第24話「グッバイ・ガール」

セリフとト書き

[ オープニング ]

ナレーター: ゼントラーディ軍からの亡命者によって共存の可能性が見えてきた。そこにほのかな希望を見いだした未沙は統合軍を説得するため、地球へ降りる決意をかためた。

[ 未沙とクローディア、エレベータに乗っている ]
クローディア: ほら、しゃきっとして、未沙。
未沙: あっ。
クローディア: そんな顔してたんじゃ、説得できるものも説得できなくなるわ。
未沙: あ…。
[ 未沙、笑顔になる ]
クローディア: そう、それでいいの。
[ 未沙とクローディア、エレベータを降りて廊下を歩く ]
クローディア: 地球へ行くこと、一条中尉に知らせたの?
未沙: いずれ、わかることだから…。

[ マクロス・ブリッジ ]
ポッキー: シャトル発進準備、完了しました。15分後に発進予定です。
グローバル: ゼントラーディ側の様子はどうだね?
ヴァネッサ: A−4ポイントから、動く気配を見せていません。
グローバル: 変化なしか。このまま攻撃してこなければいいが…。
[ グローバル艦長、パイプをくわえる ]
ポッキー: 艦長、落ちつかないわね。
キム: あっちはもっとすごいわよ。
[ キム、後方に目くばせする ]
ポッキー: えっ?
キム: ほらほら。
シャミー: バルキリー・バイオレッド中隊、いまから順次着艦してください。
グローバル: 調子はどうかね、シャミーくん。
シャミー: 艦長、ん、申しわけありませんが、指示を出してるあいだは話しかけないでください!
グローバル: ん、あ、いや、これはすまん。
ポッキー: ほんと、「艦内は禁煙です」もわすれちゃってる。

[ バルキリー格納庫 ]
シャミー: [ 艦内放送 ]護衛中隊、3分以内に発進準備完了してください。
マックス: へえ、早瀬大尉の代理はシャミーか。
パイロットA: だいじょうぶですかね、あの子。ドジだって噂だから。
マックス: あっ。
[ マックス、ファースト・パック付バルキリーに気づく ]
マックス: ファースト・パック付かあ。

[ シャトル搭乗口 ]
未沙: そろそろ、行くわ。
クローディア: [ 未沙の肩に手をおいて ]しっかりね。
未沙: ええ。
[ クローディア、昇降用タラップに乗ったまま離れてゆく。未沙に敬礼。敬礼を返す未沙。シャトルのドアが閉まる ]

[ 未沙、シャトルの座席にすわる ]
未沙: これは通信機?
パイロットB: はい。
未沙: 艦内の電話回線につなげられるかしら?
パイロットB: 音声だけでよろしければ、OKです。

[ 輝、受話器をとる ]
輝: 一条ですが。
交換手A: 回線つなぎます。
輝: もしもし。
未沙: 早瀬です。
輝: ん、大尉。あのう俺、今日、非番なんですが。
未沙: 任務とは関係ありません。
輝: [ ふだんとは様子がちがうことを感じて ]んん、どうしたんです?
未沙: あなたには、お別れのあいさつだけはしておきたくて。
輝: 別れの!?
未沙: あたし、これから地球へ向かいます。いままでのデータを持って、ゼントラーディ軍との戦いをやめるよう、統合軍総司令部に説得に行きます。
輝: ちょ、ちょっと、俺、そんなこと聞いてませんよ!
未沙: あたしだけ地球にもどれたとなれば、艦内の民間人たちに動揺をひきおこすかもしれません。軍人は特権を使って地球にもどれる。そう誤解します。ですから極秘に。
輝: 大尉、いまどこにいるんですか?
未沙: 地球に行ったら、二度とマクロスにはもどれないかもしれません。ですからあなたにあいさつだけはしておきたいと思って…。
輝: 大尉、どこから電話かけてんですか!
未沙: 一条中尉、マクロスに亡命してきたゼントラーディの人たちを頼みます。まだかれらを理解していない人たちが大勢いるんです。かれらの力になってあげてください。それでは。
輝: 大尉? もしもし、早瀬大尉!
[ シャトル、発進する。輝、宇宙が見える窓まで走ってゆく ]
マックス: 連絡シャトル護衛中隊、発進します。
[ シャトル護衛中隊、発進する ]
輝: あれか…。

