第8話「ロンゲスト・バースデー」

セリフとト書き

[ オープニング ]

ナレーター: フォールド・システムを消失したマクロスは、通常推進機関による航行を余儀なくされた。しかし敵ゼントラーディの艦隊はマクロスのポジションを捕捉し、行く手を阻んだ。マクロスはたびかさなる攻撃を退けつつ、火星軌道の内側に入った。

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ブリタイ: やつらもなかなか根をあげん。
エキセドル: もう母星とは眼と鼻のところですから、意を強くしとるのでしょう。ちょっとばかり近づけさせすぎたのでは…。
ブリタイ: そうはさせん。母星を眼の前にして帰れんとなったら連中、どう動くか。
エキセドル: あせりますでしょうな。
ブリタイ: ただ心配なのは…。
エキセドル: カムジン・クラヴシェラ、ですな。
ブリタイ: んん…。

[ 輝、自室のベッドにすわって、ミンメイからもらったバースデー・パーティの招待状を手にとる ]
輝: 今日はミンメイの誕生日か。女の子って、なにプレゼントすりゃ喜ぶのかなあ。
士官A: [ 艦内放送 ]アテンション。これから読みあげる者は、統合作戦司令部まで出頭せよ。ジャスティン・ボーグナイン少尉、滝・ロスマン少尉、ヤン・ルー中尉…。
輝: 関係ないか。
士官A: [ 艦内放送 ]マルコス・マイヤー中尉、一条輝軍曹。
輝: なんだろう!?
[ 輝、部屋から出てゆく ]

[ カムジンの戦闘ポッド部隊 ]
オイグル: 師団長、いいんですかね、勝手に出撃しちゃって。
カムジン: これは飛行訓練なんだよ。その途中で敵と遭遇するってわけだ。
オイグル: なるほど〜! しかしブリタイのおやじ、怒りますぜ。
カムジン: ほっとけ! こんどはカムジン一家のやりかたでやらせてもらう。てめえの部隊はおとり役だ。ドジ踏むんじゃねえぞ!
オイグル: 了解! せいぜい派手にやりますわあ。[ 通信切れる ]
カムジン: ふん。

[ 輝、作戦司令部前に到着する。身を正してから ]
輝: 一条輝、入ります。
[ 部屋のなかには上官が勢ぞろいしている。末席にフォッカーもいる ]
輝: [ 驚く ]おおっ!
[ 女性士官が輝に近づく ]
士官B(女): こちらです。
輝: は、はい。
[ 輝、あつめられた軍人の末尾にならぶ ]
上官A: そろったようだね。でははじめよう。
[ 全員が立ちあがる ]
上官A: ここにあつまってもらった諸君は、火星での戦闘以来めざましい戦績をあげた者たちである。その功績によってここに、統合軍チタニウム章をさずけるものとする。
[ 輝、信じられないといったふうに自分の顔を指でさし、フォッカーを見る。フォッカー、ほほえんでいる ]
士官B(女): [ 咳ばらい ]あっ、んん。名前を呼ばれた者から前にすすみ出るように。ジャスティン・ボーグナイン少尉。
[ ボーグナイン、前に出てゆく ]
輝: 俺が…、受賞…。
[ ようやく実感のわいてきた輝、上官の手にある勲章を見て顔がほころんでゆく ]

