カールチューン デザンチャーツ?(「文化の断片」?)
ボドルザー: マーカ ダン プロトカルチャラン カールチューン デザンチャーツ ダンツ メナエスケス(このプロトカルチャーの2人ならば、これが何であるか判るかも知れぬ)。
[ 触手には、文字の書かれたプレートがにぎられている ]

[ 地球。焦土と化した地表を一条機が低空飛行している。輝と未沙、地上に降りて歩く。建物の残骸で立ちどまる ]
輝: 結局、東京も全滅か。アラスカの統合軍本部も溶岩に埋まってたし、、この1週間、どこをさがしても、人っ子ひとりいやしない。
[ 未沙、黙ったままうなだれる ]
輝: [ 挑戦的に ]さっ、早瀬大尉。つぎはどこに行きます? ロンドンですか、それともパリですか。ニューヨークですか? はやく命令を。
未沙: やめてっ!!
[ 未沙、手に顔をうずめる ]
輝: あ…。
未沙: もうやめて…。[ 泣く ]

[ 夜の雷雨。バルキリーの下にテントを張って休んでいる輝と未沙。輝は魚をあぶっており、未沙は横になって寝ている ]
輝: ほら、焼けたよ。
[ 輝、焼いた魚をさしだす。グロテスクな魚の姿を見て、未沙は顔をそむける ]
輝: もう、3日も食べてないんだろう? すこしくらい食べないと。
未沙: そんなもの食べるくらいなら、死んだほうがましよ。
輝: 放射能中和剤がきいてるから、このぐらいなら害はないよ。
[ 未沙、輝のいったことが自分の気持ちとすこしずれているので顔をしかめる ]
輝: 生きのびるんだって、軍人の任務だろ。
未沙: もういいのよ。
輝: ん、だけど、せっかく地球に降りられたんだ。マクロスだって無事なら、もうじきもどってくるんだから!
[ 輝、未沙に近づく ]
輝: ほら。
[ 輝、魚をさしだす ]
未沙: [ 振りかえる ]なにもわかってないのね。
輝: え?
未沙: マクロスが来たって、どうにもならないわ。
輝: どうして。
未沙: もう地球には誰も残っていないのよ。
輝: だけど、マクロスの人がいれば!
未沙: 地球は全滅したのよ! [ 起きあがる ]相手は、100億の人間をあっという間に滅ぼせる敵なのよ! うっ、ゴホッ、ゴホッ…。
[ 未沙、咳きこむ。輝、懐中からハンカチをとりだして、水ですすぐ。未沙、ふたたび横になる ]
輝: ほら。
[ 輝、未沙の額にしぼったハンカチをのせる ]
未沙: ゴホッ、ゴホッ…。みじめなものねえ。負けるとわかった軍の士官なんて。…それにひきかえ、あなたはタフねえ。聞いたわ、フォッカー少佐から。
輝: 先輩から?
未沙: あなたに家族はいないってこと。お母さまははやくに亡くなられて、お父さまも事故ですって?
[ 輝、わざとあかるくふるまう ]
輝: ああ! アクロバット中にミスって、ヒューン、ドン! ってね。
未沙: そう…。それからあなた、ずっとひとりで生きてきたんでしょう?
輝: ただの賞金稼ぎさ。飛行機だったら、子どものころからずっと飛ばしてたから。
未沙: ふふ。でもだからよねえ、平気でいられるの。
[ 輝、顔を曇らせる ]
未沙: あたしはダメ。あたしだって軍人の端くれ。最後の一兵になっても生きのびられるつもりだったけど、このざまじゃねえ…。
[ 未沙、半身を起こす。額のハンカチが、手のなかに落ちる ]
未沙: はっ…!
[ ハンカチには「Lynn Mimmay」のサインがある ]
未沙: あっ!
[ 未沙、輝を振りかえると、輝は膝をかかえてさびしそうに黙りこんでいる ]
未沙: ごめんなさいっ、あたし…。はっ…。
[ 未沙、魚の肉をちぎりとって、食べはじめる。眼から涙がながれる ]

[ 地球。海上を飛行する一条機 ]
未沙: なにかしら、あの柱?
輝: 行ってみよう。
[ 輝、進路をとる ]

[ 輝、未沙、バルキリーを降りて遺跡の探索をはじめる ]
未沙: だいぶ昔から沈んでたみたいね。
輝: ああ。
[ 輝と未沙、内部へ入る ]
輝: 人がいるって感じじゃないな。
未沙: だけど、機能の一部は生きてるみたい。
[ 輝と未沙、コントロール室に来る ]
輝: 俺たちとおなじサイズだ。
[ 輝、椅子にすわる ]
未沙: 巨人たちのものでないとしたら、いったい…?
[ 未沙、モニタをのぞきこむ ]
未沙: これは! フォールド通信システムかしら!
輝: フォールド通信?
[ 未沙がコンソールを操作すると、機器が稼働する ]
未沙: 動くわ!
輝: えっ!
未沙: マクロスに連絡できるかもしれない。
輝: だけど、もしほかの連中に傍受されたら、まずいんじゃ…。
未沙: わかってるわ。でもいまはやってみるしか…! マクロスが無事なら、きっとこたえてくれるはずよ。
[ モニタが消える ]
未沙: 応答なしか…。
[ 未沙、肩を落とす ]
輝: 機械が壊れてるんですよ、きっと。操作法がちがうのかもしれないし。
[ 未沙、うつむいたまま首を振る ]
未沙: うう…。
輝: ほかのも試してみよう。
[ 輝、コンソール中央部を操作すると、とつぜん眼の前に閃光があらわれる ]
輝: [ 驚く ]あ、あ…。
[ 未沙、輝に駆けよってくる ]
未沙: あ、ああ。
コンピュータA: ダイナ フラグコン メルテラース。
未沙: 待っていた? あたしたちの帰りを。
輝: わかるの!?
未沙: ええ、すこしは。[ コンピュータに ]あなたはいったい?
コンピュータA: コン メルトカルトラン ダース メイナ デステイタ。
未沙: 宇宙移民船の、管理コンピュータ?
コンピュータA: デ タルニ デダンゼン?
未沙: ちがうわ、わたしたちはこの星の人間よ。
コンピュータA: マーカ ビューティフラン メルト ザンツラペイ…。
未沙: はっ、遺伝子操作…。
コンピュータA: ビー プロトカルチャー ビオブラント カルマザン。オルト モー ゼントラン テ メルトラン デワン フォー ワドル。デ ウォグル ケース デミア…。[ 消滅 ]
輝: 消えた…!
未沙: はっ、待って! まだ聞きたいことが!
[ 未沙、コンソールを操作するが反応なし ]
未沙: は…。エネルギーを切りかえたのね。
輝: いったい、なんだって?
未沙: 最後に残ったエネルギーを使って、都市を浮上させるって。
輝: 都市を浮上させる?
未沙: ええ。
[ 轟音と振動 ]
未沙: はっ!
輝: 動いた!

