第18話「パイン・サラダ」

セリフとト書き

[ オープニング ]

[ マクロス内の病院。病室にはベッドに横になっている輝と、脈を計測している看護婦がいる。輝、撃墜されたときのことを思いだしている ]
輝: ざまあねえや、まったく。
看護婦A: え?
輝: なんでもない。
看護婦A: ケガはたいしたことないって先生がおっしゃってたわ。でも場所が場所だから、精密検査の結果が出るまでは入院しててもらいますからね。
輝: 入院?
看護婦A: そのときはなんでもなくても、あとでポックリなんてのが頭の場合、よくあるのよ。
輝: んん、おどかすなよ。
看護婦A: 4、5日よ。じゃあ、また4時間後にね。
[ 看護婦A、走って病室を出てゆく ]
輝: ん?
[ 入口に花束を持ってうなだれた未沙が立っている。未沙、輝のそばに来て ]
未沙: ごめんなさい。
輝: えっ!?
未沙: あたしの責任だわ、あなたにケガさせたのは。
[ 輝が黙って顔でじっと見るので、未沙は落ちつかなくなる ]
未沙: ああ…、あたしの顔になにかついていて?
輝: ん、いや、大尉が「ごめんなさい」なんていうの、はじめて聞いたから。
[ 未沙、花を花瓶に移す ]
未沙: とにかく、あのときのあたしの指揮が原因だったってことははっきりしているわ。
輝: そうとばかりはいえないよ。俺のパイロット技術がちゃんとしてれば、どんな指揮が出たってケガなんかしないさ。大尉のせいじゃない。
[ 未沙、花瓶をサイドボードの上に置く ]
未沙: あたし、自信をなくしそう。
輝: どうしたんだい。いうことやること、いつもの大尉らしくないよ。
[ 未沙、花束の包装紙をかたづける ]
未沙: ブリッジをあけておくわけにはいかないから、これで失礼するわ。はやくよくなってね。
輝: ありがとう。
未沙: 「ありがとう」なんて言葉、知ってたのね。
[ 未沙、部屋から出てゆく ]
輝: ん…。

[ 未沙、マクロス・ブリッジにもどってくる ]
未沙: [ ため息 ]は。
クローディア: くよくよしなさんな。
未沙: あ…。
クローディア: 坊やのケガ、たいしたことなかったんでしょう?
[ 未沙、うなずく ]
クローディア: あたしにもおんなじような経験があるわ。
未沙: え?
クローディア: フォッカーと知りあったころ、なんだかここがキューンとしちゃって、仕事中もあいつのことで頭がいっぱい。なにをやってもうわの空。ずいぶんとポカをやったわ。
未沙: あなたが?
クローディア: 人をロボットみたいないいかたしないでよ。
未沙: ああ、そんな意味じゃ…。
クローディア: いいのよ。どうなの、坊やに自分の気持ち、伝えたの?
未沙: 坊や?
クローディア: 年下だって気にすることないわ。あたって砕けろよ。
未沙: あ、あ、あの、そうじゃないのよ。
クローディア: いいからいいから。とにかく、くよくよしないこと。[ 未沙の肩をたたく ]いいわね。
[ ブリッジの扉が開く ]
未沙: あ。
クローディア: あ、艦長。
グローバル: いや、これだけの大所帯だと、物資もたいへんな量だ。
[ 未沙、クローディア、敬礼する ]
クローディア: それで、ここでの滞在日数は?
グローバル: 物資の補給がすむまでだ。
クローディア: わかりました。ああそれから、早瀬大尉には任務に私情を持ちこまぬよう、私からきびしく意見しておきました。
グローバル: 私が入ってきたときの感じでは、きびしすぎるぐらいだったな。
クローディア: [ 未沙に目くばせして ]ん。

