第12話「ビッグ・エスケープ」

セリフとト書き

[ オープニング ]

ナレーター: キャッツ・アイに搭乗し偵察に出た未沙と、護衛についた輝、マックス、柿崎の4名は敵艦に拉致され、遠く離れたゼントラーディ基幹艦隊へと連れさられた。そこで見た敵艦隊の規模、戦力、そしてゼントラーディ人の実態は、かれらの想像を絶するものであった。

[ ブリタイ艦内の独房 ]
輝: 逃げよう。
未沙: えっ。
柿崎: えっ。
輝: ここから脱出するんだ。
未沙: そんなこといったって。
柿崎: どうやって。
輝: さっきの会見で、俺と中尉が…、キスさせられたとき、巨人のやつら、ものすごく驚いていただろう? 「プロトカルチャー」とかいってさ。
柿崎: ああ、あんまり驚いて、しばらく動けないくらいだったっすね。
輝: こんど敵兵が食事の差しいれに来たら、そのときをねらってもういちどキスすれば…!
柿崎: なあるほど! それを見て敵が驚いた隙に逃げだそうって…。
未沙: 冗談じゃないわ、あたしはイヤよ。
輝: 中尉…。
未沙: なにいいだすのかと思えば、そんなこと。うまくいくわけないじゃない。そんないいかげんな作戦のために、あなたと…、もういちどキスなんかできますか。
輝: なにいってんだよ! ほかにいい手でもあるのかよ。ここから逃げだすためじゃなきゃ、誰があんたなんかと!
未沙: まあ、あの…!!
柿崎: まあまあ、隊長も中尉もおさえておさえて。早瀬中尉、ここはひとつ一条隊長になりかわりまして、この私がう〜っ! [ 口をとがらせる ]
輝: アホかあ。
[ 輝と未沙、柿崎に背を向ける ]

[ 営倉の外であくびをしているゼントラーディ兵士Aがいる。通路の陰から様子をうかがうマックス ]

[ ブリタイ艦会見室 ]
ブリタイ: ボドル・ザー総司令、これ以後の作戦、いかがなさるおつもりで。
ボドル・ザー: スパイを送りこんでみたい。
ブリタイ: スパイ!
エキセドル: お言葉ですが、プロトカルチャーとの接触はわれわれを滅ぼすことになるやもしれません。
ブリタイ: そのかわり、まぼろしの反応兵器や艦船の修復技術を手に入れれば監察軍にたいし、われわれはきわめて優位にたてる。
[ ブリタイが話しているあいだ、「青い風」3人組は寄りあつまって小声で相談する ]
ロリー: どうする?
コンダ: 俺はもういちど、この眼でマイクローンの民間人を見てみたい。
ワレラ: 俺もだ。
ロリー: よしっ!
エキセドル: しかしマイクローンになってあの異常なマクロスに潜入するという任務に、耐えられる者がいるでしょうか?
ボドル・ザー: それが問題だな。
ロリー: その役目、わたしどもにおまかせください。
ボドル・ザー: おまえたちが!
青い風: はいっ!

[ ブリタイ艦の独房 ]
未沙: さっきの話、やっぱり試してみようかな…。
輝: 無理しなくてもいいですよ。
未沙: このビデオには、地球の歴史をかえるぐらいの価値があるのよ。これを持ち帰るのが、軍人としてのあたしの任務。そのためならば…。
柿崎: いやあ、さすが早瀬中尉。
輝: 任務、任務とお偉いことで。
未沙: あなただって軍人でしょ。やるの、やらないの?
輝: ん、いいだしたのは、僕ですけどね。
[ 外で大きな物音がする ]
輝: はやいな、予定より!
未沙: 柿崎くん、あなたはドアのところへ。
柿崎: 了解。
未沙: 行くわよ、いい?
輝: そっちこそ。
[ 輝と未沙、顔を寄せる。部屋のドアが開き、ゼントラーディの軍服を着用したマックス機が立っている ]
マックス: ああっ!
柿崎: やったあ!
未沙: いまよ!
輝: ええ!
[ 輝、未沙、駆けだす ]
マックス: 隊長!!
未沙: ええっ!?
輝: ええっ!?
マックス: 僕です、マックスです。
輝: マックス!
未沙: 無事だったのね!
柿崎: どうしたんだ、その格好。
マックス: 隊長たちこそなにやってんですか。
[ マックス、気絶している営倉の警備兵をなかに運びいれる ]
輝: 話はあとだ。とにかくここから脱出を!
マックス: 了解。
[ マックス機、部屋のドアをいったん閉め、輝たちに手を差しだす ]
マックス: どうぞ。
[ マックスの差しだした手にのる輝と未沙。柿崎も駆けよるが、マックスが片方の手で制止する ]
マックス: おっと! 柿崎くん。
[ マックス、輝と未沙をゼントラーディの軍服の左胸ポケットに入れ、柿崎は右ポケットに入れる ]
マックス: きみはこっち。
柿崎: なんだあ!?
マックス: 邪魔しちゃ悪いだろう?