[ 遺跡が徐々に浮上してくる ]
未沙: ずっと昔に、プロトカルチャーという宇宙文明があった。そこでは遺伝子工学が発達していて、男は男、女は女だけで子孫を増やせるようになったとき、かれらは男だけのゼントラーディと、女だけのメルトランディに分裂して、戦争をはじめた。
輝: そのときつくったのが、戦うことしか知らない巨人たちってわけか。
未沙: ええ。だけど、巨人たちの戦争が激しくなりすぎて、ようやくまちがいに気づいた人たちが、もういちど男と女が一緒に暮らせる場所をもとめて、この地球に逃げのびてきたらしいの。
[ 遺跡が全容をあらわす ]
未沙: そして、そのとき地球にいた現住生物の遺伝子を操作して、わたしたちの祖先をつくった。
輝: 俺たちの祖先まで。
未沙: ええ。
輝: そうか…。それじゃ、この街の連中はどこへ?
未沙: 2万年前に巨人たちの戦闘がこの太陽系にまでおよんだとき、街を海のなかに隠して、一時的に地球を離れたらしいわ。
輝: だけど、帰ってこれなかった。
未沙: ええ。
輝: それで、半年前のゼントラーディ軍の出現を、この街の人たちが帰ってきたと錯覚したコンピュータが、都市を浮上させたってわけか。
未沙: それから、あたしたちがこの街に住めるようにってね。
輝: だけど2万年も待ちつづけて、やってきたのが俺たちだけなんてねえ。
[ 輝、小石を水に投げこむ ]
未沙: ほんとうね…。

[ 浮上した街を探索する輝と未沙 ]
輝: かなり痛んでるな。
未沙: ええ。
[ 未沙、がれきのあいだから、なにかを見つける ]
未沙: あら?
[ 未沙、文字が書いてあるプレートをひろいあげる ]
未沙: なにかしら?
輝: なにか見つかった?
未沙: ええ、なにか書いてあるみたい。おぼえる…、おぼえて…、おぼえていますか。ううん、巨人たちの文字よりだいぶ複雑で、よくわからないわ。
輝: そう…。
[ 未沙、プレートを懐中にしまう。奥の部屋をのぞきこむ ]
未沙: ん。
輝: ただの家みたいだな。ほかをまわってみよう。
未沙: もうすこし、ここにいていいかしら?
輝: え?
未沙: べつにたいしたわけはないんだけど、ふふ、なんとなくね…。
輝: そう。それじゃ、僕はほかを調べてきます。
未沙: ふふ。
輝: すぐもどってきますから。
[ 輝、外に出てゆく。未沙、手を振って見おくったあと、息をついて奥の部屋に入ってゆく。プロトカルチャー人のキッチン ]
未沙: はあ。
[ 未沙、流し台に入った食器を見てほほえむ ]
未沙: かわらないのね。
[ 未沙、カップをひとつとりだして、人さし指で鳴らす。水差しからカップに水をそそぐ ]
未沙: [ 喜び ]ああ…。

[ 輝、周囲の調査を終えて、未沙のもとにもどってくる ]
輝: やっぱり誰もいないみたいですね。機械もほとんど使えないものばかり。あっ!
[ 未沙がテーブルにからの食器をならべて、食事の仕度の真似ごとをしている ]
未沙: ふふ、おかえりなさい。
輝: [ 反射的に ]た、ただいま。
未沙: さあ、食事にしましょう。
[ 未沙、食器をならべている。はじめは呆気にとられている輝だが、未沙の様子を見ながらしだいに気持ちを理解する ]
輝: ああ。
[ テーブルに向かいあう輝と未沙 ]
未沙: どうぞ。
[ ふたりは席について、ワインをそそぐ真似をする。グラスをあわせて乾杯して笑みをかわす。輝がワインをひと口飲む真似をして、ナイフを手にとると、とつぜん水音がする ]
輝: あっ!
[ 未沙のグラスが水に投げすてられている。涙をこらえる未沙 ]
未沙: 帰りたい…! みんなのところ…。う、うう、う…。
[ 輝、未沙の手をとる。驚いて顔をあげた未沙に、輝が黙ってうなずく ]
未沙: 一条くん…!
[ 輝と未沙、手をにぎりあって身を寄せ、くちびるをあわせる ]

[ 地球、早朝。遺跡の街に遠くから轟音が聞こえてくる。輝、あたりを見まわしている。未沙が服を整えながら、家のなかから出てくる ]
未沙: また動きだすのかしら?
輝: いや、この音は空からだ。
未沙: 空?
輝: あっ!
[ 輝、未沙、駆けだす ]
未沙: ああ!
輝: ああ!
[ マクロスが近づいてくる ]
輝: ああ…。
未沙: ああ!
[ 未沙、うれしくて輝に抱きつく。輝、未沙にキスする ]
輝: マクロス!
未沙: マクロス! …通信がとどいていたのね。
輝: ああ。

