第20話「パラダイス・ロスト」

セリフとト書き

[ オープニング ]

ナレーター: グローバル艦長は、艦内5万6千人の民間人を降ろすべくマクロスの威嚇飛行を指示した。しかしゼントラーディとの戦闘の際、制御不能となったバリアの暴走が敵艦隊のみならず地上の都市をも消滅させてしまい、マクロスはさらに苦しい立場に追いこまれた。
一方、ゼントラーディ基幹艦隊でも、あらたな動きが起こりつつあった。

[ ボドル旗艦の一室 ]
ボドル・ザー: う〜む、信じられん。もういちどいまの映像を。
[ ボドル・ザー、マクロスのバリア暴走の記録映像を見る ]
ボドル・ザー: 報告によると地球方面に派遣した者たちのあいだに、混乱が生じているらしい。
[ ブリタイ、不敵な笑みをもらす ]
ボドル・ザー: それにまた新兵器があらわれたようだ。
ブリタイ: かれらを相手にするのはむずかしいでしょう。で、わたしへのご命令とは?
ボドル・ザー: もういちど地球へ飛べ。やはりここは経験者を必要とする。おまえの到着まで行動はひかえさせておく。
ブリタイ: 閣下。
ボドル・ザー: なにか?
ブリタイ: わたしにアドクラスの艦隊をあずけていただけますか。
ボドル・ザー: 必要と思うのか?
ブリタイ: 近い将来、どのような事態を想定した場合でも。
ボドル・ザー: ふむ。…よかろう、許可する。
ブリタイ: はっ!
[ ブリタイ、退室しようとする ]
ボドル・ザー: ブリタイ・アドクラス艦隊司令。
ブリタイ: まだなにか?
ボドル・ザー: 口のききかたがぞんざいになったな。
ブリタイ: 閣下の思いすごしでしょう。
[ ブリタイ、退室する ]

[ ブリタイ、ボドル旗艦内の廊下を歩いてゆく。ひかえていたエキセドルが合流する ]
エキセドル: いかがでした?
ブリタイ: アドクラスの艦隊をひき連れ、あの星系へ飛ぶ。
エキセドル: ほう、すると1200隻の艦隊で。
ブリタイ: うむ、ボドル・ザー閣下のやりようはよく心得ているつもりだ。
[ ブリタイ、エキセドル、連絡艇に乗ってノプティ・バガニスにもどる ]

[ 連絡艇内 ]
ブリタイ: 1200隻でもすくないかもしれん。
エキセドル: なるほど。

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ブリタイ: 全艦、作戦宙域にフォールド準備!
ゼントラーディ兵士A: 全艦フォールド態勢。座標パターン、旗艦に同調。フォールド・ポジションへ移動せよ。フォールド・カウント・ダウン開始!
[ ブリタイ艦隊発進 ]

[ 洋上のマクロスに、地球統合軍の補給物資がつぎつぎに運びこまれてゆく ]
乗組員A: オーライ!
乗組員B: オーライ! オーライ!

[ マクロス市街地 ]
男A: やけにトラックがとおるなあ。
[ ハンバーガー店 ]
少年A: う〜ん、またどっか行くのかなあ。
少女A: ん〜、あたしたちは死んだことになってるんだって。
少年A: へえ、じゃあどこの国でもない、幽霊市民ってこと?
少女A: うん、それでもいいんじゃない? あたしたちこの船に慣れちゃったんだもん。
少年A: マクロス人だもんな。