[ ブリッジに向かってボドル・ザー以下、ブリタイ、エキセドルが歩いている ]
ブリタイ: あの3人でだいじょうぶでしょうか?
ボドル・ザー: いちどでも敵艦内の様子をかいま見た者であれば、この役目、適任であろう。
エキセドル: もっともですなあ。やつらの行動は理解しかねることばかりで。

[ ブリタイ艦の独房 ]
マックス: しかし意外だなあ。隊長の恋人はてっきりあの子だと思ってたのに、年上趣味があったなんて。
輝: 冗談じゃない!
未沙: そうよ、これは逃げだす作戦!
マックス: だいじょうぶ、このことはマクロスに帰っても内緒にしときますから。
未沙: んん、ちがうんだったら…!
輝: ちがう、そうじゃ…!
マックス: 大声出すと見つかりますよ。さあ、行きます!
[ マックス機、部屋のドアを開く。様子をうかがいながら、通路を歩いてゆく。途中でゼントラーディ兵士とすれちがう。いそいでポケットのなかに身を隠す輝と未沙 ]
輝: ああ!
未沙: ああ!
[ ゼントラーディ兵士、何事もなくとおりすぎる ]
輝: ふう。
未沙: ふう。
ゼントラーディ兵士B: エテマ!
マックス: あっ!
輝: 見つかった!
[ 逃げだすマックス機 ]
ゼントラーディ兵士C: アドラ!
[ マックス機、前方にいたふたりのゼントラーディ兵士を投げとばす ]
ゼントラーディ兵士C: うわあ!
ゼントラーディ兵士D: うわあ!
[ 背後からゼントラーディ兵士たちが、銃を撃ちながら追いかけてくる ]
マックス: 揺れますけど辛抱してください。
輝: わかった!
[ マックス機、バトロイドからガウォークに変形する ]

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ゼントラーディ兵士E: ブリタイ司令。
ブリタイ: どうした。
ゼントラーディ兵士E: 捕虜が脱走しました。
ボドル・ザー: なんだとっ!
ブリタイ: はっ!
ボドル・ザー: おおっ!
[ マックス、ブリタイ艦のブリッジに飛びこんでくる ]
ボドル・ザー: うおおお。ええい、マイクローンめ、なにをしでかすやら!
ブリタイ: まったくです。
ボドル・ザー: なにがなんでもやつらをつかまえろ!
ブリタイ: はっ!

[ マックス機、背後からゼントラーディ兵士の銃撃をあびながら逃走。エレベータに追いつめられる ]
マックス: しまった!
[ ちょうどエレベータのドアが開いて、マックス機がエレベータに乗りこむ。ポケットから輝が飛びだしてエレベータの扉を閉め、階下へ向かう操作をする ]
マックス: だめです、ぜんぜん動きません。
輝: わかった。[ 未沙に ]どうします?
未沙: こうなったら強行突破しかないわ。
輝: マックス。
マックス: 了解。
[ 輝、未沙、マックス、柿崎はバルキリーを降りる。エレベータを出ると、待ちかまえていたゼントラーディ兵士が飛びかかってくる ]
輝: うわあ!
未沙: ああ!
[ 4人はゼントラーディ兵士の腕のあいだをすりぬけて難をのがれる。輝は未沙と、マックスは柿崎とともにそれぞれ逆方向に駆けだす ]
ゼントラーディ兵士F: ううう…。
[ マックス機、爆発。ゼントラーディ兵士Fは爆発に巻きこまれる ]
ゼントラーディ兵士F: うわああ…!!

