第33話「レイニー・ナイト」

セリフとト書き

[ オープニング ]

[ 未沙、ひとりお茶を飲みながら、思いなやんでいる ]
未沙: [ 独白 ]いわなくたっていいのに、なんであんなこといっちゃったのかしら。

[ 未沙、嫉妬して輝に冷たくあたったことを思いだす ]
未沙: [ 回想 ]あなた、中隊長じゃなかったの?
輝: [ 回想 ]ああ、わかったよっ! 行きゃいいんだろ、行きゃあ!
未沙: [ 回想 ]いそいでね。
輝: [ 回想 ]わかってる! [ ミンメイに ]ごめんよ、せっかくひさしぶりで、会えたのに。

未沙: あたしって、いやな女…。
クローディア: ここにいたの?
未沙: あっ!
クローディア: なによなによ、深刻な顔しちゃって。
[ クローディア、未沙の向かいにすわる。未沙、うつむく ]
クローディア: わかった。かれとなにかあったのね。
未沙: べつに。
クローディア: ダメよ、嘘ついても。顔にちゃんと書いてある。ぼうやとうまくいってないのね。
未沙: [ 話題をそらそうとする ]あたしになにか?
クローディア: いいものが手に入ったから、あげようと思ってさがしてたのよ。
[ クローディア、紅茶の缶をさしだす ]
クローディア: どう? 最高級の紅茶よ。
未沙: ああ、いいの? こんな貴重なもの。
クローディア: ご心配なく。自分のぶんはしっかり確保してあるわ。いいときにあげたみたいね。
未沙: え?
クローディア: もしぼうやと喧嘩中なら、今夜あたり、ふたりでそれでも飲んで仲なおりするのね。
未沙: 喧嘩なんかしてないわ。
クローディア: 素直がいちばんよ。
[ クローディア、立ちさる ]
未沙: ああ。

[ バルキリー・パトロール警備隊が帰還する ]
輝: ご苦労だった。みんな休憩に入っていいぞ。
整備員A: [ 敬礼 ]ご苦労さまでした。
輝: 格納庫に入れておいてくれ。
整備員A: あ、大尉。早瀬少佐から連絡するようにって、ことづかっています。
輝: 連絡を?
整備員A: はい。
輝: パトロール報告書を提出しろっていうんだろ。いわれなくったってとどけるよ。まったく仕事熱心も度がすぎると嫌みだ。

[ マクロス・シティの新地球統合軍司令センター。勤務中に紅茶の缶を見ながらほほえむ未沙を、ヴァネッサが不思議そうに見ている ]
ヴァネッサ: ん?
[ 輝、司令センター第1セクションに入ってくる ]
未沙: どうだった?
輝: 本日も異常なし。はい、報告書。
[ 輝、報告書を未沙の前にぞんざいに投げてよこす ]
未沙: 輝…。
輝: なんだ、このあいだのあれは? ヤキモチであんなこといったんなら、みっともないぞ。
未沙: ヤキモチですって!
輝: 「もし」っていったろ。おたくにかぎってそんなことはないよな。あくまでも仕事熱心だからだ。おたくにとって大事なのは、仕事だけだ。
未沙: 怒ってるのね、やっぱり…。
輝: ひさしぶりに会ったんだ。ミンメイと話す時間くらい、くれたっていいじゃないか。
未沙: あ…。
輝: かわいくないよ。[ ヴァネッサに ]こんな上司と毎日、顔をつきあわしてるんじゃ、息がつまるだろう?
ヴァネッサ: あ、そんなことは…。
輝: お茶でも飲みに行かないか?
ヴァネッサ: [ すこしうれしい ]あたしと!? あ、困ります。勤務時間ですし。
輝: いいさ、たまにはさぼったって。
未沙: [ 立ちあがる ]ひどいわ…!
[ 未沙、出てゆく ]
ヴァネッサ: いいんですか、あたしにあんなこといって。
輝: どうして?
ヴァネッサ: どうしてって…!? 早瀬少佐は一条大尉のこと愛してるんでしょう?
輝: 未沙が僕を? まさか。彼女は仕事だけが生き甲斐なのさ。
[ 輝、出てゆく ]

[ 憮然として廊下を歩く未沙 ]
未沙: [ 独白 ]なによ、あやまろうと思ってたのに!

