第32話「ブロークン・ハート」

セリフとト書き

[ オープニング ]

[ バルキリー・スカル中隊と編隊を組んだ大型偵察機が飛んでいる ]
オペレータA: 敵ミサイル接近!
オペレータB: 1時方向10キロ地点に金属反応。
未沙: 金属反応? 敵基地かしら。
オペレータA: ミサイル接近まであと20秒。
[ ミサイルが近づいてくる ]
未沙: 敵ミサイル接近、スカル5、6、7番機はただちに迎撃!
[ バルキリー3機、散開する ]
未沙: スカル・リーダーへ。ミサイル発射地点に金属反応。データをインプット。攻撃せよ。
輝: 了解。
[ バルキリー3機がミサイルを迎撃する ]
輝: つぎは俺たちの番だ。
[ 一条機、目標に接近する ]
輝: アタック!!

[ 墜落したゼントラーディ軍の戦艦 ]
パイロットA: 生体反応はありません。
未沙: 誰もいないわね。
輝: さっきの攻撃は自動攻撃らしいな。
[ 肩に未沙をのせた輝のバトロイドと、ほか1機が戦艦内に侵攻する。とり散らかされた一室 ]
輝: 連中もそうとうあわてたようだ。
未沙: まだ立ちさってから2、3時間くらいしかたっていないようね。
[ 未沙の通信機が鳴る ]
未沙: はい、早瀬です。
パイロットB: 隊長、武器庫には大量の武器が置きっぱなしになっております。
未沙: 了解。念のため、武器庫はブロックしてください。
パイロットB: 了解。
輝: これで、俺たちの仕事もやりやすくなったみたい。
未沙: それならいいんだけど。あたらしい武器を手に入れるために、無茶しないかしら…。
輝: カムジンかあ。

[ カムジン部隊 ]
カムジン: へっへ、この疾走感、たまんないぜ。へい、野郎ども、しっかりついてきてるか。ラプ・ラミズ!
[ カムジン機のモニタにラプ・ラミズとオイグルが映る ]
ラプ・ラミズ: もっともっとスピードあげていいよ!
オイグル: 親分、ご機嫌だぜ!
カムジン: 親分もご機嫌。はっははは…。ひゃっほ〜!!
ゼントラーディ兵士: [ 口ぐちに ]イエーイ! ははは!
[ カムジンのグラージ以下、リガート隊が走る ]

[ イオネスコ・シティ、ミンメイのコンサート会場。ミンメイが「サンセット・ビーチ」を歌っている。観客の歓声があがる ]
観客: [ 口ぐちに ]ミンメイちゃ〜ん、かわいい。
[ 観客のゼントラーディ人が異音に気づく。音はしだいに大きくなってゆく ]
観客: [ 口ぐちに ]おお!
ミンメイ: はっ!
[ コンサート会場の天井が破られる ]
観客: [ 口ぐちに ]うわあ!
[ カムジン隊がつぎつぎと侵入して、ミンメイをとりかこむ ]
カイフン: ミンメイ、はやく逃げるんだ。ミンメイ!
[ カムジンのグラージがステージをたたく。ミンメイとカイフン、跳ねとばされる ]
カイフン: こっちだ!
[ ミンメイ、カイフン、ステージを駆けおりるが、カムジンが立ちはだかる ]
ミンメイ: あっ!
カムジン: ふははは。
[ カムジン、ミンメイとカイフンを手に捕らえる ]
ミンメイ: あっ、痛い!
カイフン: なにをするんだ!
カムジン: おとなしくしてなよ。
ゼントラーディ人A: きさま、ミンメイちゃんをどうする気だ!
カムジン: [ 部下に合図する ]おい。
[ 近くにいたリガートが、逆らったゼントラーディ人を蹴りとばす ]
ゼントラーディ人: どわっ! [ 壁に激突 ]ああ!! うう…。
カムジン: ふん。てめえらには用はねえ。とっととこの街をおん出るんだな。