[ ブリタイ艦マイクローン装置室 ]
輝: はあ、はあ、はあ…。
未沙: はあ、はあ、マックスくんたち無事かしら。
輝: さあね。[ 眼にしたものにおどろいて ]ああ!
未沙: あっ!
[ 輝と未沙、ゼントラーディ軍のマイクローン装置を発見する。ちょうど「青い風」3人組が巨人からマイクローン・サイズに変換しているところ ]
輝: こ、これは!?
未沙: 巨人が…、巨人がちいさくなってゆく。
[ 未沙、マイクローン装置をマイクロビデオにおさめる。輝と未沙は走りだすが、ゼントラーディ兵士に気づかれる ]

マックス: はあ、はあ、はあ…。
柿崎: はあ、はあ、はあ…。
[ 背後からせまるゼントラーディ兵士を振りきって、防護扉を閉める ]

[ ブリタイ艦のブリッジ。ゼントラーディ兵士が、マックス機の突入で割れたガラスの破片をかたづけている ]
ボドル・ザー: やつらはまだつかまらんのか!
ブリタイ: はっ、申しわけございません。なにぶん相手がちいさすぎて。
ボドル・ザー: ううう、ブリタイ!
ブリタイ: はっ。
ボドル・ザー: この失態の責任、とらねばならんようだな。
ブリタイ: [ くやしそうに顔をゆがませ ] あ…。
ボドル・ザー: しばしのあいだ、第一線をしりぞいてもらおう。
ブリタイ: はっ!
エキセドル: それでは、スパイの潜入作戦は?
ボドル・ザー: 潜入作戦はラプ・ラミズの隊にでもあたらせよう。
ブリタイ: 直衛艦隊のラプ・ラミズを。
ボドル・ザー: そうだ。この作戦、それだけの重要性があるのだ。

[ 兵器庫にのがれた輝と未沙 ]
未沙: あれが巨人たちのいっていた「マイクローン」なのね。
輝: ああ。
未沙: たいへんなデータを手に入れたわ。一条少尉。
輝: はっ!?
未沙: あたし思うんだけど、この巨人たちはもともとは、あたしたちとおなじサイズだったんじゃないかしら?
輝: ええ?
未沙: そして監察軍という名の敵と戦うために、自分たちの身体を大きく、強く改造していったのかも。
輝: そんなことあるわけが…!
未沙: いいえ、ありうるわ。だいたい真空中でも耐えられて、バトロイドと生身で戦えるような人間が自然に生まれるわけないもの。
輝: 遺伝子改造でもしたのかな。
未沙: おそらくね。こうして、巨人からマイクローンにする技術があるのなら、反対に巨人をつくれても不思議じゃないわ。
輝: それは、そうかもね。
[ ゼントラーディ兵士が忍びよってくる。輝と未沙は気づかない ]
未沙: そしてもしかしたら…。
輝: もしかしたら…。
未沙: 巨人たちのいう「プロトカルチャー」って、かれらがまだあたしたちとおなじサイズだったころの文明のことをいうんじゃないかしら。
[ 未沙の背後からゼントラーディ兵士の片手がせまる ]
輝: うわっ!! [ 飛びのく ]
未沙: ああ!
[ 未沙、ゼントラーディ兵士に捕らえられる ]
ゼントラーディ兵士G: んんん!
輝: このやろう!
[ 輝、ゼントラーディ兵士に向かって駆けだしてゆくが、ぎゃくにキックを食らって壁まで吹っとばされる ]
輝: うわあ!
未沙: ああっ!
[ 未沙、マイクロビデオを手から落とす。ビデオ装置は床にあたって粉ごなに砕ける ]
未沙: ああっ!
[ 未沙、手で顔を覆う。ゼントラーディ兵士、立ちさろうとする。輝は巨人用の銃をかまえる ]
輝: う、うう、えいっ!
[ 全身で引き金をひく輝。弾はゼントラーディ兵士の眉間に命中する ]
ゼントラーディ兵士G: ああ、あ〜!
[ ゼントラーディ兵士、絶命する。なおも撃ちつづける輝 ]
輝: [ 眼をつぶり引き金を繰りかえしひく ]えいっ、えいっ、えいっ!
[ 巨人の倒れる音 ]
輝: ううう…。あっ! 中尉〜!!
[ 輝、ゼントラーディ兵士の手のなかに捕らえられた未沙に駆けよる ]
輝: 中尉。
[ せまってくるゼントラーディ兵士たちの足音が聞こえる ]
未沙: [ 顔を覆って泣いている ]一条少尉、もうダメ。あなただけでも逃げて。
輝: なにいってんだよ!
未沙: データがなくなっちゃったらあたし…、もう助かってもしかたがない。
輝: しっかりしろよ。データがなくっても、俺たち自身が見たり聞いたりしたことがあるじゃないか!
未沙: だったらなおのこと、あなただけでも…。
輝: んん、冗談じゃない。女を見すてて行けるかよ!
[ 輝、ゼントラーディ兵士の手を押しひろげる ]
未沙: あ。
輝: そらっ! [ 未沙に手を差しだす ]
未沙: [ うれしそうに ]は…。
[ 輝と未沙、駆けだす。すぐうしろに迫ったゼントラーディ兵たちに、橋の上で銃撃される ]
輝: うわあ!
未沙: ああっ!
[ 輝と未沙、銃撃によってあいた穴に落ちて落下 ]
輝: うわ〜!!
未沙: きゃ〜!!