[ 輝、右胸にチタニウム章をつけて歩いてゆく ]
フォッカー: 輝!
[ 輝、振りむく ]
フォッカー: ちょっと、俺の部屋に来い。
[ フォッカーと輝、フォッカーの部屋に入る ]
輝: なんすか、先輩。用って?
フォッカー: まあ、すわれ。
輝: はあ。
[ フォッカー、ポケットから箱を取りだして輝に投げる ]
フォッカー: 階級章だ。
輝: え…?
フォッカー: おまえは、今日から少尉だ。
輝: ん、しょ…。[ 箱をあける ]あっ!
フォッカー: その勲章と、つけかえろ。見せびらかして歩くもんじゃない。
輝: あ、はい。
[ 輝、チタニウム章と階級章をつけかえる ]
フォッカー: それから、部下もつけてやる。こいつらだ。
[ フォッカー、コンピュータのスイッチを入れて輝にデータを見せる ]
コンピュータ: 柿崎速雄。階級、伍長。シミュレーション、378時間。飛行時間、66時間。成績評定A。マクシミリアン・ジーナス。階級、伍長。シミュレーション、320時間。飛行時間、50時間。成績評定A。
輝: なんすか、こりゃあ。まるっきりヒヨッコじゃないですか!
フォッカー: 俺から見りゃ、おまえだって大差はないさ。
輝: ん…、だって。
フォッカー: ふたりのくわしい評定はここに入ってる。隊長心得もな。そこは俺の手製だ。よ〜く勉強しとけ。
[ ノックの音 ]
フォッカー: 来たか。入れ!
[ マックスと柿崎が部屋に入ってくる ]
マックス: おじゃまします。
フォッカー: きみたちの小隊長となる、一条少尉だ。チタニウム章をとった猛者だ。一条、かわいがってやれ。
柿崎: 光栄であります。俺…、いや自分は、柿崎速雄伍長であります。自分が来たからにはおまかせください! ふははは…。
マックス: おなじくマクシミリアン・ジーナスです。マックスとお呼びください。なにぶん未熟者ですので、以後よろしくご指導のほどを。
輝: あ、ああ、よろしく。なっ!
マックス: はい。
柿崎: はい。
輝: 先輩、俺ちょっと行かなきゃなんない用が…。
フォッカー: ああ、そうか。俺もあとから行く。
輝: 失礼します。
[ 部屋を出てゆこうとする輝を柿崎が呼びとめる ]
柿崎: 隊長!
輝: ん?
柿崎: われわれも、お供させていただいてよろしいでしょうか?
輝: [ 独白 ]ミンメイに、俺がえらくなったところ見せるのもいいな。[ 口に出して ]よしっ、行こう!
柿崎: ありがとうございます。さ、行きましょう。
[ 輝、マックス、柿崎、部屋から出てゆく ]
柿崎: ところで、どこ行くんです?
輝: まあ俺にまかせておけ。いいところへ連れてってやる。
マックス: それは楽しみですね。
柿崎: このところ出たくてウズウズしてたんですよ。
輝: そうか、まあついて来いよ。
柿崎: いいところですか? ふははは…。
輝: おう、もちろんいいところだよ。
フォッカー: やれやれ。メダカみたいに群れあつまって。まるで女学生だ。

[ マクロス・ブリッジ。女性士官が未沙に書類をとどける ]
未沙: ありがとう。
[ 未沙、書類に眼をとおす ]
未沙: ん? なによこれ!?
クローディア: なに?
未沙: 一条輝が小隊リーダーってどういうわけ!?
クローディア: 察するに、火星であなたを助けたことなんかで、昇進したんじゃないの? ふふふ。
未沙: あ〜あ。あんなヒヨッコが小隊長なんて、世も末だわ。

[ 輝、マックス、柿崎は連れだってマクロスの市街地を歩いている ]
柿崎: ふっははは。隊長、いいところってあそこでしょう。ふははは。ほら、例の…。ん〜、もう好きなんだから。
[ 柿崎、輝をひじでこづく ]
柿崎: ほ〜らここ、ここ。開店したばかりなんですよ、この店。はやくはやく!
[ スナックやキャバレーのならぶ通りに入ってゆく ]
輝: おまえ、なんか勘ちがいしてんじゃないのか?
マックス: ふっふふ…。
柿崎: えっ。あ、ちがうんですか? あ、待ってくださいよ。た、隊長!
マックス: きみはああいうところは、めっぽうくわしいようだね。
柿崎: ふっはは、もちろん! 軍人になるともてるからねえ。
輝: あのなあ、そういうことは、いちどぐらい出撃してからにするもんだぞ。
柿崎: [ 敬礼して ]はっ。も、もちろんであります。自分もはやく出撃したいと思っております。
[ サイレンを鳴らした車両が近づいてくる ]
柿崎: ん?
[ 軍用車が大破したデストロイドの残骸を運んでゆく ]
マックス: ああはなりたくありませんね。
柿崎: なあにこの俺がいれば絶対だいじょうぶだよ、はっははは…。
輝: まあ、気をぬかないことだ。しっかり俺について来い!
マックス: はい、隊長。
柿崎: はい、隊長。
輝: [ 得意になって ]んん、いい心がけだ。