[ 輝の病室。ラジオからミンメイの歌う「0-G Love」がながれている ]
輝: [ 独白 ]ミンメイかあ。いまや大スター。だんだん遠くへ行っちゃうなあ。滅入るよ、なにやっても。
[ 病室のドアが開く ]
フォッカー: よお、輝。
[ フォッカーのうしろからマックス、柿崎の姿も見える ]
輝: 先輩。
フォッカー: はははは、しけた面してどうした。ほれっ、お見舞いだ。
[ フォッカー、お見舞いのプラモデルの箱を輝のベッドに投げる ]
柿崎: いいな、優雅にミンメイちゃんの歌なんか聴いちゃってさ。
[ 柿崎、ラジオのボリュームをあげると、輝が乱暴にスイッチを切る ]
柿崎: [ すこし驚いて ]隊長。
輝: 見舞いに来たんだろう?
柿崎: そうだけど、そんな恐い顔しないでくださいよ。
フォッカー: まあ、たいしたケガじゃなくってよかったよ。なにも考えず、骨休めしてろ。
輝: とてもそんな気分にはなれませんよ…。
マックス: 隊長、しっかりしてくださいよ。あのくらいの戦闘でケガするなんて。
[ 輝、マックスを横目でにらむ ]
マックス: [ 失言だと気づいて口を手でふさぐ ]あ、すみません、どうも。
輝: 部下にそんなこといわれるようじゃ、俺もさきがねえな。
柿崎: そうっすね、がんばらなきゃ。われわれが隊長の後釜ねらってるんだから。ふっははは。
輝: なんだ、おまえ!
フォッカー: こいつらがいたんじゃ、入院がのびそうだ。このへんで失敬する。
[ フォッカー、柿崎の襟首をつかんで引きずってゆく ]
柿崎: あ、あ、あらっ…。
フォッカー: まあ、生きているのを見たから俺もひと安心ってとこだ。
マックス: きれいな花ですねえ。…そうか、ミンメイさんが来たんでしょう?
輝: 来るわけないだろう? いまや大スター。そんな暇ないよ。
柿崎: そりゃ、そうっすね。
フォッカー: さあ、はやく来い!
[ フォッカー、柿崎をつかんで退室する ]
柿崎: [ 敬礼 ]失礼します!
マックス: じゃ、早瀬大尉からでしょ。
[ 輝、不機嫌に黙りこむ。マックス、輝の異変に気づいて ]
マックス: [ 敬礼 ]ん、失礼します。
[ マックス、病室から足ばやに出てゆく ]

[ 病室からの帰り道 ]
マックス: ケガよりも、精神的にまいってるみたいでしたね。
柿崎: 重症かもな。
フォッカー: あいつを元気づける特効薬は、いまんところひとつしかなさそうだ。
柿崎: 特効薬?

[ マクロス市街地の喫茶店「VARIATION」にて、フォッカーがクローディアを待っている。フォッカー、クローディアを見て、手を振る ]
クローディア: これは私的なこと、それとも?
フォッカー: 強いていえば両方だ。
クローディア: ふ、まあいいわ。ミンメイのスケジュールを調べてみたらねえ、彼女は今日、撮影所で彼女の処女作を撮ってるそうよ。
フォッカー: 撮影所か、よしっ! 悪かったな、こんな雑用をきみに頼んじゃって。
クローディア: どういたしまして。こんどあたしのほうのご用、聞いてくださる?
フォッカー: どうぞ。
クローディア: あらたにパイン・サラダがあたしのメニューにひとつくわわったの。どうする? 食べてみる?
フォッカー: とうぜん。勤務が終わったら寄らせてもらうよ。じゃっ!
[ フォッカー、立ちあがる ]
クローディア: もう行くの?
フォッカー: 相手はいそがしい人間だ。べつなところに移られたら会えなくなってしまう。助かったぜ。
[ フォッカー、去る。クローディアはフォッカーの残していったカップを胸に引きよせる ]
クローディア: ああ、うふ。

[ ミンメイ人形を売る露店。「私の彼はパイロット」を歌うチャイナ・ドレス姿のミンメイ人形が動いている ]
店主A: こんど新発売のミンメイ人形だよ! はやく買わないと売りきれちゃうよ〜!!
[ 子どもたちが群がるなかに「青い風」3人組もまじっている ]
ワレラ: これはすごい仕掛けだ。
ロリー: いいなあ、ほしいなあ。
コンダ: ミンメイ人形、ほしいなあ。
[ 子どもたちが殺到する ]
店主A: ああっ、押さないで、押さないで! うわあ!!
[ 売り台がひっくりかえり、あたりにミンメイ人形が散らばる。ロリーの手がミンメイ人形をひとつつかむ ]
店主A: もう、商売ものがメチャクチャだ!