[ マクロス艦長室。輝、未沙、敬礼してグローバル艦長に帰還の報告をする ]
未沙: [ 敬礼 ]早瀬未沙、一条輝、ただいま帰還いたしました。
グローバル: うむ。
[ グローバル艦長、椅子から立ちあがって敬礼をかえす ]
グローバル: よ〜くもどってくれた。で、地球の様子は?
未沙: はい。この1ヶ月のあいだ、地上1万5千キロ、および異星人の都市宇宙船を調査した結果、いずれも生存者はありません。
[ 未沙の報告のあいだ、輝はかたわらに立つ人物を気にしている ]
グローバル: そうか…。くわしい報告はあとでうける。まずは、ゆっくり休みたまえ。
未沙: [ 敬礼 ]はい。
輝: [ 敬礼 ]はい。
[ グローバル艦長、輝と未沙に背を向ける。輝と未沙、左に向きなおり、クローディアに対面する ]
クローディア: ロイは、立派だった?
輝: はい。
[ 未沙、視線を落とす ]
クローディア: ありがとう。それでじゅうぶんよ。
[ グローバル艦長、パイプに火をつける ]

[ 私服の輝と未沙がマクロス市街地にやってくる ]
未沙: [ 安堵感 ]はあ。
輝: [ 安堵感 ]はあ。
[ 「シルバームーン・レッドムーン」を歌うミンメイの姿が巨大なモニタに映っている ]
輝: あ、ミンメイ…!
未沙: は…。不思議ねえ。ミンメイさんはどこかに行ってしまったのに、いまでも歌はながれている。
輝: 歌か…。
未沙: まるで、生きてるみたいね。
輝: ああ。なんだか、なつかしいな。
未沙: なつかしい?
輝: あれから1ヶ月しかたってないはずなのに、ミンメイと一緒に飛びだしたときのこと、ずっと昔のような気がしてね。
未沙: そう…。
[ ミンメイの姿を見つめる輝と未沙 ]

[ 地球付近にメルトランディ軍の戦艦(ミリア艦)がデフォールドする ]
ラプラミズ: ミリア レン ティン ナン(ミリア639)。
ミリア639: サッ! モルク ラプラミズ。
ラプラミズ: ナ プロトカルチャー デアンレカン カールチューン デアンチャーツ リンツ アルケス(プロトカルチャーの「遺跡」には「文化の断片」があるに違いない)。トウ メルトラン リンツ ウロルツ デアンレカン(我らの勝利のため必ず遺跡をうばいとれ)。
ミリア639: サ。リンツ メルトラン マトラスカス…(女の意地にかけて必ず…)。

[ 警報。マックスひきいるバルキリー・スカル小隊、ミリア艦の迎撃に向かう ]
未沙: 敵機捕捉。エリア27より海面付近を接近中。女性ばかりのメルトランディのものと推定される。
柿崎: 女ばかり? そりゃいいや。
輝: 女だからってあまくみるなよ。あいつら、下手すりゃゼントラーディより手ごわいぞ。
マックス: ふ…。そいつはおもしろい。
輝: おもしろい!?
マックス: どうしたんです、一条くん。きゅうに臆病風吹かせちゃって。
輝: なにぃ!
柿崎: マックス隊長のいうとおり。もしかすると、女ができたせいかな? いっはっはっは…。うわあ!
[ 柿崎機、撃墜 ]
輝: 柿崎!
ミリア639: エット プロトカルチャー!(何がプロトカルチャーだ!)。
[ ミリア639のクアドラン・ロー、ミサイルを発射 ]
マックス: うっ!
[ マックス機、回避行動。行きちがったミリア機を追撃する ]
ミリア639: [ マックスの追撃に気づく ]ムッ!
[ マックス機、レーザー機銃を発射するが回避される ]
ミリア639: ラック!
マックス: はずれた!?
[ ミリア機、砲撃。マックスは回避 ]
ミリア639: デ カルチャー!?
[ マックスとミリア639の空中戦。ミリア機、被弾 ]
ミリア639: デブラン!
[ ミリア機、ミサイル放射 ]
マックス: うわっ!
[ マックス、バトロイドからファイターへ変形して、ミサイルを回避 ]
マックス: うわあ!
[ さらにマックスがミリア機に損害をあたえる ]
ミリア639: デブラン デ カルチャー!
[ 手傷を負ったミリア機、退却をはじめる。追撃するマックス。両機とも被弾している ]
マックス: のがすものか! [ 警報 ]あっ、う。戦艦か!
[ ミリア機を追って、マックスが戦艦内に飛びこむ。ハッチ付近にひそんでいたミリア機が背後から銃撃。マックスの反撃 ]
ミリア639: はっ!
[ マックス機、ミリア機の白兵戦 ]
マックス: うっ。
ミリア639: あっう。

[ ミリア艦が主砲発射。マクロスの主砲ビーム・システムを損壊させる。マクロス、プロトカルチャーの遺跡に倒れこむ ]

[ 一条機 ]
輝: ちっきしょう、このままじゃ!
[ 通信機をとおして歌ごえが聴こえてくる ]
輝: ん? [ 驚愕。独白 ]ミンメイ…!

メルトランディ兵士B: ああ!
メルトランディ兵士C: ああ!

[ マクロス・ブリッジ ]
シャミー: なんなの、これ!?
キム: どこの歌?
未沙: どうして、ミンメイさんが!

[ ミリア艦。マックスが機体を降りて、負傷して倒れている巨大なミリア639に近づく ]
マックス: はあ、はあ、はあ…。ああ!
[ マックス、ミリア639のうつくしさに息をのむ ]
ミリア639: あ、ああ…。
マックス: うつくしい…。
ミリア639: ああ…、ウツクシイ…?