[ アイキャッチ ]

[ 輝の夢 ]
ミンメイ: さよなら、輝。さよなら!
輝: どこ行くんだ、ミンメイ。ミンメ〜イ!

[ ブリタイ艦内。気をうしなっていた輝、眼をさます ]
輝: ああ!
未沙: 気がついたようね。
輝: 早瀬、中尉…。
[ 輝、身を起こす ]
輝: 俺たち…、これは!?
未沙: エンジンの冷却水か、なにかが溜まったようね。
輝: 冷却水?
未沙: ひどいもんね、ろくな整備もしてないみたい。うふ、もっとも、そのおかげで助かったんだけどね。
輝: 溺れないですんだってことは、中尉に借りをつくっちゃいましたね。
未沙: 戦友を見すてては行けないでしょ。[ ほほえむ ]
輝: 中尉。
未沙: これでおあいこ。貸し借りなしよ。
輝: だけど、おかしいですね。あれだけの大艦隊をもつ巨人たちが、船の整備も満足にしてないなんて。
未沙: やりたくてもできないんじゃないかしら。
輝: できない?
未沙: そうよ。かれらは自分たちの身体を巨大化させて、確かに軍人としては最高の体を手に入れたかもしれない。だけど、そのかわりにうしなったものも多いんじゃないかしら。
輝: うしなったもの?
未沙: ええ、いまのかれらに「民間人」だとか、「男と女の関係」が存在しないのがその証拠よ。
輝: あまりにも強い身体をもったために、戦うことしか頭になくなったってことか。
[ 輝、冷却水の池にものを投げこむ ]
未沙: 「宇宙は戦いに満ちあふれ、戦いあるところにこそ命がある」。
輝: あれだけの大艦隊どうしの戦争、きっとものすごいだろうな。
未沙: いくつの星が滅んだか、知れないわねえ。
輝: ああ。
未沙: きっと、あたしたちとおなじサイズの人間たちなんかあっという間に滅ぼされて、そのときにいろいろな文化がうしなわれていったんでしょうね。
輝: うしなわれたかつての文明。それが「プロトカルチャー」か。
未沙: 巨人たちが、あたしたちやマクロスに興味をもったのも、あたしたちがその「プロトカルチャー」をもってるからかもね。
輝: 考えてみれば哀れな話だな。
[ 未沙、首をかしげる ]
輝: 戦うことしか知らない人間なんてさ。
未沙: ほんとね。まるであたしみたい。
輝: 中尉が?
未沙: あは、あたしのうちね、100年も前から軍人の家系なの。あたしも、中学のころからずっと軍隊しか見てないわ。任務のことで頭がいっぱい。
輝: 士官学校、首席だったそうですね。
未沙: どうしてそれを?
輝: パイロット仲間じゃ有名ですよ。「首席の中尉は鬼より恐い」ってね。
未沙: まあ! だからね、あたしがちょっとでも男の人の話をしようものなら、クローディアにからかわれるわ。[ クローディアの真似をして ]へええ、士官学校首席の早瀬中尉がねえ、って。あなた、好きな人がいるんでしょう、マクロスに。
輝: ええ!?
未沙: 「ミス・マクロス」さん。
輝: な、なぜですか。