[ ブリッジ3人娘、私服で市街地を歩いている ]
キム: あのディスコもいいけどさあ、男の子たちがいっつもおなじメンバーじゃね〜。ちょっとマンネリよ。
シャミー: ん〜、バカな男ばっかり。やあねえ。
ヴァネッサ: うふ。…あらっ!?
[ ヴァネッサ、逃げてくる「青い風」3人組を見とがめる ]
ロリー: うまく逃げられたぜ。
コンダ: へへ、大成功だな。
ワレラ: おやじ、気づかないぜ。
ロリー: さてと、戦利品を…、ああっ!
ワレラ: あ、ああ!
[ 「青い風」3人組、ブリッジ3人娘に見られていたことを知って驚く ]
ブリッジ3人娘: ん?
[ ロリー、手に持っていたミンメイ人形を背後に隠す ]
ロリー: [ 動揺する ]あああ…。
シャミー: いま隠したの、ミンメイ人形でしょう。
ロリー: あ、あ、ああ、あの、あのう。
コンダ: くそっ、見やぶられちまったか。
シャミー: 悪い人たちね、どっかの子どもの取りあげてきたんでしょう。
ロリー: い、いやいやいや、これは俺の…。
シャミー: やだあ、ロリコン?
ワレラ: ロリ、コン!?
シャミー: とぼけちゃって、ツンツンしちゃうから。
[ シャミー、ふざけてロリーの胸もとに人さし指を数回押しあてる ]
ロリー: ええ〜っ!!
ヴァネッサ: でもあなたがた、あんまり見かけない顔ねえ、ここらへんじゃ。
ワレラ: うっ、あ…。
コンダ: うっ、あ、そ、そんなことないよ。
ロリー: われわれは、そ、そ、その、そのへんで働いてんだ。
[ ロリーがうっかり指さしたのは、ディスコ「BAMBOOHOUSE」]
キム: ええ!? ディスコなの〜?
シャミー: うそ〜、あたしたちのおなじみの店じゃな〜い!
ワレラ: ディスコってなんだ?
[ ロリー、ワレラをひじでこづく ]
ロリー: しっ!
[ シャミー、ロリーの手をとる。ロリー、驚愕の顔つき ]
シャミー: そんなら都合いいわ。いっしょに行きましょう!
キム: あたしたち行くとこだったのよ。レッツ・ゴー!
ヴァネッサ: ちょうど3対3だしね。
シャミー: [ ロリーの手を引いて ]はやく行きましょう。フィーバーフィーバー。
ロリー: ち、ちょ、ちょっと!
ワレラ: [ コンダに ]お、女とみだりに口をきくと、軍法会議もんだぞ。
コンダ: これも任務だ。やむをえん。
ワレラ: よしっ!
コンダ: んっ!
[ 「青い風」3人組とブリッジ3人娘、連れだってディスコに向かう ]

[ カムジン艦ブリッジ ]
カムジン: てやんでい! きさま、なんの資格があって俺に説教たれるんだっ!
ミリア: わたしは、戦士として恥を知ったほうがいいといっているのだ。
カムジン: ふん、あとからのこのこ戦線に出てきて、かっこつけるなってんだ。
ミリア: [ 見くだして ]ふん、そこで大口たたいていられるのも、わたしたちがおまえを海から拾いあげてやったからだということを、わすれるな。
カムジン: だまれっ!! 誰にも負けたことがないのがおまえさんの自慢らしいがな、だったら教えといてやる。マクロスのなかにもすご腕がひとりいるってことをな!
ミリア: マクロスのなかにすご腕が? おもしろい、相手になってやる。

[ 映画「小白竜」の撮影所。フォッカーがミンメイをさがしている ]
フォッカー: [ ミンメイを見つけて ]よう!
ミンメイ: フォッカー少佐!
[ ミンメイ、フォッカーに走りよる ]
ミンメイ: いま、カンフー映画つくってるのよ。あたし、主役。
フォッカー: かわいいぞ、なかなか。
ミンメイ: ね、応援に来てくれたんでしょう? 輝はどこ?
フォッカー: その輝のことで、頼みがあって来たんだ。
ミンメイ: 輝、どうかしたの?
フォッカー: あいつ戦闘でケガをして、いま入院しているんだ。それで、できたら見舞いに行ってやってくれないかと思ってな。
ミンメイ: ひどいケガなの?
フォッカー: いや、それはたいしたことはない。だが、精神的にまいってる。だから、きみの顔を見れば元気になるんじゃないかと、そう思って。
ミンメイ: そう、それであなたが。
フォッカー: いそがしいだろうが、ちょっと顔を出してもらうだけでいいんだ。
ミンメイ: いいわ。どのくらいかわからないけど、マネージャーに相談してみる。
フォッカー: どうもありがとう。来た甲斐があったよ。
カイフン: 勝手だな。
フォッカー: あん?
カイフン: 軍人はみずから好んで戦って勝手にケガをする。
フォッカー: きみ…!
スタッフA: ミンメイちゃん。シーン12、テスト行きます!
ミンメイ: は〜い。[ フォッカーに ]じゃ、またね!
フォッカー: じゃあな。
カイフン: ふん。