[ 輝、部屋でラジオを聴きながらパソコンを操作している。ラジオからはミンメイの「0-G Love」がながれている。輝、印字した手紙を読む ]
輝: 柿崎健一さま、よしみさま。ご子息、柿崎速雄少尉は、オンタリオ自治区上空における戦闘に…[ 泣いてさきが読めない。手紙をクシャクシャに丸める ]う、うう…。
[ 輝、鉛筆を取りだし、数回手でクルクルとまわしてからラジオを消す。机の上に置いてあった柿崎の幼少時代の家族写真と手紙を手にとる。ノックの音。輝、ドアに向かうが涙がとまらない ]
輝: うっ、ううう…。
[ 輝が部屋を振りかえると、柿崎の面影が手を笑いながら手を振っている ]
マックス: [ ノックしながら ]隊長。
輝: [ 部屋から出てきて ]ちょっと、出よう。
マックス: なにしてたんです、隊長?
輝: 隊長はもうよせ。柿崎のご両親への戦死通知だ。
[ 輝とマックス、エレベータに乗る ]
マックス: ついこのあいだ特進で少尉になった僕が、なぜひと月もしないうちに中尉で小隊長なんです?
輝: それをいったら、俺だって中隊長じゃないか。なにしろ統合軍からまわされてきた、補充のパイロットときたら、ほとんど俺たちよりヒヨッコばかりさ。
マックス: 隊長の経験なんてありませんよ。
輝: マックスなら、やれるさ。
[ 輝とマックス、艦外に出る ]
マックス: もう補給も終わったようですね。
[ ヘリコプターが接近してくる ]
マックス: あれは、統合軍の将校用ヘリですね。
輝: いったいなんだろう?
[ ヘリ、マクロスに着艦する ]
輝: だいぶえらい人らしいな。
マックス: あの話、ほんとうでしょうか?
輝: 地球を追いだされるかもしれないってやつか? 苦労して、ようやくもどってきたのにな。
マックス: これが、見納めですかね。
[ 輝、マックス、夕焼けをながめる ]

[ 「青い風」3人組のアジト。コンダがリガートを修理している ]
ワレラ: お〜い、飯ができたぞ!
ロリー: 今日はなんだ?
ワレラ: ビーフ・シチューだ。
コンダ: そいつはごちそうだ。
[ ロリー、ラジオをつける。「シルバームーン レッドムーン」がながれる ]
ロリー: お、リン・ミンメイの歌だ。
コンダ: いつ聴いてもいいなあ。
ワレラ: よいしょっ、[ 鍋を火からあげる ]あつつ…。[ 耳たぶをつかむ ]今日のコーヒーはブルマンだよ。
ロリー: やったね。
コンダ: 今日のは肉がたっぷりだ。
ワレラ: 俺の料理も捨てたもんじゃない。
ロリー: また食事どきに聴くミンメイちゃんの歌がいい!
青い風: ふっはっははは。
ワレラ: ところで…。
ロリー: あ?
コンダ: あ?
[ 3名、しばらく食べつづける ]
ワレラ: ところで、あのろかく[?]したリガートなんかで帰れるのか?
コンダ: コクピットを分離して飛ぶんだ。もう準備はできてる。
ワレラ: [ 残念そうに ]そうか…。
コンダ: あとは合図を待つだけか。
[ コンダ、コーヒーをそそぐ ]
コンダ: ディスコ、楽しかったなあ。
ワレラ: ディスコ…。ミンメイちゃんもいいけど、キムちゃんもかわいかったなあ。
ロリー: 俺はシャミーちゃんだ。「やあね」なんてさあ。
青い風: ふっははは…。はあ〜[ ため息 ]
コンダ: もうヴァネッサちゃんとも二度と会えないかもしれないなあ。
ロリー: ああ。
ワレラ: んん…。