[ 輝、マックス、柿崎は中華料理店「娘娘」の前にやって来る ]
柿崎: ここでありますか、いいところってのは?
輝: そうだ。
[ 輝たち、店内に入る ]
ミンメイ: 輝、遅かったじゃない。
輝: ミンメイ…。
[ ミンメイ、ふかいスリットの入ったチャイナ・ドレスで着かざっている ]
ミンメイ: んふ、どう? 輝。
[ 輝、赤くなる ]
輝: [ 咳ばらい ]ん、んんっ!
柿崎: いやあ、これはすばらしい。
[ 柿崎、ミンメイに近寄って握手をもとめる ]
ミンメイ: [ 驚いて ]なあに、この人?
輝: ああ、紹介するよ。俺の部下の…。
柿崎: 柿崎伍長であります。
ミンメイ: 部下って輝…。
輝: そっ、俺、昇進したんだ。
ミンメイ: へ〜え。
輝: それからこっちがジーナス伍長。
マックス: マクシミリアン・ジーナスです。
ミンメイ: わあ、ハンサム。
マックス: こちらこそ。こんな美しい方と、お近づきになれて光栄です。
ミンメイ: おっ上手ね! マクシミリアン…、えっと。
マックス: マックス、と呼んでください。
[ ミンメイ、マックスの腕をとって引っぱってゆく ]
ミンメイ: マックスさん、さあ、すわってちょうだい。
[ ミンメイが案内したテーブルのとなりに、町会長がいる ]
町会長: いやあ、輝ちゃん、輝ちゃん。
輝: こんにちは。
ミンメイ: 輝。
輝: ん?
[ ミンメイ、プレゼントを要求するように手を差しだしている ]
輝: 誕生日、おめでとう!
ミンメイ: ああ、わすれたんでしょう!
輝: わすれてなんかないよ。たださ、そっ、仕事から直接来ちゃったから、まだ部屋にあるんだよ。あとで…、ね?
ミンメイ: [ 不満そうに ]ふ〜ん!
町会長: ミンメイちゃん、あんまり輝ちゃんいじめたらかわいそうやで、へへへ。
輝: 町会長さん、輝ちゃん輝ちゃんって。俺、こんど小隊長に…。
町会長: それよりミンメイちゃん。なんぞ1曲、歌ってえな。あんたプロはだしやそうやないか。
ミンメイ: [ いじわるそうに ]輝、歌ってよ、プレゼントのかわりに。
町会長: お、そりゃいい、そないしよ。
輝: ん、いいよ俺…。
[ マックス、立ちあがって ]
マックス: それでは、隊長にかわりましてわたしが。
ミンメイ: わあ、ステキ!
町会長: [ 輝に耳うちして ]輝ちゃん。うかうかしてるとミンメイちゃんとられてしまうで。な、輝ちゃん、ほ〜、ほれ、ほれ。

[ マクロス・ブリッジ。未沙がモニタを見ている ]
未沙: ヘンねえ。
クローディア: どうかした?
[ クローディア、モニタに駆けよる ]
クローディア: なにもないじゃない。
未沙: そこがヘンなのよ。手ごたえっていうのかなあ、なんとなくレーダー波が乱れているような。もしかして…!
クローディア: 強力な、ジャミング。

[ カムジンの戦闘ポッド隊、接近してくる ]
カムジン: そろそろだな。ジャミング機さがれ! おとり部隊、思いっきりやってこい! 骨は俺がひろってやる。
[ リガート部隊が攻撃態勢に入る ]

[ アイキャッチ ]