[ マクロス・シティの新地球統合軍姿勢センター ]
キム: にぶいのねえ、一条大尉って。
シャミー: わかんないのかしら、女ごころが。
ヴァネッサ: 察するところあのぶんじゃ、早瀬少佐、まだ胸のうちを告白してない感じ。
キム: 端で見ていて歯がゆいわ。結局、愛は言葉よ。心に秘めてるなんてふるいなあ。
ヴァネッサ: 少佐、素直じゃないのよ。妬いてるなら妬いてるって、はっきりいっちゃえばいいのにさ。
キム: 少佐殿のハート、あたしたちとかたちがちがうんじゃない?
ヴァネッサ: あは、かもね。
シャミー: あたしだったら、愛してますって人前だって告白しちゃうなあ。
キム: あんたのは極度に露出症なだけ。
ヴァネッサ: うふふふ。
町崎: くふふふ。あっははは…。あっ!
シャミー: なによ、あんた!
町崎: ああ、すみません。
キム: あ〜、にぶいのも困るけど、敏感すぎるってのもやあねえ。
ヴァネッサ: すぐ女の会話に耳をたてるんだから!
シャミー: ズボン脱がしちゃうから〜!!
町崎: ええ〜!
シャミー: やだあ、本気にしてる。
キム: 異常体質。
町崎: あ、あんまりだあ。[ 泣く ]

[ 未沙、ひとりで夜道を家に向かっている ]
クローディア: [ 未沙の回想 ]素直がいちばんよ。
未沙: わかってるのよ、自分でも。
[ 雨が降りはじめる ]
未沙: あ、ああ。
[ 未沙、駆けだす。輝の家の前で立ちどまる。部屋にもどっている輝が窓ごしに見える。未沙、バッグから紅茶の缶をとりだす ]
輝: [ 未沙の回想 ]おたくにとって大事なのは仕事だけだ。かわいくないよ。
[ ずぶぬれの未沙に、ふいに傘がかけられる ]
未沙: あ。
クローディア: はい。風邪ひくわよ。
未沙: ほっといてちょうだい。
クローディア: やっぱりなにかあったようね。紅茶、ぼうやと飲む気になれないなら、あたしのうちに来て飲まない? とうぶんやまないわよ。
[ クローディア、未沙の手に傘を持たせてから走って家に向かってゆく ]
未沙: あ。
[ 未沙、もういちど輝の家を見てから、小走りでクローディアのあとを追う ]

[ クローディアの家。未沙、タオルで濡れた顔や髪をふいている。クローディア、茶器を運んでくる ]
未沙: お酒があったら、あたしお酒がいいわ。あたしだって飲むのよ。
クローディア: [ うなずく ]ワインでいい?
未沙: おまかせするわ。
クローディア: あたしもつきあう。
[ クローディア、ワイングラスを用意して、ワインをそそぐ。未沙、一気に飲みほす ]
クローディア: まあ。
未沙: はあ。あたしってそんないやな女かしら。
クローディア: ぼうやがどういったの?
未沙: ほんとはあたし、今日あなたにもらった紅茶をきっかけにして、あいつにあやまろうと思ってたの。
クローディア: でも、できなかった。
未沙: わかる?
[ クローディア、未沙のさしだしたグラスにワインをつぐ ]
未沙: やっぱりかわいくないのよ、あたし。
クローディア: 人は人。いろんな人がいていいんじゃない?
[ 未沙、ふたたびグラスをあける。頬が赤くなる ]
未沙: んん、素直になろうと思ってるの。でも、輝と面と向かうとどうしても…。
クローディア: はい、もっと飲んで。
未沙: まだ酔ってないわ。
クローディア: 誰もそんなこと聞いてないわ。[ ワインを飲む ]いまがどんなかたちでも、相手が生きてるだけでいいじゃない。
[ クローディア、フォッカーの写真を見る ]
未沙: あ…。
クローディア: かれが死んだとき、毎晩、こいつのお世話になったわ。[ ワイングラスを振る ]いまはそんなことないけど。
未沙: 聞いていいかしら。
クローディア: え?
未沙: フォッカー少佐とは、ずっとうまくいっていたの?
クローディア: マクロスで再会してからはね。それ以前はぜんぜん。ギクシャクギクシャク。
未沙: え?
クローディア: ね、話そうか、あいつのこと。
未沙: うふふ、聞きたいわ。
[ クローディア、フォッカーの写真をひき寄せる ]