[ マクロス・シティ司令センター。モニタにカムジンが映る ]
カムジン: ひさしぶりだなあ、グローバルのおっつぁんよお。元気だったか。
グローバル: 元気だが、いったいなんの用だね。
カムジン: これを見てもらおうか。
[ ラプ・ラミズ、カイフンをつまみあげる ]
ラプ・ラミズ: ほらっ。
クローディア: まあ!
グローバル: うん!?
カムジン: もうひとりいる。
[ カムジンの手に捕らわれたミンメイが映る ]
グローバル: き、きさま…!
クローディア: ミンメイ!
軍幹部A: こ、これはどういうことだ。
カムジン: このおふたりさんが誰だかわかるよな、カイフンとミンメイだ。
[ グローバル総司令官、うなずく ]
カムジン: へっへへ。このふたりの命が惜しかったら、明日の6時までに戦艦を1隻ひきわたしてもらおう。
グローバル: なに!?
軍幹部A: そんなことはできん!
カムジン: できねえだと! そうなりゃ明日の朝6時にはふたりはおだぶつよ。
[ カムジン、ミンメイをひねりつぶそうとする ]
クローディア: [ 眼をそむける ]ああ!
カムジン: おどろいた? ざまあみろ! ふっははは。
カイフン: ダメだ、こんな連中に戦艦をわたしては!
ラプ・ラミズ: う〜ん、ちっ、ちっ、黙っていな。
カイフン: こんな連中にわたすくらいなら、戦艦を破壊してしまうんだ。ああ…。
[ カイフン、ぐったりする ]
ミンメイ: カイフン!
カムジン: ま、やっこさんの言葉にしたがうか、俺の言葉にしたがうか、好きにしたらいいぜ。
グローバル: すこし時間をくれ。
カムジン: いいだろう。
オイグル: [ カムジンの肩をつついて ]親分、あれあれ!
カムジン: [ ピース・サイン ]あ、それから装備一式もわすれないでね。
[ 通信、切れる ]
軍幹部A: な、なんということだ。

[ カムジン部隊、コンサート会場を占拠する ]
ゼントラーディ兵士A: しっかし親分も偉えなあ。このふたりを捕虜にして戦艦と交換するなんて。
カムジン: ま、地球人のやりかたを学んだだけだがな。さあて、あとは軍の出かたしだいだ。しっかし作戦とはいいながら、待ってんのは俺の性にあわねえや。こうなったらドンパチひと騒動ほしいぜ。刺激がほしい! それまでおまえさんでもおもちゃにしてるかな。
[ カムジン、手のひらのミンメイを見る。ミンメイ、立ちあがり、「愛は流れる」を歌いはじめる ]
カムジン: うう…。
[ 驚きの表情をうかべるカムジン部隊の兵士たち。カムジン、膝をおとす ]
カムジン: うう…。
[ カムジンの手が床におちた隙をついて、ミンメイが逃げだそうとするが、すぐにカムジンに捕まってしまう ]
ミンメイ: あっ!
カムジン: な〜んてやると思ってたのか。俺たちはな、もうおまえさんにだまされるほどウブじゃねえんだ。
ラプ・ラミズ: うふっ、やっだ、ウブだって。
カムジン: 笑うな! 俺たちがおまえの歌に驚いたのは、あのころ文化の「ぶ」の字も知らなかったからだよ。
ミンメイ: 驚いたって…! ただそれだけなの!?
カムジン: そうよ。だいたいおまえの歌に、人を感動させる力があると思ってたのか。
[ ミンメイ、カムジンをにらみつける ]
カムジン: たんに、ものめずらしかっただけさ。
ミンメイ: [ ショックをうけて ]ああっ!
カムジン: それなのにあのバカ者ども、やれ文化だなんだと騒ぎやがって、きさまのおかげでやつらはふぬけになっちまったんだぞ!
[ カイフン、ミンメイをにぎっている手に力をこめる ]
ラプ・ラミズ: ああ、人質人質!
カムジン: おっとっと、そうだった。こいつ死んじゃいねえだろうな。[ ミンメイ、カムジンの手のひらで気をうしなっている ]大事な人質だってことをわすれてたぜ。
[ カムジン、ミンメイを指でつつく。ミンメイ、すこし体を動かす ]
カムジン: おい、ラプ・ラミズ。おまえもそこらへんでやめとけよ。
ラプ・ラミズ: わかってる。でも、もうすこし。ん〜、よしっ、ん〜、1、2! ん〜。
[ ラプ・ラミズ、カイフンの手足をひっぱって、おもちゃにする ]
カイフン: うう、やめろっ! うう…。
ラプ・ラミズ: なかなか文化的な遊びだな、これは。