[ マクロス艦長室から将校が出てくる ]
将校A: 艦長、失礼します。[ 敬礼 ]
グローバル: うむ。
[ グローバル艦長、命令書を前にしてパイプを用意し、火をつけ、椅子から立ちあがる ]
グローバル: [ 命令書を読む。独白 ]地球統合軍総司令部は、貴艦にたいし艦内民間人の保護処置とともに、命令書到着時より24時間内の地球圏外出撃を命じる。命令が実行されぬ場合には、攻撃も…。
[ 未沙が部屋に入ってくる ]
未沙: グローバル艦長。
グローバル: 早瀬大尉。やはり地球外出撃命令が来たよ。
未沙: ああ…。
[ 未沙、室内のミニ・バーで飲みものをつくり、グローバル艦長に差しだす。グローバル艦長と未沙、しばらく沈黙したあと飲む ]
グローバル: 厳しい決定が出る覚悟はしていたが、マクロス5万6千の一般市民をも巻きぞえにしなければならないことが…。
未沙: お察しします。
グローバル: テレビ局に連絡をとってくれたまえ。
未沙: はい。
[ 未沙、退室する。グローバル艦長、連絡用受話器をとる ]
クローディア: こちらブリッジ。
グローバル: グローバルだ。補給はすんだかね?
クローディア: はい、完了しております。
グローバル: [ 心中苦しみながら ]クローディアくん、出航用意!
クローディア: ええっ!
グローバル: 出航用意だ!
クローディア: ん…、イエ、イエッサー。
[ クローディア、ブリッジ・クルーに向かって ]
クローディア: 出航用意!
ヴァネッサ: やっぱり噂はほんとうだったのね。
キム: ああ、大都市ひとつ、まるまる消しちゃったんだもんね。
シャミー: だって、あれはしょうがなかったんでしょう?
ヴァネッサ: 問題は、一般市民よね。
クローディア: もうすでに死んだと思われているのに、これなってはどこも受けいれてはくれないわねえ。各セクション、最終チェックをいそいで。
シャミー: あ〜ん、早瀬大尉のお父さまって総司令部のえらい方なんでしょう?
キム: [ 注意をうながす ]シャミー。
シャミー: なんとか…、ああ!
[ クローディアが恐い顔して背後に立っている ]
クローディア: 未沙にいったら承知しないわよ。チェックいそいで。
シャミー: は〜い。

[ ブリタイ・アドクラス艦隊、フォールド・アウトする ]
ロリー: シグナル・マーク。
コンダ: エンジン始動。
[ 「青い風」3人組の乗るリガート、立ちあがる ]
ワレラ: 発進!
[ リガート、ビームでマクロスの装甲を溶解させる ]
コンダ: 行くぞ!
ワレラ: ん!
ロリー: ん!
[ リガート、マクロスから脱出。コクピットを射出して、宇宙へ飛びたってゆく ]

[ アイキャッチ ]

[ マクロス・レーダー・コントロール室 ]
乗組員C: レーダー・ルームよりブリッジへ。月裏側に多数の重力波検出。フォールド・エコーと思われます。 [ マクロスのブリッジにグローバル艦長が入ってくる ]
ヴァネッサ: あ、艦長。月方向に重力波探知。
グローバル: フォールドか。
ヴァネッサ: そうです。
グローバル: モニタに出してくれ。
[ モニタにデータが表示される ]
グローバル: 数を割りだしてくれ。
ヴァネッサ: イエッサー。
シャミー: やだあ、また新手の敵かしら?
[ キムをのぞくブリッジ全体が、シャミーを見とがめる ]
シャミー: あ、ごめんなさい…。
乗組員C: 本艦上空、急上昇する未確認物体あり。
グローバル: マクロスから発進した機があるのか?
未沙: いいえ…。
乗組員C: 大気圏外より急速に未確認飛行物体降下中。さきの飛行物体と合流します。
グローバル: バルキリー隊、B−5配置。
ヴァネッサ: 再度、重力波検出。前回より多数。この規模からすると、さっきとあわせてすくなくとも1000隻ぐらいが…。
グローバル: う〜ん。
クローディア: こっちは1隻。なん隻来ようが、かわりないじゃない。
シャミー: ええ!? やだあ。
キム: これまでだって、1000隻はいなかったのに。
クローディア: 騒がない。やるっきゃないの!
グローバル: 本部でもとうぜん探知しているはずだが。なにか連絡は?
未沙: いまのところ、なにも。
グローバル: 完全に見はなされたな。
シャミー: どうして…?
グローバル: あわよくばこのマクロスが沈められでもしたら、かえって交渉のきっかけができるとでも思っとるんだろう!
ブリッジ3人娘: はあ。