[ 「娘娘」店内 ]
マックス: ね、おかしいでしょ?
ミンメイ: ほんとね。
柿崎: いやうまい、じつにうまい。
未沙: [ 艦内放送 ]アテンション! 全バルキリー戦闘要員、スクランブル。全バルキリー戦闘要員、スクランブル。
パイロットA: ようし!
[ 輝、黙もくと立ちあがって戦闘に向かおうとする ]
ミンメイ: 輝…。
輝: [ ミンメイに振りかえって ]ごめん。
ミンメイ: んん、もうっ!
町会長: これやから兵隊さんややにゃあ。
輝: タクシー!
[ 輝、マックス、柿崎、タクシーに乗りこむが、あとからほかのパイロットたちも乗りこんでくる ]
パイロットB: スクランブル、待て〜! おい、俺たちも乗せてくれよ、おい!
運転手A: お、押さないで。無理ですよ。
パイロットB: なあにだいじょうぶだ、さ、やってくれ!!
[ タクシー、走りだす ]
柿崎: 隊長、さっきのミンメイって子、シャンですな。隊長のコレですか?
[ 柿崎、小指をあげて見せる ]
輝: おまえ初陣なんだろ。どういう神経してるんだ。マックス、おまえだいじょうぶか?
マックス: はあ、緊張しています。
柿崎: マックス、こんどの戦闘はこの俺がいるかぎり千人力だぞ。ふははは…。
輝: はあ…、俺、自信なくなってきた、いて〜!
[ 輝、柿崎に押しつぶされる ]

[ バルキリー隊、発進 ]
未沙: こちらガンサイト1。ブラック中隊は第4ブロックの迎撃にあたれ。
パイロットC: 了解。
輝: マックス、柿崎、ついてこい!
マックス: 了解。
柿崎: 了解。
[ 輝ひきいるバーミリオン小隊、右方向に展開する ]
柿崎: われわれはどこを守るんでありますか?
輝: 最終防衛戦の第2ブロックだ。
柿崎: なんだ、どん尻ですか。あっちじゃもう派手にドンパチやってるってのに。
[ 前線の閃光が見える ]
輝: なにいってんだ。ほんとなら俺だって、向こうの組だったんだぞ。
柿崎: 隊長、なにか?
輝: なんでもない!
[ あらたにマクロスに接近するリガート部隊 ]
クローディア: 艦長、敵の数が多すぎます。
グローバル: ディフェンダーを艦外に配置。
[ デストロイド・ディフェンダー対空射撃開始 ]
クローディア: 第2ディフェンダー・チーム壊滅。
ヴァネッサ: 敵編隊、突っこんできます。
未沙: VA−102、3時上方から敵!
柿崎: 来た来た来た来た! 柿崎、目標確認。
[ 柿崎機、加速 ]
輝: 柿崎、むやみに出るな!
[ 柿崎機、リガートに背後をとられる ]
柿崎: うわあ、た、隊長! なんとかしてください。
輝: ばかやろう、だから単独で突っこむなっていったんだ!
[ 一条機、柿崎を追っていたリガートを撃墜する ]
柿崎: 助かりました。隊長、すんません。
[ マックス機、バトロイドへ変形して敵と戦っている ]
輝: マックス、なにやってんだ?
マックス: このほうが振りまわしやすいんです。
[ マックス機、見せ弾を撃って、敵が回避した方向にもういちど発砲し、リガートを撃破 ]
マックス: おとり撃ち。なんちゃって。ん、もう1回。
[ さらにリガート隊が攻撃してくるが、マックスはまたたく間に撃退 ]
輝: なんてやつだ。
未沙: 一条機! 動きがにぶいわよ。小隊長になったんでしょ、しっかりなさい![ 通信切れる ]
輝: てやんでいっ、小隊長になんかなったから苦労してるんじゃないか!

[ カムジン部隊 ]
カムジン: ふっふふ。そろそろだな。
ゼントラーディ兵士A: 師団長、ラミドのかかってるあたりがあまくなっとるようです。
カムジン: ようし、俺たちも行くか。おやじの鼻をあかしてやる。野郎ども、突撃だ!
[ カムジンひきいるリガート部隊がマクロスに接近 ]