[ マクロス・ブリッジ ]
ヴァネッサ: 艦長、敵軍の一部がきゅうに移動を開始しました。シャトルをキャッチした模様です。
クローディア: えっ!?
グローバル: シャトルの進路を変更。敵を回避するんだ。
シャミー: 了解。

[ シャトル内に警報が鳴り、座席が防護壁におおわれる ]
パイロットC: 敵襲です、進路変更します!
マックス: 敵機、1時方向より接近中。4番機、5番機、6番機は散開して敵をくいとめろ。
パイロットD: 了解!
パイロットE: 了解!
パイロットF: 了解!

[ カムジン部隊 ]
ゼントラーディ兵士A: 隊長、敵編隊、進路変更しました。
カムジン: やったね。野郎ども、出撃だ!
[ カムジン部隊、発進する ]

[ マクロス・ブリッジ ]
ヴァネッサ: 2時上方より敵ポッド群出現。シャトルに急速接近中。
シャミー: 5番機、6番機、ラムダ−034ポイントへ向かってシャトル本隊に合流してください。
グローバル: 最初のはおとりか…!

[ バルキリー隊とカムジン部隊との交戦。シャトルの主翼がビームをあびる ]

[ マクロス・ブリッジ ]
キム: 護衛中隊が増援をもとめています。
ヴァネッサ: シャトルがつかまってます! 敵ポッド、およそ60機。
グローバル: 増援部隊をおくるのに何分かかるんだ!
シャミー: 全速力で20分です。
グローバル: んんん…。シャミーくん、ブービー・ダックを出動させろ!
シャミー: ブービー?
グローバル: 整備班にはそれでわかる。はやくするんだ! パイロットには一条中尉を。
シャミー: はい!

[ 輝、軍用ジープでプロメテウスに向かう ]
輝: もっと飛ばせ! 間にあわなくなるぞ!
運転手A: わかってます!

[ ファースト・パック付VF−1Jバルキリーがプロメテウス甲板にあがってくる ]
シャミー: 一条機、目的地はラムダ−032ポイントです。
輝: そんなポイント聞いてないぞ、それいったいどこだ!!
クローディア: 一条中尉に、あたらしい暗号表、知らせてないの?
シャミー: あのう、まさか非番の一条中尉まで出撃するなんて思わなかったんです…。すいません…。
シャミー: 一条中尉、前の暗号表で伝えます。A3−102ポイントへ至急直行してください。
輝: 了解!
[ 一条機、高速発進 ]

[ マックス機、リガートをつぎつぎに撃墜する ]
マックス: やっと、30機か。
[ 輝、ポイントを捕捉 ]
輝: あれか。行け〜!!
[ 一条機、ミサイルを発射する。つづいてガウォークに変形し、ミサイルを撃ちこむ。あっという間にリガート部隊を撃破 ]

[ マクロス・ブリッジ ]
キム: 護衛中隊より入電。敵ポッドを排除。これより帰艦する。シャトルの護衛は一条中尉にひき継ぐとのことです。
[ クローディア、胸をなでおろす。シャミー、安心して伸びをする ]
シャミー: あ〜あ、疲れちゃった。早瀬大尉の代理なんてもうこりごり。
クローディア: あら、シャミーったら暗号表でミスったくせに、もう元気になってる。
グローバル: まあ、こんどのことでシャミーくんもいい勉強になったろうから、そこいらで勘弁してやったらどうかな。
クローディア: ということだそうです。
シャミー: は〜い。
ブリッジ: あははは…。