[ マクロス・シティ司令センターの作戦会議室 ]
モトコフ: 閣下。
グローバル: なんだね、モトコフ准将。
モトコフ: あのように人質をとり、なにかを要求してくるなど、いままでゼントラーディ人はしませんでした。
グローバル: うむ、なるほどな。これも地球人の影響か。
軍幹部A: きゃつらに戦艦をわたすなど、とんでもないことです。あとあとのためにも、断固撃破すべきです。[ 鉛筆を折る ]
クローディア: いちおう人質のふたりは有名人ですから、もし要求を無視して殺されでもしますとマスコミが…。
軍幹部B: まだ体制がかたまっていない政府だから、民衆の動揺は避けなければならん。
[ クローディア、うなずく。グローバル総司令、立ちあがる ]
グローバル: 明日の6時まで、時間はじゅうぶんにある。打つべき手もひとつやふたつ、出てくるだろう。

[ 輝と未沙の部隊にクローディアから連絡が入る ]
クローディア: こちらの作戦は、いま説明したとおりよ。
未沙: わかったわ。
クローディア: 第103デストロイド部隊の駐屯地があるから、共同で行動して。指揮はあなたにまかせるそうよ。
未沙: はい、了解。作戦の内容をもういちどチェックして、さっそく行動指示に移るわ。
クローディア: じゃ、気をつけてね。ローズ・ティー用意して待ってるわ。
未沙: ふふ、ありがとう。
[ 通信切れる ]
未沙: 護衛の一条大尉を呼びだして。
オペレータC(女): 了解。こちら「チャチャ・キャット」。スカル・リーダー、応答願います。
輝: こちらスカル・リーダー。少佐、見つかったの?
未沙: いちばんよくない予想があたったわ。
輝: じゃあ、カムジンがなにか…。
未沙: イオネスコ・シティで人質をとって、戦艦1隻を要求しているわ。
輝: [ 口笛を吹く ]やってくれるじゃない。こっちが必死でさがしてたっていうのに。で、人質は?
未沙: ふたりよ。カイフンと…。
輝: ミ、ミンメイ!? あ、ああ、すまない。で、ミンメイは無事なのか?
未沙: ええ、いまのところ無事よ。それで近くにいるデストロイド隊と協力して、あたしたちは…。
[ 輝、未沙の言葉を半分しか聞かず、安堵の表情でコクピットにぶらさげてあるミンメイ人形をもてあそぶ ]
輝: よかった、無事なんだ。
未沙: [ 怒る ]一条大尉!
輝: え、はいっ!
未沙: 本作戦はほかの隊との共同行動です。くわしい内容はあとで知らせます。わかったわね!
輝: え〜、おおむね了解。
未沙: 以上です!
[ 未沙、げんこつで通信スイッチを切る ]
未沙: んっ!
輝: ああ? あいつ、なに怒ってんだろう。それにしてもミンメイを人質にとるなんて…!