[ バーミリオン小隊 ]
柿崎: 敵、発見。
[ バーミリオン小隊、カムジン部隊を迎撃。柿崎、ミサイルを発射するがすべてそれる ]
輝: 柿崎、ムダ弾は撃つな。
マックス: ムダ弾じゃなきゃいいんですね。
[ マックス、レーザー機銃でリガートを撃墜 ]
マックス: あたりました、隊長。
輝: ようし、撃ちながら追うんだ。
[ カムジン部隊、マクロスに取りつく ]
カムジン: ここまで来ればこっちのもんだ。ぞんぶんに暴れろ!
[ バーミリオン小隊、バトロイドに変形してマクロスに降りたつ ]
柿崎: 格闘戦ならお手のもんだ。やったるで! うわあ!
[ 柿崎機、背後から銃撃をうけて被弾する ]
輝: 柿崎!
[ 一条機、柿崎機に駆けよる ]
柿崎: な、なんとか生きております。
輝: [ 柿崎をなぐさめて ]ふう。マクロスの上じゃ、やりにくいな。

[ 一条機、カムジンのグラージと遭遇する ]
輝: ああっ!
[ 輝、カムジンの一騎打ち ]
カムジン: この青二才が!
輝: うわあああ!
[ 勝負は相撃ち。一条機、頭部に被弾、左腕をもぎとられ、おなじく左腕をうしなったグラージと対峙する ]
カムジン: やってくれるじゃないか。
輝: さきに動けば、やられる…!

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ブリタイ: カムジンのやつ案の定だ。しおらしく訓練だと? おかしいと思ったわ。
エキセドル: 帰らせますか?
ブリタイ: とうぜんだ。
エキセドル: 意外とうまくいっておるようですが。
ブリタイ: ゼントラーディ全軍の規律にかかわる。攻撃ビーム通信用意!
エキセドル: これは派手なことを。
ブリタイ: 通信機が壊れたなどといいわけはさせん。
ゼントラーディ兵士B: 攻撃ビーム通信、準備完了。通信内容はいかがいたします?
ブリタイ: 即時帰艦命令だ。拒否するようなら、送りかえすといってやれ。
[ ブリタイ艦の艦首から攻撃ビーム通信発射 ]
カムジン: もうひと息だってのにおやじの野郎! ええい、引きあげだ!
[ カムジン部隊、退却する ]
輝: ふう。

[ マクロス・ブリッジ ]
未沙: どうしてでしょう? もう終わりだと思ったのに。
グローバル: 向こうにもなにか複雑な事情があるんだろう。なんにしても救われたな。
未沙: ええ。[ ほほえむ ]

[ マクロス艦内のラウンジ。柿崎、頭に包帯と左頬に絆創膏をしている ]
柿崎: いやあ、まいったまいった。機体をお釈迦にしちまった。給料から引かれたらどうしよう。
輝: マックスはよくやったな!
マックス: ええ、幸運でした。7機も落とせたし。
柿崎: 7機! 俺なんかゼロだ。いやあ、おまえは天才だよ、天才。[ 輝に ]ねっ!
輝: ああ、そうだな。あんなやりかた、並のやつはやらない。
柿崎: ところで隊長は?
輝: 4機。
柿崎: ああ俺、邪魔しちゃったから。ふつうならマックスより多いんでしょう?
輝: さあな。[ マックスの様子を見て ]ん?
[ マックス、遠い眼をしている ]
マックス: 僕って天才だったのか。そうか、天才なのか。知らなかったあ。[ にやける ]
[ 輝、柿崎、呆気にとられて ]
輝: んん?
柿崎: なんだ!?

[ 軍の宿舎 ]
マックス: それじゃ隊長、おやすみなさい。
輝: おやすみ。柿崎、養生しろよ。
柿崎: なあにこれしき! では。
[ マックスと柿崎、敬礼する ]
輝: [ 敬礼 ]よしっ!
[ マックスと柿崎、去ってゆく ]
輝: あ〜あ、なんで小隊長なんかに選ばれたのかなあ。命令されるだけのほうが、気楽でよかった。
[ 輝、部屋の前できゅうにミンメイの誕生日のことを思いだす ]
輝: いけね!