未沙: 寝言でいってたわよ、ミンメイ、ミンメイって。
輝: そんなあ〜。
未沙: 恋人なんでしょ。
輝: えっ、ええ、まあ。そう思いたいんですけどね、ミンメイが「ミス・マクロス」に選ばれて、歌手になるって決まってからは、ろくにあう暇もなくなっちゃって。
未沙: そう、歌手になるの。
輝: ええ、もうデビューしたころかな。いまごろマクロスみんなのアイドルですよ。
未沙: それでもいいじゃない。好きな人がいるってことは、なにがなんでもマクロスに帰りたいって思えるもんね。あたしなんか、任務が恋人がわり…。
輝: いい人、見つかりますよ。
未沙: えっ!?
輝: 早瀬中尉だって、マクロスに帰ればきっと!
未沙: よくいうわ。
輝: ウソじゃないです。いまぐらい、女らしくしてれば。
未沙: [ いたずらっぽく ]ふふ、年上をからかうもんじゃないわよ。
輝: すみません。
未沙: いいわ、そのためにもマクロスに帰らなくっちゃ、[ 立ちあがって、すわっていた輝に手を差しだす ]ね。
[ 輝、未沙の手をとる ]
輝: 了解。

[ マイクローン化された「青い風」3人組、ボドル・ザーの前に運ばれてくる ]
ロリー: ロリー・ドセル一級装甲兵以下3名。ただいま出頭いたしました。
ボドル・ザー: うむ、よくぞみずからマイクローン・スパイに志願してくれた。
青い風: 光栄であります。
ボドル・ザー: 敵艦にもぐりこみ、確実な情報を送りこんでくれ。
青い風: はっ!
ボドル・ザー: 帰還のあかつきには、装甲兵団をもたせてやるぞ。
青い風: [ 口ぐちに ]おお。へえ!
ボドル・ザー: ただちに連絡艦ベカムリ220に乗りこみ、敵艦に向かえ!
青い風: はっ!

[ 輝、未沙、走っている ]
未沙: はっ、風?
輝: こっちだ。

[ マックスと柿崎。柿崎は指をなめて風の方向を調べる ]
柿崎: あっちだ!

[ 輝と未沙、外部につうじる出口を発見する ]
輝: やったあ!
未沙: ええ!
[ 未沙、多数の敵艦隊が浮かんでいるのを見て ]
未沙: それにしてもすごい艦隊ね。
輝: ああ。こんなの相手に戦争しても、勝ち目なんかあるわけないなあ。
未沙: なんとか、戦争をやめないといけないわね。
輝: それには、どうやってここから地球にもどれるか考えないと。
未沙: そうね。
[ 足音が近づいてくる ]
輝: 隠れて!
[ マックスと柿崎があらわれる ]
柿崎: やったあ!
マックス: やったあ!
未沙: ああっ!
輝: マックス! 柿崎!
柿崎: 隊長!
マックス: ご無事で!
未沙: あなたたちも!

[ ブリタイ艦の外部ハッチ ]
マックス: あの船、出航するようですね。
未沙: そうみたいね。あたしたちの乗ってきた船から物資を運びこんでるってことは…。
輝: 地球へ、マクロスへ帰れるかも!
柿崎: そうとなれば、さっそくもぐりこみましょう!
未沙: ええ!