[ シャトルの非常態勢が解除され、座席の防護壁が開く ]
パイロットG: 一条中尉より通信入ってます。
輝: だいぶひどくやられてたみたいだけど、だいじょうぶですか?
未沙: ありがとう、一条くん。たすかったわ。
輝: もどってこれないかもしれないって、いってたけど…。
未沙: ゼントラーディ軍のことを知ってる生き証人ですもの。[ 髪をかきあげる ]本部がすぐに返してくれるとはかぎらないわ。
輝: 親父さんが統合軍の提督でも?
未沙: 父の力を頼ってまで、特別あつかいしてほしくないの。
輝: 大気圏だ。
未沙: 護衛を感謝します。
輝: お礼いうの、こっちのほうだよ。あんたのおかげで、いままでずいぶんたすけられたしね。いままでずいぶん文句いったけどさ、あんたの管制指示、たいしたもんだよ。
未沙: あっ…。
[ 未沙、涙ぐむ ]
パイロットG: そろそろ大気圏に突入します。
輝: じゃ。
[ 輝、通信を切り、主翼についたライトを明滅させてシグナルを送る ]
未沙: シグナルだわ。「貴君の、目的の、達成と、マクロスへの、無事帰艦を、祈る、一条、輝」
[ 輝、敬礼して飛びさってゆく ]

[ ミリア、真剣な顔でゲーム機のコクピットにすわり、操縦桿をにぎる ]

[ 早瀬提督、机に飾られた、幼少の未沙とともに写した家族写真を見ている ]
軍人A: 提督、お出迎えの用意はよろしいでしょうか。
早瀬提督: うむ。
軍人A: 4号エレベータでお待ちしております。
早瀬提督: ご苦労。
[ シャトル、大気圏に突入 ]

[ アイキャッチ ]

[ 滑走路でシャトルの到着を待つ早瀬提督 ]
軍人A: 提督、シャトルの到着時刻が、20分ほど遅れるとのことです。管制室にいったんひき返して待たれては?
早瀬提督: かまわん。ここで待つ。

[ 輝、マクロス艦内の食堂でスプーンをもてあそびながら、もの思いにしずんでいる。となりのテーブルにいるマックスが輝の様子を見ている ]
マックス: 暗いなあ。あれじゃ、まるでお通夜だ。
[ マックス、輝に近づく ]
マックス: 一条中尉、落ちこむのまだはやいですよ。早瀬大尉、きっともどってきますよ。
輝: 大尉のことなんか考えてもいないし、落ちこんでもないよ。
マックス: とにかくこんなときは、気ばらしに行くのがいちばんですよ。さ、行きましょ!
[ マックス、強引に輝を連れだす ]
輝: ん、ちょっ…!

[ マクロス市街地のゲーム・センター ]
輝: ここで気ばらし?
マックス: 中尉だったら相手にとって不足はなし。さあ!
輝: やめとく。俺、今日おまえに勝てる自信ないわ。
マックス: ん、じゃあ、ひとりでもできるやつ、やりましょうよ。ね!
[ ミリアがいる。ミリアのゲーム台をのぞきこんでいるよっちゃん。そばをとおりすぎる際、マックスがわずかにミリアを振りかえる ]

[ 未沙のシャトル、滑走路に着陸する。機体に銃痕が見える。早瀬提督、小走りでシャトルに近づく。ハッチが開く ]
早瀬提督: 未沙。
未沙: は…。
[ 未沙、昇降用タラップを降りて、早瀬提督に敬礼 ]
未沙: 統合軍大尉、早瀬未沙、ブルーノ・J.グローバル艦長の命により報告書を持参しました。
早瀬提督: [ 敬礼 ]ご苦労。

[ マクロス市街地のゲーム・センター。3D映像の格闘ゲームや、ルパン3世の「カリオストロの城」ゲームなどがある ]
ゲーム機A: おじさま、おじさま、おじさま、おじさま!
[ ミリア、バルキリーでリガートを撃つシューティング・ゲームをやっている。得点があがり、ゲーム機からコインが出てくる ]
よっちゃん: すっげえ。
[ 2階には輝とマックスがいる ]
マックス: よしっ、それっ! ね、隊長、けっこうおもしろいでしょう?
輝: まあな。
[ マックスのゲーム台からコインが出てくる ]
マックス: [ 独白 ]いいぞ。
[ マックスとミリアのゲーム台からぞくぞくとコインが出てくる ]
店員A: 店長、16番と7番の台がもうすぐうち止めです、もう…。
店長A: マクロスでゲーム・センターなんてはじめるんじゃなかった。