[ 輝、自宅のベッドで寝そべっている ]
輝: [ 独白 ]やっぱり、いいすぎたかな。ちょっと…。

クローディア: かれと知りあったのは、統合戦争のころ。軍隊に志願したあたしは、片田舎の基地に配属されたの。これでも初々しかったのよ。そこにあいつがいたってわけ。

[ 地球統合軍の一基地。男たちのはやしたてる歓声と口笛が聞こえる ]
兵士: [ 口ぐちに ]かわいいねえ、こっち見て!
[ 女性隊員が整列行進している。そのなかにクローディアもいる ]
兵士A: 中尉、新入隊員ですよ。
フォッカー: [ 敬礼 ]ロイ・フォッカー中尉である。みなさん、よろしく! どうも!
[ 女性隊員はフォッカーを無視して行進をつづける ]
フォッカー: おお? ほほう。
[ フォッカー、クローディアを見てウインクする ]

クローディア: 口をきいたのは、1週間たってからだったわ。

[ 地球統合軍基地に警報が鳴る。戦闘機が発進する ]
フォッカー: おいでなすった。確認したのは前から来る、あれだけか?
クローディア: はい。南西方向よりの5機だけです。
フォッカー: あんた、クローディアっていったっけ。なかなかかわいいぜ。
クローディア: んん、フォッカー中尉。
フォッカー: こんどデートしないか? こんな片田舎でも、うまいもん食わせる店があるんだ。いつがいい?
クローディア: 中尉、私語は慎んでください。いま、どういうときだと思っていらっしゃるんですか。不謹慎です!
オペレータ(女): うっふふふ…。
フォッカー: いやあ、いいなあ、その感じ。新入隊員はすべからく、そうじゃなきゃなあ。
[ 基地の滑走路で爆発 ]
クローディア: ああ!
管制室: きゃあ! うわあ!
[ クローディア、コンソールの下に身を隠している。フォッカー、敵機を撃墜 ]

[ アイキャッチ ]

[ マクロス・シティ、クローディアの部屋 ]
クローディア: 正直にいって、かれのはじめての印象ってよくなかったわ。というより、どういう性格してるのか、あたしにはほんとうにわからなかったの。
[ 未沙、聞いている ]
クローディア: それでも半分興味があったから、デートをOKしたのよ。そしたら…。

[ フォッカーと待ちあわせているクローディア、時計をのぞきこむ ]
クローディア: ん?
[ 車の音が近づいてくる。それとともに数人の女の歓声も聴こえてくる ]
クローディア: あら!?
[ フォッカーが3人の女を乗せてやってくる ]
フォッカー: よう。いやあ、すまんすまん。みんなと約束していたのもすっかりわすれちまってたんだ、はは。いいだろう、いっしょで。[ 後部座席の女に ]おいおい、ちょっとつめろ。もうひとり乗るぞ。[ クローディアに ]ほら、乗れよ。どうした。
クローディア: けっこうです。失礼します!
フォッカー: ちょ、ちょっと! きみ!
女A: いいじゃないさあ。
女B: はやくドライブしましょうよお。
[ クローディアが振りかえると、フォッカーの車が向きをかえて走りさってゆくのが見える ]
女たち: きゃあ〜!!