[ 第103デストロイド隊駐屯地。輝がバルキリーに乗りこもうとする ]
未沙: ねえ、ほんとにカムジンがこんな作戦にひっかかると思う?
輝: もうこのことはなんども話しあったじゃないか。カムジンならひっかかるよ、かならず!
未沙: もし、ひっかからなかったら?
[ 輝、バルキリーから降りて未沙に近づく ]
輝: じゃあ、きみは街を包囲して攻撃をかけ、その隙に人質を救出しろってのか?
未沙: あ…。
輝: 上層部の考えた、人質の命をどうとも思わない、あんな作戦なら俺は降りる! きみが指揮をとるんだから、ん…、現場のやりかたってのがあるだろうが!
未沙: そんないいかたって…。かりにもあたしは指揮官よ!
輝: そんなもこんなもあるか! 人質の命が、最優先なんだ!
未沙: ミンメイのことになると、ずいぶん張りきるのね。
輝: ええ?
未沙: あたしが人質だったらこうは…。
輝: [ 未沙の両肩を持って ]ばかっ! 人の命がかかってるとき、冗談なんてよくいえるな!
[ 輝、バルキリーに搭乗する。うなだれる未沙。未沙の通信機が鳴る ]
パイロットC: 隊長、作戦指示願います。
未沙: バルキリー隊出撃。合流ポイントへ。デストロイド隊、出撃スタンバイ。
[ バルキリー隊、発進 ]

[ アイキャッチ ]

[ イオネスコ・シティのコンサート会場。カムジンたちが飲みくいしている ]
カムジン: [ 酒びんを差しだして ]ほら、ラプ・ラミズ。
ラプ・ラミズ: ふふふ。
[ ラプ・ラミズ、一気に飲みほす ]
オイグル: ぐははは、あねさんすごいねえ。
ラプ・ラミズ: ふう〜、もう1杯いこうかあ。
カムジン: いい飲みっぷりだ、気に入ったぜ。
ラプ・ラミズ: まだまだ。
ゼントラーディ兵士: [ そろって ]ぐははは…。
[ ミンメイとカイフンは、床につき刺さった巨大なフォークでかこまれた檻に入れられている。フォークを動かそうとするがびくともしない ]
カイフン: くっ、くっ!
ミンメイ: あっ、ダメよ、びくともしないわ。
カイフン: はあ、まったくなんて馬鹿力でつき刺したんだ。
ミンメイ: あたしたち、助かるのかしら。
カイフン: わからん。僕たちのために軍部が戦艦をよこすとは考えられない。下手すると、見殺しかもしれない。
ミンメイ: いやよ、そんなの!
カイフン: いやっていったって、しょうがない。
ミンメイ: 輝、助けにきてくれないかなあ。
カイフン: よしっ、かれらを説得してみよう。
ミンメイ: やめて! そんな無駄なこと。
カイフン: 無駄なものか。かれらも僕たちとおなじ人間だぞ。
ミンメイ: [ ひとり言 ]どこまでいっても、あなたは口さきだけなのね…。
カイフン: みなさん、戦艦を手に入れてどうするのです!
[ カムジンたち、驚いてカイフンを見る ]
カイフン: また戦場をつくりだし、同胞の死をつくりだすのですか! 戦いはなにももたらしません。あなたがたも、戦いのむなしさをよくご存じでしょう。あなたがたはいちど文化にふれたではないですか。その文化を、平和を、なぜ捨てるのです! もういちど文化的な生活にもどってください! ただたんに破壊的要求にしたがって生きるなんて…。
カムジン: [ さえぎって ]ええいっ!
[ カムジン、酒びんを叩きわる ]
カイフン: あ…。
ミンメイ: ああっ!
カムジン: 文化文化とうるせえやつだな。俺たちゃ文化のしかたくらい知ってらあ。
カイフン: 文化のしかた?
カムジン: そうよ。おい、ラプ・ラミズ。
ラプ・ラミズ: うん、なんだ?
カムジン: いいか、文化ってのはなあ、こうやるんだ!
[ カムジン、ラプ・ラミズにキスする ]
ラプ・ラミズ: ん…!
カイフン: ああっ!
ミンメイ: ああ…!
[ カイフン、がっくりと膝をおとす ]
オイグル: お、お、お、親分。文化してる最中に申しわけないんだが…。
[ カムジン、キスをつづけながら眼だけオイグルに向ける ]
オイグル: 仲間からの救助連絡が入ってますんで…。
カムジン: なに!?
ラプ・ラミズ: [ 倒れこんで ]ああ…。この文化、いまがいいとこだったのにねえ。
カムジン: [ 駆けだす ]文化のつづきはあとだ。
[ 脱落者に変装したゼントラーディ人がモニタに映っている ]
ゼントラーディ人B: カムジンさん、俺たち、あんたがイオネスコ・シティにいるって聞いて、うわあ!
[ ゼントラーディ人の近くで爆発が起こる ]
カムジン: どうした!
ゼントラーディ人B: うう…、だいじょうぶのようです。それで仲間に入れてもらおうとここまで来たんですが、パトロール部隊に見つかっちまって…。[ 背後をミサイルが飛ぶ ]助けてください、カムジンさん! 助けて、カムジンさ〜ん!
[ 通信、途絶える ]
カムジン: 助けてやる。なんとかもちこたえてろ! [ 立ちあがる ]ようし、野郎ども出撃だ! 日ごろの鬱憤、たっぷり晴らしてやる!