[ 地球統合軍総司令部。未沙、早瀬提督に資料を見せている ]
早瀬提督: う〜む。ゼントラーディの者たちがわれわれとほとんどおなじ遺伝子構造をもつか…。この報告書が事実なら、われわれは考えをかえねばならんかもしれん。
未沙: では、和平交渉を結ぶ方向に軍を説得していただけますか?
早瀬提督: やってみよう。
未沙: ああ。[ 笑み ]

[ ミリアのゲーム台に人だかりができている。マックス、コインが山積みになった箱を持っている ]
マックス: 中尉もちょっと練習すりゃあ、もっととれるようになりますよ。
[ ミリアの腕前に感嘆の声があがっている。マックス、階段の途中で足をとめる ]
輝: ん?
[ マックス、ミリアを見つめる ]
マックス: 僕の好みのタイプだ。
[ マックス、ミリアのゲーム台に近づく ]
マックス: ひとつ、お手あわせ願えないかな。きみの台もうち止めみたいだし。
ミリア: [ マックスのコインを見て ]それを賭けるなら。
マックス: 決まりだ。
[ 人だかりから歓声があがる ]
マックス: レベルBでスタートしていい?
ミリア: けっこう。
[ ゲーム開始。キャラクターのミンメイが合図のドラを鳴らす ]
人びと: [ 口ぐちに ]うわあ…。
ミリア: [ 独白 ]やるな!
[ マックス、ウインクする。ミリア、顔がけわしくなる。ゲーム機、3D画像にきりかわる ]
よっちゃん: すげえ、レベルAだ。
男A: なんかおもしれえ勝負やってんぞ、おい!
[ ゲーム再開 ]
店員A: 店長、7番の台のゲーム、拡大投影しますよ。
店長A: 勝手にせい。
ミリア: [ 独白 ]もらった!
[ マックス、紙一重でビームをよける ]
ミリア: [ 独白 ]はっ、これは…。
[ ミリア、実戦でマックス機と戦ったときのことを思いだす ]
ミリア: [ 独白 ]この、このっ、このっ!
[ ミリア、カムジンの言葉を思いだす ]
カムジン: [ ミリアの回想 ]だったら教えといてやる。マクロスのなかにもすご腕がひとりいるってことをな!
ミリア: [ 独白 ]まさかこの男が…!?
マックス: [ 独白 ]うつくしい。バストは85ぐらい、意外と着やせするタイプだな。
[ ミリア、足を撃ちぬかれる ]
ミリア: うう…。
[ ミリア、撃墜される。ゲーム・オーバー ]
ミリア: [ 独白 ]負けた…。このゲームで生活していた、このわたしが…!
男B: いやあ、さすが天才パイロット。みごとな勝利ですなあ。
マックス: とんでもない。一時は僕のほうが冷や汗もんでしたよ。
[ ゲーム機、バルキリーから降りてきたパイロットにミンメイが飛びついてキスをする。ミリア、席を立つ。マックス、手をとってひき止める ]
マックス: あ、きみ。よろしかったら名前と電話番号を。
ミリア: 名前はミリア。電話はないっ!
[ ミリア、行こうとするがマックスは手を離さない ]
マックス: 明日、夜9時、しあわせの森公園で会ってくれる?
ミリア: 承知!
[ ミリア、マックスの手を振りはらって店を出てゆく ]
軍人B: さすがですね、中尉。あんな美人とデートの約束をとりつけるなんて。
[ 輝、呆気にとられている ]

[ 地球統合軍総司令部。一室から早瀬提督が出てくるのを待つ未沙。ドアが開く ]
未沙: はっ…。
[ 早瀬提督が近づいてくる ]
未沙: 提督、いかがでしたか?
早瀬提督: 和平交渉を試みようとする方向に傾きはじめたよ。
未沙: ああ…。よかった。[ 笑み ]
[ 早瀬提督、笑みをかえす ]

[ 未沙と早瀬提督、エレベータに乗っている ]
未沙: お父さま、どうしたんですの? さっきからあたしの顔見てばかり。
早瀬提督: いや、死んだ母さんにそっくりになったと思ってな。
未沙: ああ…。
早瀬提督: どうだ、好きな男ができたか?
未沙: えっ!? ああ…。
[ 未沙、首を横に振る ]
早瀬提督: そうか…。
未沙: ところで、いったいなんですの? あたしに見せたいものって。