クローディア: ずうずうしいっていうのか、無神経っていうのか、そのあともあきれかえったわ。

[ 地球統合軍。クローディアの眼の前に、プレゼントがさしだされる ]
クローディア: あ?
[ フォッカーが立っている ]
クローディア: 勤務中です。困ります。
フォッカー: ちゃんとデートをしてくれるまで日参するつもりだ。
クローディア: そ、そんな。
管制官A: 敵機接近!
[ 警報が鳴る ]
クローディア: たいへん!
フォッカー: [ プレゼントをわたして ]じゃ、また。
クローディア: ああ。
[ クローディア、手わたされたプレゼントの小箱を見てため息をつく ]
クローディア: [ ため息 ]はあ。
[ ひきだしを開けると、ほかにもおなじような小箱がたくさん入っている ]
オペレータB(女): クローディア、本部基地へつないで。クローディア!
クローディア: [ 上の空で気づかない ]…! はい!
[ クローディア、ひきだしを閉める ]

[ マクロス・シティ、クローディアの部屋 ]
未沙: 知らなかったわ、少佐にそんな一面があったなんて。
クローディア: とにかく、あたしの常識の範疇は超えてたわ。そんなかれでも、いざあたしの眼の前からいなくなったときはさびしかった。胸がキューンと締めつけられるような…。
[ 未沙、うなずく ]
未沙: 前線に出ていったの?
クローディア: ううん。統合戦争が終わって、南アタリア島へ転属になったの。
未沙: マクロスへ。
クローディア: そう。それなのにかれったら、あたしに手紙1本くれなかったのよ。1年も。人目もはばからず、あれだけ毎日、あたしに会いにきてくれていたのに。
未沙: でも、あなたもマクロスへ来た。
クローディア: なにかの因縁だったのね。かれとおなじ職場に転属になったのも、専任搭乗員養成所であなたと知りあい、同室になったのも。
未沙: わからないものねえ、人の縁って。
クローディア: 人の心もね。いつまでたってもかれが声をかけてくれないから、あたしは思いきっていってみたの。

[ 開発中のVF−1バルキリーを見つめるフォッカーに、クローディアが近づく ]
クローディア: おひさしぶりです。
フォッカー: おう、きみか。元気? こっちへ来たんだってな。
クローディア: あの、これ、お返しします。
[ クローディア、もらったプレゼントの小箱をさしだす ]
フォッカー: なにこれ? ああ、まだ持ってたの、こんなもん。あ、きみがそういうんなら。
[ フォッカー、プレゼントをポケットにしまいこむ ]
クローディア: まあ!
フォッカー: 見たまえ、こいつを! いずれは変形可能になる開発中の新型戦闘機VF−X1だ。エンジン性能、スピードはいままでのタイプとは段ちがい。いよいよ明日、こいつの試験飛行をやるんだ。あ、きみ!
[ クローディア、立ちさる ]
フォッカー: きみっ!

[ マクロス・シティ、クローディアの部屋 ]
クローディア: その直後、猛烈に自己嫌悪におちいったわ。このあたしがよ。信じられないでしょう?
未沙: [ 首を横に振って ]ううん。
クローディア: どうして正直に自分の気持ちを伝えなかったのかって。素直じゃなかったのね。
未沙: ああ…!
クローディア: 人の心はわからないっていったけど、あのときはほんとうにわからなかった。試作品の初飛行の2時間前だったかしら。かれの姿が見えないから、あたしはてっきり緊張して、ひとりでどっかへこもってると思ってたの。そしたら…。

[ 南アタリア島、基地内倉庫 ]
隊員たち(女): [ 口ぐちに ]きゃははは、やだあ。もう…。おかしい!
フォッカー: ははは。ほらほら、へへ、うまいもんだろう? ふぉ〜! ドゥンドゥンドゥンドゥン、ドゥンドゥンドゥンドゥン、ドゥンドゥン。はははは…。