[ フォッカー、市街地をジープで走っている ]
フォッカー: [ 独白 ]これでやつもすこしは元気になるだろう。
未沙: 少佐、フォッカー少佐。
フォッカー: フォッカーだ。
未沙: 敵艦が1隻、急速接近中。グローバル艦長より出撃命令が出されました。至急おもどりください。
フォッカー: 了解。あー、きみ、このことは輝には知らせないでくれ。あいつの性格からして、無茶して飛びだすかもしれんからな。
未沙: わかりました。
フォッカー: それから柿崎とマックスは、俺たちのケツにつけるように。
未沙: 了解。

[ アイキャッチ ]

[ マクロス・ブリッジ ]
クローディア: 艦長、艦を浮上させなくていいんですか?
グローバル: まだ物資の補給もすんでおらん。しばらくはこのまま様子を見る。とにかくマクロスに接近させんことだ。
クローディア: イエッサー。

[ クアドラン・ロー隊が発進 ]
ミリア: いいか、わたしのめざす相手が出てきたら手だしは絶対に無用。おまえたちは、わたしがその者と1対1で戦える状況をつくってくれれば、それでいい。
ゼントラーディ兵士A(女): わかりました。ほかはおまかせください。

[ プロメテウス甲板上で、バーミリオン小隊が発進準備を整えている ]
未沙: バーミリオン2、3、発艦せよ。
マックス: 了解。
柿崎: 了解。
[ マックス機、発進 ]

[ マクロス・ブリッジ ]
未沙: ウィンザー中隊、順次発艦よろし。
パイロットA: 了解。
クローディア: いつもの調子にもどってるわ。落ちついて。
[ 未沙、うなずく ]

[ バルキリー格納庫 ]
整備士A: エンジン、かかってます!
フォッカー: うう、すまねえ。
[ フォッカー、いそいでバルキリーに乗りこむ ]
フォッカー: スカル・リーダー、発艦準備完了。
未沙: 少佐。敵をマクロスへ近づけないようにしてください。
フォッカー: 了解。パイン・サラダ、期待してるぜ!
[ 未沙、フォッカーのいう意味がわからず、艦長を振りかえる ]
未沙: あ、艦長。パイン・サラダってなんの暗号ですか?
グローバル: ん、お? パイン・サラダ…?
クローディア: ふふ。

[ フォッカー機、発進 ]
柿崎: 少佐、どこ行ってらしたんですか?
フォッカー: ああ、ちょっとな。いいかおまえら、隊長がいないときだからこそ、しっかりやれ!
マックス: はい、わかってます。
柿崎: ご心配無用。
フォッカー: 来たぞ。アタック!

[ ミリア隊 ]
ミリア: 行け!
[ ミリア機以外のクアドラン・ローが散開する ]
ミリア: さあ、どいつだ。そのすご腕というやつは。
[ バルキリー隊とクアドラン・ロー隊の交戦。マックス機がめざましい活躍をみせている ]
ミリア: はっ! あいつか。ようし。
[ ミリア機、マックスに接近し攻撃を仕掛けるが、マックスは回避して反撃する ]
ミリア: バカな!
[ マックスとミリアの対決 ]
ミリア: んんっ! わたしの攻撃をかわしたな。
[ ミリア機、マックスを追撃する ]

[ マクロス・ブリッジ ]
未沙: 妙だわ、敵の動きが。
クローディア: 私もいまそう思ってた。[ グローバル艦長に向かって ]何機かはマクロスへ向かってきてもいいと思いませんか?
グローバル: 来てはほしくはないが、そのとおりだ。
未沙: なんだか、敵はバーミリオン3だけをねらっているような…。
グローバル: マックス少尉に逃げるように伝えろ。
未沙: 逃げる?
グローバル: 指揮官機がそれでも追うようだったら、きみたちのいうとおりかもしれん。

[ スカル大隊 ]
フォッカー: 敵がマックスをねらっている? なぜだ!
未沙: わかりません。ただ、こっちで見ているかぎりそんな気がするんです。
フォッカー: ようし、すぐにわかるこった。マックス、逃げろ!
マックス: 逃げる!?
フォッカー: やつらはおまえがめあてらしい。
マックス: 了解。
[ マックス機、急降下して戦列から離れようとするが、ミリア機はあとを追う ]

[ マクロス・ブリッジ ]
未沙: ああ!
グローバル: うう、やっぱり!