[ 夜の市街地を走る輝。宝石店のショーウィンドーをながめて ]
輝: はあ、はあ、はあ…。はあ。やっぱり閉店か。どうするか。
[ 輝、「娘娘」前で逡巡している。3階のミンメイの部屋の窓を見あげる。ぐうぜん窓ぎわにミンメイがあらわれ、カーテンを閉めようとして輝に気づく。ミンメイ、窓をあける ]
ミンメイ: なにやってんの、輝!?
輝: ミンメイ、今日はごめん!
ミンメイ: しかたないわよね。輝は軍人なんだもん。
輝: それで、プレゼントなんだけど…。
[ 輝、なにか適当なものはないか身体のあちこちをさわって、ポケットにチタニウム章を見つける ]
輝: あ、うん?
ミンメイ: まあ、わすれないで持ってきてくれたのね。ありがとう!
輝: [ すこし考えてから ]そうなんだ。これが、プレゼントさ。ほらっ!
[ 輝、勲章の入ったケースをミンメイに投げる ]
ミンメイ: よいっしょ。[ うけとる ]
[ ミンメイ、ケースをあける。なかにはチタニウム章が輝いている ]
ミンメイ: うわあ、きれいなんだ! ほんとうにこれ、くれるの?
輝: うん。
ミンメイ: ありがとう、輝!
[ ミンメイ、輝に投げキッスする。輝、照れて頭をかく ]
ミンメイ叔父: [ 遠くから声のみ ]ミンメイ、誰かいるのかな?
輝: それじゃミンメイ、誕生日おめでとう!
[ ミンメイ、満面の笑み。輝は走りさる ]

ナレーター: 一条輝にとって思いがけず手にした勲章よりも、ミンメイの喜ぶ顔が、そして自分がその笑顔をあたえたことのほうがうれしかった。いま、マクロスの航海は、すでに8ヶ月におよぼうとしている。

[ 次回予告 ]

ナレーター: マクロス艦内テレビ局開局を記念して、「ミス・マクロス・コンテスト」が催されることになった。ミンメイも候補者のひとりである。折もおり、そこへゼントラーディの偵察機が飛来。輝はコンテストのなりゆきを気にしつつ、迎撃に飛びたつ。
次回、「超時空要塞マクロス」、「ミス・マクロス」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(8)
リン・ミンメイ(8)
早瀬未沙(8)

ブルーノ・J.グローバル(8)
クローディア・ラサール(8)
ロイ・フォッカー(8)
マクシミリアン・ジーナス(マックス)(初)
柿崎速雄(初)
ヴァネッサ・レイアード(8)

ブリタイ・クリダニク(7)
エキセドル・フォルモ(6)
カムジン・クラヴシェラ(2)
オイグル(2)

町会長(6)
ミンメイ叔父(リン・シャオチン)(6)
ミンメイ叔母(リン・フェイチュン)(5) - セリフなし

運転手A - タクシー
士官A - マクロス艦内放送
ジャスティン・ボーグナイン - チタニウム勲章受章者
滝・ロスマン - チタニウム勲章受章者
ヤン・ルー - チタニウム勲章受章者
マルコス・マイヤー - チタニウム勲章受章者
士官B(女) - チタニウム章授与式
上官A - チタニウム章授与式
パイロットA - バルキリー
パイロットB - バルキリー
パイロットC - バルキリー・ブラック中隊長
ラミド - カムジン一家(セリフ中のみ登場)
ゼントラーディ兵士A - カムジン一家
ゼントラーディ兵士B - ブリタイ艦

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スタッフ

脚本 … 松崎健一
絵コンテ … 山田太郎
演出 … 圓出漫
メカ作監 … 板野一郎
キャラ作監 … 鈴木英二
原画 … 丸山政治 スタープロ
動画作監 … 藤高栄光 宮崎葉月
動画 … アニメ・トロトロ スタープロ

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ノート

マックス、柿崎が初登場。輝は少尉に昇進し、マックス、柿崎という部下をあたえられてバーミリオン小隊長に就任する。

マクロスのブリッジ・クルーのうちキムとシャミーのみが、第1話「ブービー・トラップ」以来はじめて登場しない。

輝がミンメイにプレゼントしたチタニウム章は、2年後の第29話「ロンリー・ソング」において、さびしさをつのらせたミンメイが巡業から「娘娘」にひと晩だけもどり、自分の部屋で輝のことを思いだす場面の小道具として使われている。

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