[ ミリア艦ブリッジ ]
メルトランディ兵士D: メルトラン マトラスカス デ アルク(兵士の戦闘レベルいちじるしく低下)。ラット メナザーン?(この音は一体?)
デワントン3565: ラーク! マーカ リーマローム デアンレカン!?(これが「遺跡の力」なのか!?)。ハッ!
[ ボドル基幹艦隊が接近してくる。ミリア艦、フォールドして戦線離脱 ]

[ ボドル旗艦中枢部 ]
エキセドル4970: 成功です。メルトランめ、退却いたしました。
ボドルザー: ホダンツ。このミーゾーン(歌)にミンメイがいっていたカーシ(歌詞)がそろえば、メルトランを降伏させられる。
[ ボドル旗艦の巨大な船影が、マクロスと異星人の遺跡をつつみこむ ]

[ マクロス・ブリッジ ]
未沙: 艦長、ゼントラーディ軍が和平交渉を申しいれています。
グローバル: 和平交渉!?
[ ボドル基幹艦隊が近づいてくる ]

[ マクロス記者会見室 ]
記者A: ああ〜、なんの発表があるんだ?
記者B: まいったな、いつまで待たせるんだ?
[ MBSマクロス放送局プロデューサが合図をおくる ]
司会者A: ただいまから、グローバル准将による公式発表をおこないます。
[ グローバル艦長、中央の演壇に進みでる ]
グローバル: [ 咳ばらい ]んん〜、っうん。統合宇宙軍SDF−1マクロスは、去る9月11日午前11時をもってゼントラーディ軍第425ボドル基幹艦隊と和平を成立いたしました。
[ カメラのフラッシュと記者たちのざわめき ]
記者C: ええっ、どういうことだ!?
グローバル: そしていま、われわれが不時着しているこの都市宇宙船の廃墟を調査した結果、この都市を建造した異星人は、いまから50万年もの昔にさかえたプロトカルチャーという一大星間文明の末裔であり、われわれ地球人もゼントラーディ軍人、そしてかれらと敵対するメルトランディの人びとも、もとはといえば、すべてこのプロトカルチャーとおなじ遺伝子構造をもつことが判明いたしました。
記者D: われわれとおなじだって!?
記者E: いったいどうすればいいんだい…。
グローバル: かれらは、プロトカルチャーの驚くべき科学力によって人間の遺伝子を変換操作してつくりだされたのです。ごらんください。
[ 上方からスクリーンが降りてくる。マイクローン装置によって巨人がマイクローン・サイズに変換される映像が映しだされる ]
グローバル: かれらの遺伝子工学をもってすれば、巨人をわれわれとおなじ人間にもどすことも可能なのです。ここに同席されている3名が、いまごらんになられたゼントラーディ人です。
記者: [ 口ぐちに ]ええ! おおっ!
[ ワレラ25258、ロリー28356、コンダ88333があわてて立ちあがり、カメラのフラッシュを浴びる ]

[ ブリタイ艦ブリッジ。ブリタイ7018 ]
グローバル: [ テレビ放送 ]かれらはまったく文化を知らない戦闘人種であり、男と女というふたつの勢力にわかれて、50万年ものあいだ戦いつづけてきた者です。
エキセドル4970: プロトカルチャーのエルケル(信号)受信は、作戦成功まで禁止されているはずでは?
ブリタイ7018: うむ。
エキセドル4970: マーカ ヤット?
ブリタイ7018: 見えるか、あの3人が。
エキセドル4970: 地球人を停戦させるために送りこんだマイクローンが、なにか?
ブリタイ7018: ふむ。ブリタイは、ゼントランがあんなにカルチャーなところを見たことがない。
ロリー28356: [ テレビ放送。飲みものを口にして ]カルチャーなものを口にするのは、はじめてです。
ワレラ25258: [ テレビ放送 ]それに、こんなふうにメルトランと、いや女性たちと接するのは、戦うよりもずっと、ずっと…です。
コンダ88333: [ テレビ放送 ]同感です。
[ ワレラ25258、コンダ88333のコメントが女性士官らの笑いを誘う ]
ブリタイ7018: わたしも、マイクローンになってみたい。
エキセドル4970: ヤット デ カルチャー!?
ブリタイ7018: ふん、冗談だ。
エキセドル4970: ジョーダン?
ブリタイ7018: 知らぬか?
エキセドル4970: はい。
ブリタイ7018: プロトカルチャーのミンメイが教えてくれた、「本気ではない」という意味らしい。
エキセドル4970: デ カルチャー…。

[ マクロス記者会見室 ]
司会者A: ご紹介しましょう、銀河系最大のスーパースター、リン・ミンメイ!
[ ミンメイ、ステージ中央に歩みでる。歌「愛・おぼえていますか」のメロディがながれる ]
ミンメイ: いまながれているこのメロディは、ゼントラーディ軍に古くから伝わるメモリー・プレートを解読したものです。ただ残念なことに、かれらのメモリー・プレートにはこの歌の歌詞が記録されていませんでした。そこでいま、マクロスに乗っている作詞家の先生がたがこの曲のために、すてきな歌詞をつくってくださっています。
[ 控室に、輝と未沙が待機。係にうながされて、椅子から立ちあがる ]
ミンメイ: そしてこの歌を全宇宙にながし、メルトランディの人たちとも和平を結んで、戦いのない平和な世界をつくりたいと思います。
[ 歓声と拍手 ]
司会者A: わたくしたちがこうして平和への第一歩を歩めるのも、多くの人びとの尊い犠牲があったればこそです。思えばつらく、悲しい日々でした。戦乱に巻きこまれ、捕虜となり、別れわかれになりつつも奇跡的に助かり、苦労を堪えしのんできた若者たち。いまここに、涙の再会です!
ミンメイ: えっ!? [ 閉じていた眼をひらく ]
司会者A: リン・ミンメイさんが、待ちに待ったその人は…。
ミンメイ: あっ! [ 顔をあげて周囲をさがす ]
司会者A: 統合軍チーフ・オペレーター、早瀬少佐と、あのバルキリー・スカル小隊の一条中尉です!
ミンメイ: あ…。
[ ステージ上手に輝と未沙があらわれる。敬礼。拍手と歓声。輝と未沙、前に進みでる ]
ミンメイ: あ。
[ ミンメイ、輝だけを見ている ]
ミンメイ: ああ…。輝…。
[ ミンメイの頬を涙がつたわる ]
輝: ミンメイ。
ミンメイ: 輝。[ 駆けよる ]輝!
輝: う…。
[ 輝は一瞬、気づかって未沙のほうを見る ]
ミンメイ: 輝、輝、輝…。
[ ミンメイ、輝に抱きつく ]
記者: [ 口ぐちに ]ああ! おお〜!
[ さかんにカメラのフラッシュが焚かれる。ミンメイが笑って顔を起こすと、輝は視線をそらして未沙を見る ]
ミンメイ: [ 驚き ]輝…! 輝…。
[ ミンメイ、輝の視線を追って未沙に気づく ]
未沙: う。
[ 対峙する輝、ミンメイ、未沙。記者たち、3名のただならぬ雰囲気に気づいて騒ぎはじめる ]