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ブリタイ: とうとう帰ってきたな。
エキセドル: 帰ってきた?
ブリタイ: ふむ。
ゼントラーディ兵士B: ラプ・ラミズ直衛艦隊司令につながりました。
[ モニタにラプ・ラミズが映る ]
ブリタイ: ご苦労だった。これより任務をひき継ぐ。
ラプ・ラミズ: たかがマイクローンの船に、たいそうな数をひき連れてきたものだな。
ブリタイ: はっはっはっはっは。
ラプ・ラミズ: むっ!
ブリタイ: その小船にだいぶ手を焼いておるようだが? ミリアの件とか。
ラプ・ラミズ: いうな! そちらの手なみ、見せてもらおうか。
ブリタイ: 手なみ? いまはなにもせんよ。
[ エキセドル、ブリタイの背後でコンソール・パネルをいじっている ]
エキセドル: 閣下。
ブリタイ: ん? 失礼、用事ができた。
ラプ・ラミズ: ブリタイ、なにを考えている。
ブリタイ: さあてな。
[ ラプ・ラミズ、モニタから消える ]
エキセドル: 3人はすでに通常体にもどっています。
ブリタイ: うむ。

[ ブリタイとエキセドル、帰艦した「青い風」3人組の報告をうける。マイクローン・スパイが持ちかえった品々を不思議そうにながめるブリタイとエキセドル ]
ブリタイ: [ ピアノを手にとって ]ふ〜む。おお…。
エキセドル: [ ブリタイからピアノをわたされて ]ふむ。
ブリタイ: んん。報告を聞こう。
青い風: は、はっ!

ナレーター: 3人はマクロスでの経験をさきを争って話しはじめた。

[ ブリタイ艦の一室 ]
ロリー: ここにあるものは、かれらの「文化」とかいうものの、ほんの一部なのです。軍人以外の人間がいたりもします。
ブリタイ: ふむ。
エキセドル: ほう。
ロリー: [ テレビを持って ]これはテレビといって、かれらのいう「娯楽」なるものに使用されます。「娯楽」といえば、大勢でひとりを見て楽しむこともあります。
コンダ: かれらはじつにうまく艦内を改造しています。それに、われわれにはわからないものまでつけくわえています。
[ ブリタイ、エキセドルと顔を見あわせる ]
ブリタイ: んん。
エキセドル: ふん…。
ワレラ: かれらには、大勢の人びとのあつまるところがあるんです。ここでは人びとは自由勝手に動きまわっています。おまけにかれらは、「男と女」がつねに接触しているのです。
ブリタイ: おお!
エキセドル: んん!?
コンダ: それが…、ちっとも危険ではありません。
エキセドル: ふ〜ん…。
ロリー: いえ、かえって気持ちがいいのです。
ブリタイ: ふむ。

ナレーター: 3人の報告は泉のように尽きず、ブリタイとエキセドルは、驚きをもって聞くほかはなかった。

[ ブリタイ艦の一室 ]
ブリタイ: いや、もういいもういい。きりがない。[ エキセドルに ]どうだ?
エキセドル: はい、わたしも行ってみたくなりました。たいへん興味をそそられますなあ。
ブリタイ: おまえに行かれては困るが、報告だけは送らねばなあ。報告を至急まとめてくれ。さがってよし。
青い風: はっ!
[ 「青い風」3人組は退室して、別室に入る ]

コンダ: おまえたち、ぜんぶ提出したのか?
ワレラ: きさまこそ。
ロリー: ええ!? じゃ、内緒で持ちこんだのは全員か?
コンダ: 出してみるか。
[ 「青い風」3人組は軍服のポケットから、持ちかえった品々を出す ]
コンダ: テレビだろ。プレイヤーだろ?
ロリー: それに、ミンメイちゃんの立体ディスクと…。
ワレラ: そんなもんまで、よく隠せたな!
ロリー: 人のこといえるか?
ワレラ: 俺なんてミンメイ人形だぞ。
コンダ: どうする?
ワレラ: ほかの連中にも教えてやりたいなあ。
コンダ: ヘタすりゃ消去処分だぞ。
青い風: [ おたがいの意思を確認するようにうなずく ]うん。