[ 輝の病室。ドアの音がする ]
輝: ミンメイ!
ミンメイ: 思ったより元気そうじゃない? うらやましいなあ、ベッドで寝ていられるなんて。わりといい部屋ね。そうそう、ごめんね。撮影のあいまに抜けだしてきたから、なんにも買ってこれなかったの。
輝: いいよ、そんなこと。それよりどうして知ったんだい、俺がここに入院してるってこと。
ミンメイ: 少佐が教えてくれたの。
輝: 先輩が?
ミンメイ: 思いやりのある人ね、あの人。ちょっとすわらせてね。
[ ミンメイ、ベッドの端に腰をおろす ]
ミンメイ: うわあ、気持ちよさそう! [ 身を倒す ]
輝: 寝てないの?
ミンメイ: 1日2時間くらい。
輝: たった?
ミンメイ: 映画だけならいいけど、マスコミの取材があったり、いろんなパーティに呼びだされたり、身体がいくつあってもたりない感じ。
輝: そういや、カイフンさんもおたくのカンフー映画に出るんだって?
ミンメイ: ええ、そうよ。カイフン兄さん、中国拳法の達人でしょ? だから監督さんに気に入られて。
輝: そう…。
[ ミンメイ、横になっているうちに寝てしまう。その姿を悲しげに見まもる輝 ]

[ 空戦場 ]
フォッカー: どけどけ!
[ フォッカー機、敵を撃破してゆくが、背後から砲撃をうけ、被弾する ]
フォッカー: ぐわっ!

[ ミリアとマックスの対決 ]
ミリア: しまった!
マックス: あ、まずい!
[ ミリア機、マクロスに向かってゆく ]

[ マクロス・ブリッジ ]
未沙: ああ、こっちへ来ます!
グローバル: マクロスの出入口をすべて封鎖しろ!

[ マクロス市街地に警報が鳴りひびく ]
輝: はっ!
[ 輝、ベッドから立ちあがって様子を見にゆこうとするが、頭が痛む ]
輝: うう、ううっ…。
[ 輝、寝ているミンメイをそのままにして、部屋から出てゆく ]

[ ミリア機、閉まりかけたハッチのひとつからマクロスに侵入する ]
マックス: しまった!
[ マックス機、あとを追う ]
キム: [ 艦内放送 ]敵機が侵入しました。外出している人は、近くの建物に待避してください。
[ 輝、病院の窓から市街地を見る。衝撃。上方からなにかが落ちてくる ]
輝: あ!
[ ミリアのクアドラン・ローが輝の眼の前に降ってくる ]
輝: うわあ!
[ つづいてマックス機が降りてくる ]
輝: マックス!
[ 市街地を逃げるミリア機を、背後からマックスがガンポッドで銃撃。命中し、クアドラン・ローは倒れる ]
ミリア: 私が負ける!? そんなバカな!
カムジン: [ ミリアの回想 ]だったら教えといてやる。マクロスのなかにもすご腕がひとりいるってことを!
グローバル: 艦内のハッチをぜんぶ開放しろ! あいつを追いだすんだ。
[ ミリア機、頭上のハッチが開いたところを見すまして逃走。マックスが追撃する ]
未沙: バーミリオン3。敵は戦意を喪失している。深追いはやめよ!
マックス: ふう、了解。
ミリア: この屈辱、いつかかならず晴らしてやるぞ…。

[ フォッカー機 ]
フォッカー: ようし、もういいだろう。
未沙: 少佐、機首がさがっています。だいじょうぶですか?
フォッカー: だいじょうぶだ。それよりマックスは?
未沙: もうすこしで指揮官を倒すところでしたわ。
フォッカー: そうかあ。これより帰艦する!
未沙: 了解。

[ 輝の病室。ミンメイのマネージャーが入ってきて、寝ているミンメイを見つける ]
マネージャー: ああ、ここだここだ。ミンメイちゃん、起きてよ。
ミンメイ: んん? マネージャー?
マネージャー: なにがマネージャーよ。時間になってももどらないから撮影所じゃたいへんなんだから、もう。
ミンメイ: あれえ? ここに男の人いなかった?
マネージャー: 男? なにいってんの。こんなとこで寝てて妙な噂たてられたらどうすんのさあ。さあ、はやくはやく。
ミンメイ: 痛いわ。行くったら〜。はあ〜は[ あくび ]

[ プロメテウス内格納庫 ]
整備士B: [ フォッカー機を見て ]ひや〜、今回は派手に撃ちこまれたなあ。
整備士C: こっちもだ。もろに食らってるぜ。
[ 整備士B、コクピットをのぞきこんで驚く ]
整備士B: ああっ! お、おい…。
整備士C: うあっ!