[ マクロス・シティ、クローディアの部屋 ]
クローディア: わかるでしょ、女の子とふざけあっているのを見たときの、あたしの気持ち。
未沙: ええ。
[ 未沙、輝とミンメイが抱きあっている姿を思いだす。クローディア、フォッカーの写真を手にとる ]
クローディア: それまでのあたしって、かれの一面しか見なくてやきもきしてたのね。
未沙: え?
クローディア: 試験飛行があったその晩のことだったわ。そう、ちょうどこんな雨の晩だった。

[ 南アタリア島の軍宿舎。クローディアと未沙が寝ていると、電話が鳴る ]
クローディア: ん…、ああ。
未沙: んん。[ 起きない ]
[ クローディア、時計を見てから電話に出るため起きあがる ]
クローディア: ああ。
[ クローディア、電話をとる ]
クローディア: もしもし。
フォッカー: 俺だ、フォッカーだ。
クローディア: 大尉?
フォッカー: 会いたいんだ、いますぐきみに。
クローディア: いま何時だと思って…。
フォッカー: たぶん真夜中だ。
クローディア: 酔ってるのね。
フォッカー: 会いたいんだ、ちょっとでいい。
クローディア: はっ! [ 寝ている未沙を気にして ]困るわ。
フォッカー: 部屋のなかまで押しかけるつもりはない。
クローディア: いまどこ?
フォッカー: きみの宿舎の前の公衆電話だ。
クローディア: 来てるの?
フォッカー: だいぶ飲んでるが、正気だ。
クローディア: 待ってて。
[ クローディア、受話器を置く ]

[ 着がえたクローディアが、宿舎の外に走って出てくる。公衆電話ボックスの前に、雨に濡れたまま傘も持っていないフォッカーが立っている ]
フォッカー: やあ。こんな真夜中に呼びだして、すまない。
クローディア: [ 傘をかたむけながら ]大尉。あっ、ハンカチ持ってこなかったわ。
フォッカー: いやあ、かまわんよ。
[ フォッカー、傘から出る ]
クローディア: なにかあったんですか?
フォッカー: いや、いやあよう、きみにとってはどうでもいいことなんだ。でも、聞いてほしい。今日、俺は、試作品の初飛行の前、女子隊員とキャッキャバカみたいに振るまってた。先輩からはそのことでとっちめられたよ。でもなあ、俺だって不安だったんだ。
[ テスト飛行直前のコクピット内のフォッカーが、飛行に失敗して大破したほかの機の残骸を見つめる。フォッカー機、発進、離陸する。クローディアが管制室で見つめる ]
フォッカー: パイロットってのはそんなもんだ。平気な顔をして乗ってるように思うだろうが、明日、死ぬんじゃないかって、ふっと思うこともある。バカいってなきゃやりきれないときもある。いいかな、つづけて。
クローディア: ええ。
フォッカー: 前の基地でいっしょだったとき、俺がきみんところへ花束を持って出かけたのも、正直いってそんな気持ちからだ。怒らないでくれ。
クローディア: ああ…。
フォッカー: きみも知ってのとおり、女ともだちはたくさんいる。でもこんな愚痴を聞いてもらいたいと思ったら、きみしかいなかったんだ。今日は軽い飛行。明日はいよいよ、高度1万メートル上空で、本格的なフル・スピード試験飛行をやるんだ。
クローディア: 大尉。
フォッカー: もういいんだ。ありがとう。
[ フォッカー、よろめきながら去ってゆく ]

[ マクロス・シティ、クローディアの部屋 ]
未沙: 知らなかったわ。

[ 輝、ベッドに横になったまま考えている ]
ヴァネッサ: [ 輝の回想 ]早瀬少佐は、一条大尉のこと愛しているんでしょう?
輝: うっ! [ 上体を起こす ]未沙が、俺のことを…?
[ 輝、未沙が自分の写真をわたした日のことを思いだす。輝、家を飛びだして走る ]
輝: はあ、はあ、はあ…。
[ 輝、未沙の家まで来る。ノックするが返事はなく、部屋は真っ暗のまま ]
輝: [ 独白 ]おかしいな、まだマクロスに乗ってるのかな。