[ 輝、未沙、マックス、柿崎はゼントラーディ兵士の眼をぬすんで、物資を運んでいるベルトコンベアに乗り、敵艦に潜入する ]

[ ラプ・ラミズ艦ブリッジ ]
ミリア: 敵艦にスパイを送りこむとは、ずいぶんとまた消極的な作戦ですね。
ラプ・ラミズ: いうな、ミリア。
ミリア: しかしラプ・ラミズ司令。
ラプ・ラミズ: これはボドル・ザー艦隊総司令閣下からの特命なのだ。こんどの敵は、監察軍より危険な敵かもしれん。
ゼントラーディ兵士H(女): 各艦、フォールド航法開始します。
[ ラプ・ラミズ艦隊、フォールド ]

[ 格納庫 ]
柿崎: このあとデフォールドしたとして、どうやってこの船からぬけだすんですか?
未沙: そうね、あの戦闘ポッドを奪うってのはどうかしら?
輝: どうやって動かすつもり?
未沙: 平気よ、優秀なパイロットが3人もそろってるんだから。
輝: ちぇっ。
未沙: マクロスに帰れなくてもいいのかな〜。
輝: はいはい。
未沙: ふふ。

[ ラプ・ラミズ艦ブリッジ ]
ラプ・ラミズ: さてと、スパイを敵艦に送りこむ手段だが。
ミリア: その役目、私めにお任せを。
ラプ・ラミズ: おまえひとりでか?
ミリア: 相手はたかがマイクローン。わたしひとりで充分です。
ラプ・ラミズ: さすがはミリア、頼もしいな。

[ 輝、未沙、マックス、柿崎、戦闘ポッドに潜入 ]
未沙: デフォールドするわよ、いそいで!
輝: わかってますよ、かんたんに操縦できれば苦労なんか!

[ 連絡船ベカムリ220 ]
ゼントラーディ兵士I: いいか、おまえたち3人はこのカプセルに乗りこむんだ。
青い風: はいっ!
[ 「青い風」、カプセルに搭乗 ]
ゼントラーディ兵士I: あとはラプ・ラミズ直衛隊のミリアが、敵艦までとどけてくれるそうだ。
ロリー: ミリアって、あの「エースのミリア」か。
ゼントラーディ兵士I: そうだ。安心して任せるんだな。
[ ゼントラーディ兵士、カプセルのハッチを閉める ]

ゼントラーディ兵士J(女): クアドラン発進準備、完了しております。
ミリア: ご苦労。
[ ミリア、クアドラン・ローに乗り、発進準備を整える。モニタにラプ・ラミズが映る ]
ラプ・ラミズ: 敵艦の注意はわれわれが引きつける。あとは頼んだぞ。
ミリア: 了解。

[ ラプ・ラミズ艦隊、デフォールド。ミリア機発進。「青い風」をのせたカプセルをうけとって、マクロスに向かう ]
ロリー: いよいよ潜入だな。
コンダ: これでまた「民間人」とやらに、お目にかかれるぞ。
ワレラ: ああ。

[ 戦闘ポッド内 ]
未沙: とっくにデフォールドしてるのよ、はやくしなさい!
輝: やっぱり鬼より恐いや。
未沙: なにかいった?
輝: ただの寝言ですよ。これだ!
[ 輝、レバーを操作する。奪ったリガートが起動、前方のゼントラーディ兵士たちが異変に気づく ]
未沙: 気づかれたわ。
輝: とうぜんでしょ。マックス!
マックス: 了解。
[ リガート、ビーム砲を撃ちはじめる ]
未沙: いいわ、その調子よ。
[ リガート、格納庫の壁を砲撃し、穴をあける。艦外に吸いだされてゆくリガート ]
輝: このやろ!
[ 輝はレバーを操作して、リガートの姿勢を安定させる ]
未沙: 戦場のようね。
柿崎: ここが太陽系ならいいんですけどねえ。
輝: ああ。
未沙: 通信機のぐあいは?
マックス: どうもそれが…。
[ ミンメイの歌う「私の彼はパイロット」が聴こえてくる ]
輝: こ、これは、ミンメイの!! ミンメイの歌だ!
マックス: ミンメイさんの!
柿崎: ってことは…、隊長!
未沙: マクロスが、マクロスがいるのね!