[ マクロス市街地の音楽スタジオ ]
作詞家A: 「愛する乙女、夢みる季節」?
作詞家B: ああ、どれもいまいちだなあ。

[ 未沙の部屋。遺跡の街から持ちかえった食器がならんでいる ]
未沙: あ…。
[ 未沙、遺跡の街で見つけたプレートを手にとって、文字を読む ]
未沙: おぼえていますか、眼と眼が…。はっ!
[ 未沙、ミンメイの持ちかえったメロディに言葉をのせて口ずさむ ]
未沙: おぼえていますか、眼と眼があった…。まさか!

[ 輝の部屋。輝、ミンメイのポスターをながめている ]
輝: [ ため息 ]ふう。
[ 輝、ポスターをはがそうとする。呼び鈴が鳴る ]
輝: ん? は〜い。
[ 輝がドアを開けると、ミンメイが立っている ]
輝: ああ! ミンメイ…。
[ ミンメイ、顔をあげてほほえむ ]
ミンメイ: ああ。

[ 未沙、部屋でプレートの文字の翻訳をすすめている ]

[ 輝、コーヒーを準備する ]
輝: いま、けっこういそがしいんだろ? そういえば、例の歌の歌詞はでき…。
[ ミンメイ、輝を背中から抱きしめる ]
輝: ミンメイ…!
ミンメイ: 好きよ。
[ 輝、顔を曇らせる ]
ミンメイ: あの人とのあいだに、なにがあったか知らないわ。でもね、それでもね、あたしはあなたが好き。
[ 輝、ポットからコーヒーがあふれだしているのに気づかない ]

[ 未沙、エレベータに乗って、輝の部屋に向かっている ]

[ 輝の部屋 ]
輝: ミンメイ、僕は…!
[ 輝、いいかけるが、部屋に未沙が入ってくる ]
輝: ん?
ミンメイ: ああ?
[ 未沙が部屋に入ってくる ]
未沙: あっ!
輝: あっ!
ミンメイ: あっ!
未沙: は…。
[ 未沙、うしろ手にドアを閉めてすすみでる。輝を見つめる ]
輝: 少佐。
未沙: どういうこと…?
輝: ん、ん…、どうって。
未沙: これがなんだかおぼえている?
[ 未沙、遺跡で発見したプレートをさしだす ]
輝: あっ! ああ。
未沙: 遺跡の街で見つけたプレートよ。これを解読してたら、あの曲の歌詞みたいだってわかったから…。
ミンメイ: えっ。
輝: えっ、あの歌の。
未沙: あなたに、最初に確かめてもらおうと思ったのに…。
[ 未沙、かたわらの棚に手をついて肩を落とす ]
輝: ん…、[ 未沙が誤解をしていることに気づいて、歩みよる ]ちょっと待って。ちがうんだよ。それはきみの誤解…。
ミンメイ: ちがうだなんて!
輝: はっ…。
ミンメイ: 誤解だなんて。
輝: う、うあ…。
ミンメイ: あんまりだわ。あんまりよ! ああっ!!
[ ミンメイ、部屋を飛びだす ]
輝: [ あとを追いかける ]ミンメイ!! ミ…、うっ!
[ 輝の眼の前でドアが閉まる。輝、ドアに手をかけようとして、やめる ]
未沙: はやく追いかければいいじゃない。せっかくまた会えたのよ。遠慮することないわよ。同情なんて、されたほうがみじめ…。
輝: そんなんじゃない!
未沙: はっ…!
輝: そんなつもりじゃない。
未沙: は…。
[ 輝と未沙、おたがいに背を向けあっている ]
輝: 誰もいない地球をふたりでさまよい歩いて、なんとか無事にマクロスにもどれて、街のなかでミンメイの歌を聴いたとき、スクリーンのなかの彼女を見たとき、わかったんだ。…いつまでもそばにいてほしいのは、…きみだってこと。
未沙: はっ!
輝: いまでもそのつもりだ。
未沙: 本気なの?
輝: いつ死んじまうかわからないけど、[ 未沙を振りかえって ]こんな僕で、よければ。
未沙: [ 涙があふれだす ]う、ああ…。[ 涙をぬぐいながら笑って] どうしたんだろ、おかしいね、輝。
[ 未沙、輝のほうを向く ]
未沙: 涙がとまりませんよ…。
輝: 未沙。
未沙: ああ、輝!
[ 未沙、輝に駆けよる。抱きあう輝と未沙。とつぜん警報が鳴る ]
輝: はっ!
未沙: あっ! 第一次非常態勢…!

[ バルキリー隊のパイロットたちが宿舎から飛びだしてくる。発進準備をいそぐパイロットたち ]
乗組員B(女): Attention grade war. Attention grade war. Take a position for max an instant. Repeat, take a position for max an instant. This is not a guilt.
管制官B(女): フォールド反応、多数接近中。
乗組員B(女): This is not a guilt.

[ ミンメイをさがして街を走る輝 ]
輝: うっ、はあ、はあ…。
未沙: [ 輝の回想 ]この歌詞をミンメイさんに。

[ ボドル旗艦 ]
ボドルザー: ヤック! カーシ(歌詞)ができていないだと!?
ゼントラーディ兵士O: サッ。タルニ、リン・ミンメイが行方不明とのエルケルです。
ボドルザー: ダンツ デ カルチャー。
ゼントラーディ兵士O: ホルト メルトラン デフォールド。
ボドルザー: んん?