[ 未沙と早瀬提督、グランド・キャノンの砲身内に到着する ]
早瀬提督: 見なさい、未沙。このグランド・キャノンを使えば、和平交渉もスムーズに進行するだろう。
未沙: はっ!
早瀬提督: こいつを発射すれば、数万の艦隊といえども一瞬に消滅できる。この威力を見れば、ゼントラーディ側はいやでも和平交渉に応じる。
未沙: お父さま、こんなものを使っても無駄です。ゼントラーディ軍の母艦の大きさにくらべたら、グランド・キャノンなんて子どもだましのおもちゃ以下にすぎません。こんな兵器、戦いを拡大するだけでなんの役にも立ちません。武器を使わなくとも、ゼントラーディの人たちは和平交渉にきっと応じるはずです。
早瀬提督: 軍人の血をうけ継いだおまえが、いまさら理想だけで平和を語ろうというのか? おまえの乗ったシャトルを襲った連中は、和平の呼びかけに応じたかね?
未沙: あっ…。
早瀬提督: 血液型や遺伝子構造がおなじであろうと、しょせんは異星人同士。たやすくわかりあえるわけはない。
未沙: お父さま。
早瀬提督: 未沙、おなじ地球人がたったひとつの統合政府をつくるのに、何千年間戦争をつづけたと思うんだ。グランド・キャノンの発射予定日はすでに決定しておる。和平交渉はそのあとだ。

[ マクロス市街地の中央病院 ]
記者A: それで、1週間以上もつきっきりだっていうのはほんとうですか? ねえ、ミンメイさん。
ミンメイ: え、ええ。
記者B: ふたりが結婚するのではないかという噂がながれてますが?
ミンメイ: そ、そんなこと、考えてみたことも…。
記者C(女): ミンメイさん、前の彼氏とのおつきあいはどうなったの?
[ 輝、部屋でインタビューの模様をテレビで見ている ]
ミンメイ: 前の彼氏?
記者C(女): おとぼけがお上手。統合軍の中尉さんといったらおわかり?
ミンメイ: 輝のこと!? あの人はたんなるお友だちよ。
輝: お友だち…!?
記者B: でも、以前はごく親しい間柄だったわけでしょう? まったく結婚を意識していなかったなんてへんですねえ。

[ 「青い風」3人組以下、ゼントラーディ軍の亡命者たちがテレビを見ている ]
亡命兵士A: ロリー先輩、「結婚」ってなんのことですか?
ロリー: そ、そのう、「結婚」ってのはだなあ。とにかくものすごいことなんだ。え〜、キスなんかよりもっとすごいことやるんだぞ。
亡命兵士: [ 口ぐちに騒ぐ ]ええっ!? キスよりすごい!?

記者B: カイフンさん、ほんとうに結婚の約束はないんですね?
カイフン: はい。
記者B: あやしいなあ、隠さないで教えてよ。
カイフン: 結婚はありません。ただ…。
記者B: ただ?
カイフン: 僕個人としては、それを前提としているといってもさしつかえはありません。
[ おどろくミンメイ ]
記者: [ 口ぐちに ]ええっ!? おい!
ミンメイ: やだあ、冗談ばっか。
記者: [ 口ぐちに ]そうじゃないかと思ってたら。こいつは特ダネだあ!
[ カイフン、真剣なまなざしでミンメイを見つめる。ミンメイ、カイフンが本気であることを知ってたじろぐ ]
記者: [ 口ぐちに ]ミンメイさん、こっち見て! こっち、こっち!
[ ミンメイとカイフン、カメラのフラッシュを浴びる ]

[ 輝、テレビのスイッチを切る ]
輝: [ ため息 ]ああ〜っ!
[ 輝、ベッドにあおむけになる。初陣前夜にミンメイと撮った、噴水前の写真を見る。ノックの音 ]
輝: どうぞ。
[ マックスがジャケットにチョッキとネクタイという姿で入ってくる ]
マックス: 中尉、率直にいってください。このネクタイ、似あってますか? 明日のデートに着てこうと思ってるんですけども。