[ 「青い風」3人組のまわりに兵士があつまっている。コンダが兵士らにキャンディーを手わたす ]
コンダ: 食ってみろよ。
ゼントラーディ兵士C: ん? ほう。
ゼントラーディ兵士D: ん、ん、ん、うまい!
ゼントラーディ兵士E: はじめてだ、こんなの!
ロリー: いいか、これはなあ、「キャンディー」っていうんだぞ。
ゼントラーディ兵士C: すんごいな、こんなのはじめてだ。
[ ミンメイ人形が動きながら、「私の彼はパイロット」を歌う ]
ゼントラーディ兵士: [ みな怪訝そうに ]あ?
ゼントラーディ兵士D: ほ〜。
[ 兵士のひとりがのぞきこむとミンメイ人形が倒れて、歌がやむ。コンダがミンメイ人形を起こしてやる。ふたたび歌いだす ]
コンダ: これは、「歌」というんだ。
ゼントラーディ兵士F: ほう〜。
ゼントラーディ兵士C: なにか不思議な…。
[ ゼントラーディ兵士ら、全員で歌に聴きいる ]

ナレーター: 3人の持ちかえった土産ものが感嘆の眼をもって迎えられ、下級兵士のあいだに広まるのに、さして時間はかからなかった。

[ MBSマクロス放送局のスタジオ。グローバル艦長が演台前にいる。かたわらに未沙、ミンメイ、カイフンがひかえている。「ON AIR」のランプが点灯 ]
グローバル: マクロス乗員ならびに艦内のすべての人びとに、重大な決定をお知らせいたします。地球帰還以来、市民のみなさまの上陸許可を統合政府および統合軍に再三再四、要請してまいりましたが、良好な返答は得られませんでした。
[ マクロス乗員、艦内テレビで放送を見る。輝はバルキリーのコクピットで放送を見ている。人びとが街頭テレビのまわりに集まってくる ]
人びと: [ 口ぐちに ]なんだ、おい? どうすりゃいいんだ…。
グローバル: この際、端的に申しあげます。統合軍総司令部はこのマクロスに地球外域出撃命令をくだしました。
人びと: [ 口ぐちに ]ええっ! そんなバカな。
グローバル: 24時間以内に命令を実行せぬ場合は、統合軍は攻撃も辞さないと申しております。
町会長: [ テレビ中継を見ている ]ええっ、んなバカな! 地球はわいらを見すてたんかいっ!
グローバル: われわれは、地球と戦えるはずがありません。マクロスは補給を終わり、出発準備はすでに整っています。
人びと: ええ…!
グローバル: いまこそ、みなさんの協力をいただきたい。地球がふたたびわれわれを受けいれてくれるその日を待って、その日の来るまで、いや、その日はきっとやってきます。それまでわれわれは生きぬく努力を惜しまぬつもりです。マクロスの一般市民のみなさんには…。[ 言葉をつまらせる ]
未沙: [ グローバル艦長の苦悩を思って ]ああ…。
グローバル: なんと、お詫びをしていいか…。[ 肩をふるわせる ]
未沙: ああ…。
[ ミンメイ、グローバル艦長のもとへ駆けだす ]
ミンメイ: みなさん、あたしは政治とか軍隊のことはわかりません。だけどここは、ずっとあたしたちが暮らしてきたところです。あたしたちはみんな仲間でしょう? マクロスにはあたしたちの街もあります。
[ テレビ中継を見る人びとのあいだに共感のざわめきが起こる ]
ミンメイ: これまでだって、やってこれたんだもの。きっとこれからだってできます。
よっちゃん母: マクロスの人たちって、家族みたいなものだったものね。
町会長: う〜ん。
男B: う〜ん。
ミンメイ: 艦長さんたちも、一生懸命努力してくれています。
[ 未沙、スタジオを出る ]
ミンメイ: いつか、きっともどれると思うんです。いつだって希望はあります。
輝: [ バルキリーのコクピットで ]ミンメイ…!
ミンメイ: それまで、ですからみなさん、ですからマクロスが、このマクロスが家であり、ふるさとなんだと思うんです!
よっちゃん母: いいこというわ、ミンメイちゃんも。
町会長: こんどはわてらの番や。一致団結して、マクロスが帰れるようにせにゃ!
人びと: [ 口ぐちに ]そうだ、そうだ。だいじょうぶだ。

[ 未沙、マクロスのブリッジに入ってくる ]
未沙: マクロス、出航スタンバイ。定位置について。
クローディア: メイン管制システム、オール・グリーン。
未沙: 発進警報。
クローディア: 重力制御レベル上昇。艦体浮上開始。レベル、マイナス0.2。
[ マクロス、海から浮上する ]
シャミー: 各セクション異常なし。
クローディア: 反動推進機関、始動。推力、マキシマム。
[ マクロス、上昇する ]