[ メルトランディ軍ラプラミズ艦隊がつぎつぎにデフォールドする ]

[ マクロス市街地を走る輝 ]
輝: はあ、はあ、はあ…。
未沙: [ 輝の回想 ]いまミンメイさんに歌を歌わせることができるのは、あなたしかいないわ。

[ ボドル旗艦 ]
ゼントラーディ兵士O: ラプラミズ アルマ ズカーラ デフォールド。
ボドルザー: 歌が未完成ではメルトランを屈服させることはできん。となれば、全滅させるのみ。目標、マクロスならびにラプラミズ艦隊。アルマ ゼントラン フォルト ガドラ!

[ マクロス・ブリッジ ]
グローバル: しょせんは、みじかい平和でしかなかったか。全艦ただちに発進! 至急この場を待避せよ!
クローディア: アイアイサー。

[ ゼントラーディ艦隊の砲門がひらく。マクロス、浮上開始。ゼントラーディ軍の砲撃がはじまる。たちまち都市遺跡は崩壊し、マクロスは大きな爆発に巻きこまれる ]
ブリッジ: ああっ!!
輝: [ 衝撃 ]うわっ! [ 転倒 ]はじまった!
[ 輝、ふたたび駆けだす ]

[ ラプラミズ旗艦 ]
ラプラミズ: クッ。デブラン ボドルザ。
[ メルトランディ軍、ボドル基幹艦隊の先制攻撃によって多数の損害をこうむる。マクロス、地球を脱出する ]

[ 輝、階段を駆けあがってゆく。マクロス、被弾。ビーム砲が市街地まで到達する ]
輝: [ 衝撃 ]うわあ!
[ 輝、ふたたび階段を駆けあがってゆく ]

[ マクロス展望台。ミンメイがひとりきりでベンチにすわっている。ミンメイ、うしろから近づいてくる足音に気づく ]
ミンメイ: はっ!
[ ミンメイが振りかえると、輝が展望台にあがってくる ]
輝: えっ、えっ、ああ、はあ…。
ミンメイ: はあ…、輝!
輝: [ 息を切らせながら ]ミンメイ。
ミンメイ: 来てくれたのね。わたしのために、来てくれたのね。
[ 輝、懐中から歌詞を書いた紙をとりだす ]
輝: きみにこの歌を、歌ってもらいたい。
ミンメイ: はっ、なによそれ、なんであたしがあの人の見つけた歌を歌わなきゃいけないのっ!

[ ボドル旗艦ブリッジ ]
ゼントラーディ兵士P: ゴルグガンツ砲。ガーマ ズカラ インデンゼンバン。安定サーキットの損傷。発射は1回が限度です。
ボドルザー: エスケスタ! ただちにガンツ ホルト ガドラ!
ゼントラーディ兵士P: しかし、ラプラミズ艦との軸線上には、友軍艦隊数万隻がおりますが…?
ボドルザー: かまわん。ガドラス!
[ ボドル旗艦から主砲ゴルグガンツ砲が発射される ]

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ブリタイ7018: ヤック!

[ ラプラミズ機動要塞 ]
ラプラミズ: デ カルチャー!!
[ ラプラミズ機動要塞、撃沈 ]

[ マクロス展望台 ]
ミンメイ: そんなもの歌ったって、勝てる見こみなんか…、ないじゃない!
[ ミンメイ、泣きながら輝にすがりつく ]
ミンメイ: うう…。それより、一緒にいて、輝。どうせ死ぬなら、このまま一緒にいたい。
輝: 僕らだけの問題じゃない。マクロスに乗っているみんなのために。
ミンメイ: そんなの関係ないじゃない! どうして世のなかにいるのが、あたしたちふたりきりじゃないの? …あなたとわたし以外、うう…、みんな死んじゃえばいいのに! う、うう…。
[ 輝、ミンメイの頬を平手で打つ ]
ミンメイ: あっ!
[ ベンチにくずれ落ちるミンメイ。顔を起こして一瞬、怒りの眼を輝に向けるが、輝が苦しんでいるのを見て気持ちがかわる ]
輝: 先輩だって、柿崎だって、みんな死んじまったんだ。やりたいことだって、いっぱいあったろうに…!
ミンメイ: はっ。
[ 輝、ミンメイの肩を両手でつかんで ]
輝: きみはまだ歌が歌えるじゃないか!
ミンメイ: は…。
[ ミンメイ、輝の心がもはや自分にはもどってこないことを知ってうつむく。ながい間。展望台のすぐ近くで、バルキリーが爆発する。顔をあげたミンメイ、輝にまだなにかをいいかけるが思いとどまる ]
ミンメイ: [ ため息 ]はあ。[ 笑顔 ]ごめんね、輝。どうかしてたわ、あたし。自分から好きでこの道、えらんだんだもんね。ここで歌わなかったら、死んじゃったお父さんやお母さん、うかばれないわ。
輝: ミンメイ!
ミンメイ: [ うなずく ]あたし、歌うわ。思いっきり!
[ ミンメイ、輝から「愛・おぼえていますか」の歌詞をうけとる ]

[ 衣装に着がえたミンメイ、マクロス・ブリッジ下の特設ステージで「愛・おぼえていますか」を歌う。一条機、発進。カイフン、音響をコントロールする。ミンメイの歌を聴いたゼントラーディとメルトランディの兵士たちの驚き ]

[ ミリア艦。出撃準備中のミリアと、巨大化したマックス ]
ミリア639: これは?
マックス: ミンメイの歌だ。

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ブリタイ7018: 不思議だ、この歌。ずっと昔に、聴いたような気がする…。なぜだ!?
[ 間。モニタには歌うミンメイの姿が映っている ]
エキセドル4970: わかりました。われわれの遺伝子提供者たちのカールチューンが、呼びさまされているのです。
ブリタイ7018: なにっ!?
エキセドル4970: 50万周期のときを超えて…。
ブリタイ7018: われわれにも、文化よみがえるのか…。