[ バルキリー隊とミリアの戦闘 ]
ミリア: これが監察軍より危険な敵とはな。手ごたえのない連中だ。
[ ミリア機、瞬時にバルキリー7機を撃墜 ]
フォッカー: どわっ! なんだ、いまのやつは…!
[ ミリア機、単独でマクロスに接近し、甲板のデストロイドを撃破。装甲をこじあけて、なかにカプセルをほうりこむ ]
青い風: やった〜!
ミリア: 第一空士長ミリアよりラプ・ラミズ司令へ。作戦完了、帰艦します。
ラプ・ラミズ: よろしい、よくやってくれた。こちらも戦線を離脱する。合流ポイントへ向かえ。

[ 戦闘ポッド内 ]
マックス: 中尉、軍用周波数キャッチしました。
未沙: これでほんとうに助かるのね。
輝: さあ、味方にやられる前に連絡を!
未沙: ええ! 応答願います。こちらマクロス・ブリッジ・オペレーター、早瀬未沙以下4名。[ 涙ぐむ ]敵戦闘ポッドを奪取し、漂流中。救援願います。
[ フォッカー機はじめ3機のバルキリーが、リガートをかかえてマクロスに向かう ]

[ マクロス市街地を駆けてゆく輝。その向かうさきに「娘娘」が見える ]

[ 次回予告 ]

ナレーター: もはや地球は、マクロスの目前にあった。そして、輝たちの持ち帰った情報の重要性を認識したグローバル艦長は、敵包囲網の突破を決意した。だが、そのときすでにマクロス艦内には、ゼントラーディのスパイが潜入していた。
次回、「超時空要塞マクロス」、「ブルー・ウインド」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(12)
リン・ミンメイ(12)
早瀬未沙(12)

ロイ・フォッカー(12)
マクシミリアン・ジーナス(マックス)(5)
柿崎速雄(5)

ボドル・ザー(2)
ブリタイ・クリダニク(11)
エキセドル・フォルモ(10)
ラプ・ラミズ(初)
ミリア・ファリーナ(初)
ワレラ・ナンテス(4)
ロリー・ドセル(4)
コンダ・ブロムコ(4)

ゼントラーディ兵士A - 独房の警護、セリフなし
ゼントラーディ兵士B - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士C - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士D - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士E - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士F - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士G - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士H(女) - ラプ・ラミズ艦
ゼントラーディ兵士I - ベカムリ220
ゼントラーディ兵士J(女) - ラプ・ラミズ艦

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スタッフ

脚本 … 富田祐弘
絵コンテ … 黒河影次
演出 … 秋山勝次
作画監督 … 平野俊弘
原画 … 今渡雄一郎 垣野内成美 小林明美
動画監督 … 藤高栄光 宮崎葉月
動画 … スタープロ アニメ・トロトロ

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ノート

ゼントラーディ軍第118基幹艦隊(ボドル基幹艦隊)直衛艦隊指揮官ラプ・ラミズと、ラプ・ラミズ艦隊所属第一空士長ミリア・ファリーナ(「エースのミリア」)が初登場。同時にゼントラーディ軍の女兵士もはじめて登場している。

未沙の真のヒロインぶりが印象的な回。ふだんのグルグル巻きになった髪がほどけると腰まであるとは、誰も予想できなかっただろう。しぐさにも、通常の毅然とした制服姿とは異なる、いわゆる女性的な雰囲気をただよわせる演出がなされている。

エンジン冷却水の池の前でかわされた輝と未沙の会話は、ふたりのはじめての個人的な接触といってよい。戦争の話からごく自然に私的な話題に移り、最後に共感で終わる形式はその後の第21話「ミクロ・コスモス」でも踏襲されている。

マイクローン装置初出。

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