[ MBSマクロス放送局のスタジオ ]
ミンメイ: わたしたちはいま、地球を離れていきます。この放送は地球にもオンエアされています。その地球への思いをこめて、歌います。
[ 歌「マイ・ビューティフル・プレイス」。カイフン、壇上でうなだれているグローバルの肩をねぎらうように数回たたく。離れてゆく地球を見つめるブリッジ・クルーたち ]

[ 次回予告 ]

ナレーター: 輝とミンメイにはすれちがいの日々がつづいていた。そんな折、ミンメイとカイフンの主演する映画が完成した。プレミア・ショーの日、スクリーンを見つめる輝の心は揺れる。
次回、「超時空要塞マクロス」、「ミクロ・コスモス」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(20)
リン・ミンメイ(20)
早瀬未沙(20)

ブルーノ・J.グローバル(18)
クローディア・ラサール(18)
マクシミリアン・ジーナス(マックス)(12)
柿崎速雄(13) - 回想シーンのみ セリフなし
ヴァネッサ・レイアード(19)
キム・キャビロフ(17)
シャミー・ミリオム(18)

リン・カイフン(6) - セリフなし

ボドル・ザー(5)
ブリタイ・クリダニク(14)
エキセドル・フォルモ(12)
ラプ・ラミズ(5)
ワレラ・ナンテス(12)
ロリー・ドセル(12)
コンダ・ブロムコ(12)

町会長(10)
よっちゃん母(6)

男A
男B - 町会長の相棒役
少年A
少女B
将校A - 地球統合軍
乗組員A - マクロス
乗組員B - マクロス
乗組員C - マクロス・レーダー・コントロール室
ゼントラーディ兵士A - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士B - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士C - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士D - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士E - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士F - ブリタイ艦

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スタッフ

脚本 … 松崎健一
絵コンテ … 山田勝久
演出 … 吉田浩
原画 … スタープロ
動画 … スタープロ

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ノート

ブリタイが前線に復帰するにあたり大規模なアドクラス艦隊をのぞんだのは、後日、ボドル・ザーからみずからも攻撃される可能性があることをすでに想定していると思われる。連絡艇でエキセドルに「1200隻でもすくないかもしれん」と語り、その理由はあきらかにされないまでもエキセドルが納得していることを考えれば、ブリタイの用意周到ぶりがうかがえる。
またボドル・ザーとブリタイの不穏なやりとりに、ゼントラーディ人の軍紀の乱れが生じていることが暗示されている。

ゼントラーディ人は修理、修復の技術をもたない。マックスに破られたブリタイ艦ブリッジのガラス(第12話「ビッグ・エスケープ」)は壊れたままになっている。

マクロス市街地のハンバーガー・ショップの店名は、「Macross Nald’s」。

グローバル艦長の声明発表は、事前にシナリオがつくられている印象をうける。避難民へのお詫びを口にしたグローバルが言葉につまり、あとをミンメイがひき継ぐ。ミンメイは「政治や軍隊のことはわからない」としながらも、マクロスはわたしたちの故郷だと語って、人びとの共感を誘いだす。それとタイミングをあわせるように、ひと足さきにスタジオからブリッジにもどった未沙がマクロスを発進させる。ミンメイは新曲「マイ・ビューティフル・プレイス」を披露。放送は地球にも発信されており、ミンメイの地球での人気獲得をねらってスタッフ側が一枚かんだことも推察される。

柿崎の死によりスカル小隊は解散し、輝はあらたに編成しなおされたスカル中隊長に任命されている。マックスは輝と同階級の中尉に昇進して、小隊長(部隊名不明)となる。

柿崎の両親に戦死通知を書きながら涙する輝。地球が受けいれてくれる日まで生きぬこうと人びとに呼びかけるグローバル。離れてゆく地球を見ながら「マイ・ビューティフル・プレイス」を歌うミンメイ。どれも感動的な場面であるはずが、すべてスタープロによる作画のためにたちの悪い冗談のようになってしまっているのが、なんとも惜しい。

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