[ 変装のゼントラーディ人とバトロイド ]
ゼントラーディ人B: はっははは。こんなもんでどうかな、おい?
パイロットD: まあまあだね。おい、火あるよ。
[ バトロイド、ゼントラーディ人のくわえた煙草にガンポッドで火をつける ]
ゼントラーディ人B: おう、ありがとさん。う〜、今日も文化がうまい。

[ イオネスコ・シティのコンサート会場 ]
ラプ・ラミズ: こんなに連れていくのか? ほとんどぜんぶ。
カムジン: 待つなんて俺にはあわねえのさ。野郎どももおなじよ。やっぱり戦ってるのがいちばんなんだ。ふっふふ、腕がなるぜ!
ラプ・ラミズ: ん、文化のつづきはまたおあずけか…。
カムジン: グラージをやるからいっしょに来るかい?
ラプ・ラミズ: あ、ついていってもいいのか?
カムジン: おまえなら、足手まといにならねえだろう。
ラプ・ラミズ: でも、おまえはなんに乗るんだ。
カムジン: いい乗りものがあるさ。

[ カムジン、デストロイド・モンスターにまたがる ]
カムジン: 野郎ども、仲間を助けだしに行くぞ〜!
ゼントラーディ兵士: [ 口ぐちに ]おお〜!
ラプ・ラミズ: それっ!
[ ラプ・ラミズ、グラージに搭乗する。カムジン、モンスターの横腹を蹴る ]
ゼントラーディ兵士B: おい、横っ腹、前進だったっけ?
ゼントラーディ兵士C: 右じゃなかったか?
ゼントラーディ兵士D: どっちでもいいじゃないか、はやく動かさないと親分に!
カムジン: 前進だ、バカ野郎!
ゼントラーディ兵士B: ほらみろ、前進じゃないか。
ゼントラーディ兵士D: 口でいったほうがわかりやすいのになあ。
ゼントラーディ兵士C: 前に見た西部劇の真似でもしたいんだろう。
[ カムジン部隊、出撃 ]
隊員A: イオネスコ・シティの分団がたったいま移動を開始しました。
未沙: 了解。第103デストロイド隊、準備は?
隊員B: オール・グリーン!