[ 輝、公衆電話から司令センターに電話を入れる ]
輝: 帰った? 2時間前に。ありがとう。[ 電話を切る ]どこへ行ったんだろう。

[ マクロス・シティ、クローディアの部屋 ]
クローディア: どう、信じられないでしょう?
未沙: わたしの知ってたフォッカー少佐って、ほんの一面だったのねえ。
クローディア: それからあたしは、かれをほんとに好きになったの。とにかく、どんなことがあっても、あせっちゃダメ。
未沙: ふふ。
クローディア: ぼうやのこと、よくかれから聞かされたわ。あいつは自分を表現するのが下手なやつだって。ふふ、おたがい、パイロットを好きになったわけね。
[ クローディアの家の電話が鳴る ]
クローディア: [ 電話をとる ]はい。はっ、一条くん!?
未沙: え!
クローディア: ええ、来てるわよ、ここに。ん、それがいいわ。
[ クローディア、電話を切る ]
クローディア: かれ、ここに来るって。
未沙: ああ、なにしに!?
クローディア: あたしは今夜、こいつと飲みたいの。[ フォッカーの写真を指でつつく ]悪いけど、帰ってくれる?
未沙: おじゃま?
クローディア: とっても。
未沙: ああ、でも…。
[ 家の呼び鈴がなる ]
未沙: あ!
輝: こんばんは、一条です。
クローディア: さあ、帰った帰った。
未沙: ああ。[ 立ちあがる ]
[ クローディア、紅茶の缶をさしだす ]
クローディア: はい、わすれもの。これの出番よ。
[ 未沙、紅茶をうけとる。クローディア、未沙の肩に手をおく ]
クローディア: 素直がいちばん。[ ウインクする ]
未沙: [ 頬を赤らめて ]ああ…。

[ 雨のなか、ひとつの傘に入って夜道を歩く輝と未沙 ]
輝: 不思議そうな顔、すんなよ。
未沙: してないわ。
輝: ひと言、あやまりたかったんだ。昼間はちょっといいすぎたから。
未沙: お酒くさい? あたし。
輝: 飲んだの?
未沙: ええ、ワインをすこし。
輝: そう。
未沙: ねえ、滅多にお目にかかれない紅茶が手に入ったの。よかったらいっしょに飲まない?
輝: ごちそうになるか! よしっ、僕んち行こう。いけね、砂糖を切らしてるんだ。
未沙: うふ、いらない。熱いお湯だけあれば。
輝: それだったら、いくらでもある。
[ 未沙、輝の腕をとる。ふたりが歩いてゆく ]

[ 次回予告 ]

ナレーター: 輝とミンメイは、2年ぶりに、ふたりだけのときをもった。しかし、それは未沙とのピクニックの約束を破った結果である。それとも知らず未沙は、ひとり輝を待っていた。
次回、「超時空要塞マクロス」、「プライベート・タイム」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(33)
リン・ミンメイ(32) - 回想シーンのみ
早瀬未沙(33)

クローディア・ラサール(30)
ロイ・フォッカー(22)
ヴァネッサ・レイアード(29)
キム・キャビロフ(26)
シャミー・ミリオム(28)

町崎健一(2)

整備員A - マクロス・シティ新地球統合軍司令センター
兵士A - 地球統合軍
オペレータA(女) - 地球統合軍
オペレータB(女) - 地球統合軍
管制官A - 地球統合軍
女A
女B

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スタッフ

脚本 … 星山博之
絵コンテ … 石黒昇
演出 … 笠原達也
キャラ作監 … 鈴木英二
原画 … A・I・C
動画 … A・I・C

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ノート

輝にお茶に誘われたヴァネッサが、一瞬よろこぶ様子がおもしろい。

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