[ 輝、ベンチにすわっている ]
ミンメイ: [ 輝の回想 ]輝のこと!? あの人はたんなるお友だちよ。
[ クローディアが近づいてくる ]
クローディア: こんなところでなに考えこんでるの?
輝: クローディアさん。
[ クローディア、輝の横にすわる ]
クローディア: ミンメイのテレビ、見た?
輝: ええ、まあ。
クローディア: でもあなたはいいわ。
輝: え?
クローディア: あの子よりもお似あいの人がいるもの。
輝: そんな人、いやしませんよ。
クローディア: そう? 自分で気がついてないだけじゃない? 身近にいすぎるから、わからないってことがよくあるのよ。だから心を許して、わがままないいあいでケンカになる。でも、心の底ではちがうの。あたしとロイのときもそうだった。
[ クローディア、立ちあがる ]
クローディア: そんな人、滅多に見つかるもんじゃないわ。いいたかったのはそれだけ。こんなとこにいつまでもいると、風邪ひくわよ。
[ クローディア、立ちさる。輝、窓の外の地球を見つめる ]

[ 次回予告 ]

ナレーター: マックスとミリアが3度めの対決のときをむかえた。約束の場に来たマックスの前に、剣をぬいたミリアが立つ。ミリアの眼には、自分を2度までも破った憎いかたきの姿しか映っていなかった。
次回、「超時空要塞マクロス」、「バージン・ロード」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(24)
リン・ミンメイ(24)
早瀬未沙(24)

ブルーノ・J.グローバル(21)
クローディア・ラサール(22)
マクシミリアン・ジーナス(マックス)(16)
ヴァネッサ・レイアード(23)
キム・キャビロフ(20)
シャミー・ミリオム(22)

早瀬提督(2)
ポッキー(4)

リン・カイフン(10)
よっちゃん(9)

カムジン・クラヴシェラ(10)
ミリア・ファリーナ(7)
ワレラ・ナンテス(16) - セリフなし
ロリー・ドセル(16)
コンダ・ブロムコ(16) - セリフなし

店長A - ゲーム・センター
店員A - ゲーム・センター
男A - ゲーム・センター
男B - ゲーム・センター
ゲーム機A - ルパン3世「カリオストロの城」
記者A
記者B
記者C(女)
交換手A - マクロス
運転手A - 軍用ジープ
パイロットA - 連絡シャトル護衛中隊
パイロットB - 連絡シャトル
パイロットC - 連絡シャトル
パイロットD - 連絡シャトル護衛中隊
パイロットE - 連絡シャトル護衛中隊
パイロットF - 連絡シャトル護衛中隊
パイロットG - 連絡シャトル
軍人A - 地球統合軍総司令部
軍人B - ゲーム・センター
亡命兵士A
ゼントラーディ兵士A - カムジン部隊

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スタッフ

脚本 … 富田祐弘
絵コンテ … 高山文彦
演出 … 高山文彦
メカ作監 … 板野一郎
キャラ作監 … 美樹本晴彦
原画 … しまだひであき 山崎茂 門上洋子 神原敏昭 庵野秀明
動画 … 森川定美 友田政晴 北村大平 内田義弘 池田和洋

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ノート

輝と未沙の別れぎわは、テレビ放送された全36話のなかでもっとも感動的な場面だ。

3組の男女関係がさらに進展する。まずマックスとミリアが出会う。カイフンはミンメイと結婚したいとマスコミをつうじて公言。輝と未沙は離ればなれになり、輝はひとりでいるあいだに未沙の存在の大きさを意識するようになる。

未沙が地球に降りたタイミングがはやすぎるように思われる。
地球人とゼントラーディ人との和平の道すじをつけるため、戦友と別れて単身でマクロスを降りたことは未沙の責任感の強さと気丈さを示しており、感動的ですらあるが、地球追放からボドル基幹艦隊との決戦をえがいた第2部のラストであり、事実上の最終話でもある第27話「愛は流れる」まで物語はヒロイン不在となる。しかも未沙の決死の行為は、結果的に地球統合軍を説得しきれずに失敗しており、最終決戦に向けてヒロインの役割が宙に浮いてしまっている。

シャトルの危機にはじまり、救援に向かう一条機の発進までの物語のスピード感は、シリーズのなかでも群をぬいている。本話では輝はもっともヒーローらしいふるまいをしている。

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