[ クローディアの部屋。フォッカーがソファでくつろいで、ギターをつま弾いている。クローディアはうしろを向いてパイン・サラダをつくっている ]
フォッカー: 輝も幸せなやつだ。腕のたつ部下を持って。
クローディア: なんかいった?
フォッカー: ふっふふふ。なんでもない。
クローディア: パイン・サラダ、もうすこしでできあがるわ。それまでちょっと飲んでて。
フォッカー: もう、飲んでるよ…。
[ ギターの音が途切れる ]
クローディア: はい、できたわ。お待たせ。あら、…もう酔ったの?
[ ゆっくりと前に倒れてゆくフォッカー。ギターの弦が鳴る ]
クローディア: はっ、ああ…!
[ 倒れたフォッカーの背中に3箇所の銃創。血が染みだしている ]
クローディア: ロイ! ロイ!!

[ 病院のベッドに横たえられたフォッカー。かたわらに医師と看護婦。クローディアが信じられないといった顔つきで呆然と立っている。医師と看護婦、一礼して立ちさる。クローディア、フォッカーの亡骸にすがりついて泣く ]
クローディア: は、うっ、うっ、ううう…。

[ 輝の病室。プラモデルの飛行機で遊ぶ輝。動転した様子の未沙が部屋に入ってくる ]
未沙: 死んだわ…、フォッカー少佐が。
[ 沈黙 ]
輝: [ 唖然として ]死んだ?
未沙: [ 泣きながら ]たったいま、この病院で!
[ 輝、手にしていた飛行機を落とす。バラバラに壊れる飛行機 ]
輝: 死んだ…、先輩が…。

[ 次回予告 ]

ナレーター: 避難民受けいれの連絡をうけたグローバル艦長は、マクロスの進路を北アメリカに向けた。目的地を目前にして、カムジンの攻撃をうけたマクロスは、出力をあげた全方位バリアーで応じた。
次回、「超時空要塞マクロス」、「バースト・ポイント」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(18)
リン・ミンメイ(18)
早瀬未沙(18)

ブルーノ・J.グローバル(16)
クローディア・ラサール(16)
ロイ・フォッカー(17)
マクシミリアン・ジーナス(マックス)(10)
柿崎速雄(11)
ヴァネッサ・レイアード(17)
キム・キャビロフ(15)
シャミー・ミリオム(16)

リン・カイフン(4)

カムジン・クラヴシェラ(6)
ミリア・ファリーナ(3)
ワレラ・ナンテス(10)
ロリー・ドセル(10)
コンダ・ブロムコ(10)

看護婦A - 輝の病室
店主A - ミンメイ人形を売る露天商
スタッフA - 映画撮影所
マネージャー - ミンメイ
パイロットA - バルキリー・ウィンザー中隊長
整備士A - バルキリー
整備士B - バルキリー
整備士C - バルキリー
ゼントラーディ兵士A(女) - ミリア隊

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スタッフ

脚本 … 星山博之
絵コンテ … 石黒昇
演出 … 高山文彦
メカ作監 … 板野一郎
キャラ作監 … 美樹本晴彦
原画 … しまだひであき 門上洋子 山崎茂 栫裕
動画 … 本猪木浩明 福田浩一 三坂徹 山本勝也 北村大平

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ノート

フォッカー戦死。

職務で大きなミスをして意気消沈した未沙を見て輝に恋したためだと勘ちがいしたクローディアは、この時点ではかなりの早合点ではあるが、おそらくはふだんの輝と未沙のやりとりを端から見ていて、口論しながらも正直に心のうちを話せるふたりの距離の近さを感じとったのだろう。

未沙とミンメイの見舞いの対比が見られて興味ぶかい。みじかい会話のなかにも相手への気づかいと真情の吐露がある未沙と、自分の話ばかりをしたあげく寝てしまうミンメイ。前者の関係は発展する余地があるが、後者には振りまわされて疲労するばかりだ。

ミリアが侵入し、破壊したマクロス市街地のビルに「斉藤慶子」という看板がかかっている。

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