[ 変装したゼントラーディ人3名とバトロイド3機がとっ組みあっている。カムジン部隊が接近する ]
カムジン: 助けにきたぞ〜!
[ ゼントラーディ人とバトロイドはそろって逃げだす ]
カムジン: ん? な、なんだ!?
[ デストロイド・モンスター隊があらわれて、カムジン隊を包囲する ]
カムジン: くっそう〜、罠か! やってくれるじゃねえか。まとめてたたきつぶせ!
[ 交戦 ]

[ バルキリー・スカル中隊とチャチャ・キャット ]
オペレータD: カムジン軍団と第103デストロイド・モンスター隊、交戦に入りました。
未沙: ネズミは穴に落ちたわ。
輝: 了解。
未沙: 目標のホールのまわりには、リガートが3機だけです。
輝: 了解。低空より侵入中。
[ 一条機以下バルキリー3機が低空飛行する ]
輝: ミンメイ、きみをぜったい無傷で助けてやる。

[ イオネスコ・シティのコンサート会場。爆発音がひびく ]
ゼントラーディ兵士: [ 口ぐちに ]うおっ、どうした!
[ 守備していたリガート3機はたちまち撃破される。ホールの壁がやぶられる ]
ゼントラーディ兵士: [ 口ぐちに ]うわあ!
[ 一条機が飛びこみ、3名のゼントラーディ兵士を格闘戦で倒す ]
ゼントラーディ兵士E: どわあ!
ゼントラーディ兵士F: ああ!
ゼントラーディ兵士G: おお、どわあ!
輝: だいじょうぶ、ミンメイ?
ミンメイ: その声、輝ね!
[ コクピットから輝、うなずく ]
ミンメイ: [ 涙ぐんで ]ありがとう、輝。
[ 一条機、檻を破壊し、ミンメイとカイフンをバトロイドの手のひらにのせる ]

[ イオネスコ・シティ郊外 ]
カイフン: なぜこんな危険な方法で救出に来たんだ。
未沙: あ。
カイフン: ほかのやりかたもあるだろうに!
未沙: あたしたちは最善と思われる行動をとりました。人質の命は最優先させたつもりです。
カイフン: 最優先が聞いてあきれる。だいたいきみたち軍人は…!
[ ミンメイ、カイフンの前に立ちはだかる ]
未沙: ああっ。
ミンメイ: やめなさいよ。輝たちは、一生懸命あたしたちを助けてくれたのよ、カイフン。
[ ミンメイ、バルキリーから降りてきた輝に気づく ]
ミンメイ: 輝。
輝: ミンメイ。半年ぶりだね。
[ ミンメイ、輝に向かって駆けだす ]
ミンメイ: [ 独白 ]輝、あなたはいつだって、あたしの心のなかに。
輝: ミンメイ、いつもきみはまぶしくて…。ミンメイ。
[ 輝、ミンメイ、駆けよって抱きあう ]

[ カムジン隊とデストロイド隊の交戦 ]
カムジン: くそう、弾切れか。
ゼントラーディ兵士H: こっちの弾も切れましたぜ!
[ カムジン、近づいてきたバトロイド2機をガンポッドで跳ねとばす ]
オイグル: ちきしょう、弾切れだ。ええい、これでも食らえ!
[ オイグルのリガート、モンスターに体あたりする。ラプ・ラミズのグラージ、被弾 ]
カムジン: おお。
[ カムジン、モンスターを降りてラプ・ラミズ機に近づく ]
カムジン: [ バトロイド1機をたたきのめして ]えいっ! ラプ・ラミズ、だいじょうぶか!?
ラプ・ラミズ: ああ、だいじょうぶさ。
カムジン: 無理するな。もうここまでだな。弾もつきちまったし。野郎ども、退却だ! 退却〜!
[ カムジン隊、退却する ]