[ マクロス、敵艦隊の集中砲撃をうける。市街地の建物がくずれおちて、人びとが下敷きになる。ゼントラーディ戦艦1隻がマクロスに突撃してくるが、側面からビーム砲をあびて撃沈される。危機を救ったのは、ブリタイ艦 ]
ブリタイ7018: ジン・ゼム・イン・バン・アドクラス艦隊より、マクロスへ。これより貴艦を援護する。
グローバル: 援護!?
未沙: えっ!?
エキセドル4970: プロトカルチャーの文化をうしなうわけにはまいりません。
[ ミンメイ、表情をかがやかせる ]
ブリタイ7018: リン・ミンメイの歌を聴くすべての者に告げる。われらの敵はただひとつ、ゴルグ・ボドルザーを倒し、ふたたび文化をとりもどすのだ…!
[ マクロスの周囲につぎつぎとゼントラーディ、メルトランディ両軍の戦艦があつまってくる。マクロスを先頭に、造反艦隊がボドル旗艦に侵攻してゆく ]

[ ボドル旗艦 ]
ボドルザー: これがリン・ミンメイの歌かっ…!

[ マクロスと造反艦隊、一斉射撃。クアドラン・ローを操るマックスとミリア639。一条機、戦艦を撃破してバトロイド形態に変形し、マクロス・ブリッジを護衛する。眼で合図をおくる未沙 ]

[ マクロスと造反艦隊、ボドル旗艦表面に到着する。激しい戦闘。ブリタイ艦は傷つきながらもボドル旗艦に着陸し、主砲ビームを発射する。ブリタイ艦の主砲ビームがボドル旗艦の中枢部外壁に穴をあける。高速発進したマクロスが、穴に突撃してゆく。一条機、マクロス・ブリッジの未沙に敬礼をおくったのち、ファイターに変形。ボドルザーのいる中枢部に向けて飛びさってゆく ]

[ 一条機、目標を捕捉 ]
未沙: メイン・ターゲット、A133−Z165。
[ 輝、加速。ほそい通路に侵入してミサイルを発射。高速で通路をぬけると、ボドルザー本体の眼の前にやってくる ]
ボドルザー: おおっ! プロトカルチャー!!
[ 一条機、ボドルザーの頭部に一斉射撃 ]
ボドルザー: うわあああ…!
[ ボドルザーの脳漿がとび散り、頭部が完全に破壊される。ボドル旗艦全体に異常が発生し、やがて大爆発する ]

[ 爆発がやみ、閃光のなかから一条機とマクロスが浮かびあがる。輝、マクロス・ブリッジに向かって任務完了を告げる ]
輝: スカル1より、デルタ1へ。
[ ミンメイ、未沙、顔をあげる ]
未沙: あ…。
輝: 任務完了。これより帰艦します。
未沙: [ こみあげてきた涙をこらえる ]あ…。こちらデルタ1、了解。
[ 輝、ほほえむ ]
未沙: うふふふ。
[ 全戦域に、勝利の歓声がわきあがる ]

[ マクロス・ブリッジ。未沙、インカムをはずす。クローディアが未沙の肩に手をおく。ほほえみながら黙ってうなずくクローディア。未沙、うなずきかえす。グローバル艦長、深ぶかと艦長席に腰をおろす。ヴァネッサは眼鏡をはずしてコンソールに置く。キムは大きな伸びをして、リクライニング・シートを押したおす。シャミーはインカムを手にしたまま寝てしまっている。破壊されたマクロス市街地。喜びあう男女もいれば、呆然と立ちつくす人たちもいる ]

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
エキセドル4970: これからが、たいへんですな。
ブリタイ7018: ん?
エキセドル4970: この銀河系内だけでも、ボドルザーやラプラミズ・クラスの機動艦隊が一千艦隊以上は稼働しているはず。
ブリタイ7018: 確かにな。しかし歌ひとつでさえ、これだけのことができた。文化の力を信じるしかあるまい。

[ 「愛・おぼえていますか」の歌詞カードをたたんで手に持ち、マクロス・ブリッジにいる未沙を振りかえるミンメイ。一歩前に出ると、未沙が気づく。見つめあうミンメイと未沙。ミンメイ、歌詞カードを捧げるように高くかかげてほほえむ ]
ミンメイ: あ…。
[ ミンメイの無言の謝意を読みとり、未沙は謙遜するように首を横にふる。笑いかえす ]
未沙: あ…。
ミンメイ: ああ。
[ 未沙に、クローディアが近づいてくる ]
クローディア: 結局、なんだったのかしら、あの歌。
未沙: ただの流行歌よ。
クローディア: 流行歌?
[ 未沙、うなずく ]
未沙: 何万年も昔に異星人たちの街ではやった…、[ 独白 ]あたりまえの、ラブソング。

[ ミンメイ、つま先で拍をとりながらカウントしつづけている ]
ミンメイ: ワン・トゥー・スリー・フォー、ワン・トゥー・スリー・フォー…。
[ ミンメイを照らしていたスポット・ライトが消えてゆく ]
ミンメイ: ワン・トゥー・スリー・フォー、ワン・トゥー・スリー・フォー…。
[ 暗転 ]
ミンメイ: Oh, One Two !
[ エンディング曲「天使の絵の具」 ]

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登場する人びと

一条輝
リン・ミンメイ
早瀬未沙

ブルーノ・J.グローバル
クローディア・ラサール
ロイ・フォッカー
マクシミリアン・ジーナス(マックス)
柿崎速雄
ヴァネッサ・レイアード
キム・キャビロフ
シャミー・ミリオム