[ オペレータが未沙に耳うちする ]
オペレータE(女): …というわけなんですが。
[ 未沙、うなずく ]
未沙: 一条大尉も、参加させるわ。
オペレータE(女): し、しかし…。
未沙: いいのよ。いちゃついてる暇があるんだから。
[ 未沙、抱きあっている輝とミンメイに近づき、輝の肩をたたく ]
未沙: 悪いけど、一条大尉。逃げだしたカムジンたちの追撃にくわわってほしいの。
輝: 人質は助けたんだから、もういいじゃないか。
未沙: そうはいかないわ!
[ 輝、ヘルメットを地面に投げだす ]
輝: じゃあ、ほかのやつに頼んでくれよ!
[ 未沙、足もとに転がってきた輝のヘルメットを拾いあげる ]
未沙: あなた、中隊長じゃなかったの?
輝: [ 乱暴にヘルメットをうけとって ]ああ、わかったよっ! 行きゃいいんだろ、行きゃあ!
未沙: いそいでね。
輝: わかってる! [ ミンメイに ]ごめんよ、せっかくひさしぶりで、会えたのに。
[ 輝、未沙を横目でにらみつける ]
ミンメイ: いいのよ、がんばってね。
[ 輝、バルキリーに乗りこむ ]
ミンメイ: 気をつけてね!
[ ミンメイ、笑って輝に敬礼のポーズをする ]
輝: [ 敬礼を返して ]ああ。
[ ミンメイ、輝に告白されたときのこと(第27話「愛は流れる」)を思いだす ]
ミンメイ: [ 独白 ]いまならあたし、きっと。
[ 一条機、発進スタンバイ ]
ミンメイ: そう、ちゃんとこたえられる。輝の気持ちに。
[ 輝、発進する。ミンメイ、バルキリーのあとを走って追うが、途中でつまずき倒れる。朝日がのぼってくる。未沙、ミンメイと朝日を見つめながらほほえむ ]

[ 次回予告 ]

ナレーター: 素直になれない自分に思いなやむ未沙。クローディアはそんな未沙を気づかい、みずからの体験を語って聞かせる。そこには若き日のフォッカーとクローディアの姿があった。
次回、「超時空要塞マクロス」、「レイニー・ナイト」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(32)
リン・ミンメイ(31)
早瀬未沙(32)

ブルーノ・J.グローバル(28)
クローディア・ラサール(29)

カムジン・クラヴシェラ(15)
オイグル(12)
ラプ・ラミズ(10)

モトコフ - 新地球統合軍准将
軍幹部A - 新地球統合軍
軍幹部B - 新地球統合軍
オペレータA - 偵察機チャチャ・キャット
オペレータB - 偵察機チャチャ・キャット
オペレータC(女) - 偵察機チャチャ・キャット
オペレータD - 偵察機チャチャ・キャット
オペレータE(女) - 偵察機チャチャ・キャット
パイロットA - バルキリー・スカル中隊
パイロットB - バルキリー・スカル中隊
パイロットC - バルキリー隊
パイロットD - バルキリー
隊員A - 陽動作戦偵察隊
隊員B - 第103デストロイド隊
ゼントラーディ人A
ゼントラーディ人B - 陽動作戦
ゼントラーディ兵士A - カムジン部隊
ゼントラーディ兵士B - カムジン部隊
ゼントラーディ兵士C - カムジン部隊
ゼントラーディ兵士D - カムジン部隊
ゼントラーディ兵士E - カムジン部隊
ゼントラーディ兵士F - カムジン部隊
ゼントラーディ兵士G - カムジン部隊
ゼントラーディ兵士H - カムジン部隊

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スタッフ

脚本 … 大野木寛
絵コンテ … 山田勝久
演出 … 吉田浩
原画 … スタープロ
動画 … スタープロ

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ノート

未沙はミンメイばかりを気づかう輝への嫉妬心から、わざと輝に冷たくあたる。そうした表面的には強い言動の裏に未沙の秘められた思いがあってということなのだが、本話の作画では内面まで表現できずに、未沙はたんに意地悪で、男からみればかなり面倒くさい女のようになってしまっている。次話「レイニー・ナイト」とあわせて未沙像を補完するとよい。

カムジンの人質作戦は、文化や「人間らしさ」があたえる影響の負の部分を示している。ゼントラーディ人を文化に眼ざめさせることによって第一次星間大戦は終結したが、戦後編ではそのテーマを相対化させる視点があたえられている。

本話の最後のシーンで、のぼってくる朝日を見ながら未沙が謎のほほえみをうかべる。真意不明。

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