リン・カイフン

ゴルグ・ボドルザー
ブリタイ7018
エキセドル4970
カムジン03350
ワレラ25258
ロリー28356
コンダ88333

モルク・ラプラミズ
ミリア639

観客A - ミンメイ・ファースト・コンサート
観客B - ミンメイ・ファースト・コンサート
観客C - ミンメイ・ファースト・コンサート
カメラマンA - 芸能記者
芸能評論家A
芸能評論家B
店員A - マクロス艦内のバー
記者A - マクロス記者会見室
記者B - マクロス記者会見室
記者C - マクロス記者会見室
記者D - マクロス記者会見室
記者E - マクロス記者会見室
司会者A - マクロス記者会見室
作詞家A
作詞家B

管制官A - マクロス・アームド1
管制官B(女)
乗組員A(女) - マクロス艦内放送
乗組員B(女) - マクロス艦内放送
パイロットA - 偵察機キャッツ・アイ

ゼントラーディ士官A - ボドル旗艦中枢部
ゼントラーディ兵士A - マクロス潜入部隊
ゼントラーディ兵士B
ゼントラーディ兵士C
ゼントラーディ兵士D
ゼントラーディ兵士E
ゼントラーディ兵士F
ゼントラーディ兵士G
ゼントラーディ兵士H - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士I - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士J - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士K - ヌージャデル・ガー
ゼントラーディ兵士L - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士M - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士N - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士O - ボドル旗艦
ゼントラーディ兵士P - ボドル旗艦

デワントン3565 - ミリア艦
メルトランディ兵士A - クアドラン・ロー
メルトランディ兵士B - クアドラン・ロー
メルトランディ兵士C - クアドラン・ロー
メルトランディ兵士D - ミリア艦

コンピュータA - プロトカルチャーの宇宙移民船

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ノート

劇場版製作にあたって、テレビ放送時と異なる設定が多数ある。

1.ゼントラーディ軍の敵対勢力
テレビ放送におけるゼントラーディ軍の敵対勢力は「監察軍」だったが、劇場版では「メルトランディ軍」、すなわち「女」の巨人戦闘種族に変更された。この変更にともないASS−1(地球に飛来してきた異星の宇宙戦艦)は監察軍ではなく、メルトランディ軍所属の戦艦だったということになる。
テレビ放送ではほとんどふれることなく謎のまま残された「監察軍」の存在を思いきって排除し、かわりに男に敵対する女だけの勢力「メルトランディ軍」を創出することによって、「男と女」という対立構造がより鮮明化された。テレビ版でも男女の関係はありえないことになっていたゼントラーディ軍だが、「男」だけのブリタイ艦隊と、「女」だけのラプ・ラミズ直衛艦隊とは同士として協力しあっており、戸惑いなく会話をかわすなどの不整合を生じている。
「メルトランディ軍」の案出はその不整合をおぎなうばかりでなく、劇場版の物語の焦点のひとつである「輝(男)」と「未沙(女)」の対立から、理解をへて、愛がめばえるという個の物語を、より大きな構図で補完しているという点で大きな効果を発揮している。

2.主要人物の人間関係
テレビ版の一条輝とリン・ミンメイはともにごくふつうの民間人として出会い、その後、輝は軍人、ミンメイはアイドル歌手へと異なる道へすすむことになるが、劇場版では輝はすでにバルキリー・スカル小隊に所属する少尉で、ミンメイはトップ・アイドルの地位を確立している。
状況の変化が両者の心情にすこしずつ影響をあたえていったテレビ放送話とくらべて、劇場版は時間の都合から漸次的変化を切りすて、そのかわりに恋愛面に焦点をしぼっている(これを巧みなエッセンスの抽出と見るか、ステレオタイプ化した暴挙と見るかは、人によって異なるだろう)。
テレビ版の早瀬未沙は気丈さと責任感が前面に出ていて、ぎゃくにときおり見せる心情の吐露がけなげにも思えたわけだが、劇場版ではいわゆる女性的な面が強調されており、これも評価がわかれるところだ。
ほんとうの意味での三角関係が成立していなかったテレビ版とは異なり、劇場版では三者が相対する場面が設定された。輝はミンメイではなく未沙をえらぶことを宣言し、三角関係にはっきりと決着をつけている。

3.異星人のモンスター化
地球人に敵対するゼントラーディ軍とメルトランディ軍のうち、とくに前者の容姿は、喜劇ふうでもあったテレビ版とはちがって劇場版のシリアスな雰囲気にそうようデフォルメされ、なかばモンスター化している。テレビ版では「敵と味方」、「地球人と異星人」といった固定観念を相対化する視点が感じられたが、劇場版でのエキセドルなどの異様な姿はあからさまに地球人=味方、ゼントラーディ軍=敵を強調しているように思える。しかし、そのおかげで物語冒頭でのくどくどした状況説明なしに、鮮明な対立構造をとりあえずの手がかりとして物語のなかに入ってゆける。

4.その他
マクロスの両腕の部分に接続された戦艦は、テレビ版では強襲揚陸艦ダイダロス、攻撃空母プロメテウスだったが、劇場版では宇宙空母アームド1、およびアームド2になっている。プロメテウスは大破した姿で焦土と化した地球に残されており、輝と未沙が不時着した星がじつは地球だったと知るきっかけとして登場する。
ストーリー展開による異同。劇場版では、ゼントラーディ軍の捕虜となったのは輝、ミンメイ、未沙、フォッカー、カイフンの5名で、ボドル基幹艦隊中枢部まで連れさられるのはミンメイとカイフンのふたり(テレビ版では輝、未沙、柿崎)。ブリタイやエキセドルの眼前でキスしてみせるのはミンメイとカイフン(テレビ版では輝、未沙)。またテレビ版では未沙の命令によってしかたがなくキスに応じる輝という状況だったのにたいして、劇場版では敵を混乱させるために輝が強引に未沙にキスしている。
テレビ版では対ボドルザー戦の最終局面において戦線離脱していた輝と未沙だったが、劇場版では未沙はマクロス・ブリッジで戦闘指揮をとり、輝はボドルザー本体の破壊を目的とする単独の特殊任務をうけて、みごとに責務をはたしている。
そのほかメカニック全般、美術デザインの異同多数。

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