第6話「ダイダロス・アタック」

セリフとト書き

[ オープニング ]

ナレーター: 進宙式直前のマクロスが、とつぜんフォールド効果により冥王星軌道へ瞬間移動して2ヶ月が過ぎた。いまマクロスは、地球へ向けてひた走っている。途中、ゼントラーディ軍の攻撃をトランス・フォーメーションにより撃退したが、このマクロス艦変形のため、避難住民にも大きな被害を出してしまった。しかし、人びとは艦内の街を修復し、つかの間の平和がふたたび街にもどってきた。
[ 輝の訓練の様子 ]
一方、軍に志願、入隊した一条輝は新入隊員としてきびしい訓練に耐えていた。そして、はじめての休暇の日…。

[ 輝とミンメイ、街を歩いている。輝は買いもの袋を持っている ]
ミンメイ: ねえ、わたし持つわ。
輝: いいよ。
ミンメイ: かっこ悪いよ。
輝: どうせね、僕なんかね。
ミンメイ: ごめんね。
[ ミンメイ、ショーウィンドに眼をとめて ]
ミンメイ: うわあ、ステキ! ちょっと待ってて。
輝: ん?
ミンメイ: 一緒に見てくれない?
輝: ええ!? 俺も店に?
ミンメイ: じゃあどうすんのよ。
輝: しょうがねえな。
[ ピンクとブルーのワンピースを持って、試着室に入ろうとする ]
ミンメイ: のぞくなよ。[ いたずらっぽく笑う ]
輝: うう、ぐっ!
店員A: まあ、おほほほ…。
[ 輝、動揺した拍子に買いもの袋から物を落として散らかしてしまう ]
輝: うわあ、ととと…。
[ 店に私服の未沙、キム、シャミーが入ってくる ]
店員A: いらっしゃいませ〜。
シャミー: いらっしゃいました。
キム: あの〜、ランジェリー・コーナーはどちらでしょうか?
店員A: はい、あのこちらにございます。
[ 輝、散らばった品物をひろいあつめている ]
輝: あ〜ん、しょうがねえな、もう。[ ふと顔をあげて ]んん?
[ 未沙、キム、シャミーが下着をえらんでいる ]
シャミー: うわ〜、これかわいい。ねえ、どう?
キム: ああ、いいんじゃない。
シャミー: [ 輝に気づいて ]あっ!
キム: あっ!
輝: うっ、うっ、あっ…。
[ 輝、その場から立ちさろうとしたときに、また袋から物を落としてしまう ]
未沙: またにしましょう。
キム: ええ?
輝: [ 品物をひろいあつめながら ]んん。あ〜あ。
店員A: あの、またどうぞ、よろしくお願いいたします。
[ ミンメイ、試着室からピンクのワンピースを着て出てくる ]
ミンメイ: 輝、どう?
[ 輝がいない。ミンメイ、見まわすと床にはいつくばっている輝を見つける ]
ミンメイ: なにやってんの?
輝: [ 品物をひろいながら ]ええ!? ああ、とってもよく似あうと思うよ。
ミンメイ: [ あきれて ]んん!

[ マクロスのフォールド・システム室。空間にキラキラとなにかが輝いている。スタッフがとりかこんでそれを見物している。部屋にグローバル艦長が入ってくる ]
グローバル: これかね、異常なエネルギー反応とは?
技師長: はい、艦長。見たこともない現象です。
グローバル: ここは以前、フォールド・システムのあったところだな。なにか関係があるのか?
技師長: はあ、おそらくフォールド・システムが消滅したときの影響で、時空連続帯にひずみを生じているものと思われます。
グローバル: ほう…。で、各機関への支障は?
技師長: いまのところ、ありません。
グローバル: よろしい。こんごとも調査をすすめるように。
[ 技師長、立ちさろうとしたグローバル艦長を呼びとめて ]
技師長: 艦長。
グローバル: ん?
技師長: このエネルギーの性質を利用すれば、バリアとして使えるのではないかと思われますが…。
グローバル: そんな性質があるのか。
技師長: はい。
グローバル: よしっ! すぐ開発をすすめてくれたまえ。
技師長: はいっ! [ 敬礼 ]

[ ブリタイ艦ブリッジ。ブリタイとエキセドル、モニタでマクロスのトランス・フォーメーションのシミュレーションを見ている ]
エキセドル: ふ〜ん…。
ブリタイ: どうだ、答えは出たか?
エキセドル: どうも…。あらゆる分析を試みましたが、なぜにこのような型に変形する必要があるのか一向に…。ただ…。
ブリタイ: ん?
エキセドル: このタイプに変形しますと、重力制御が不調となる様子で、極端に速度がにぶくなります。
ゼントラーディ兵士A: プレイバックしますか?
ブリタイ: もうよい。もとの映像にもどしてくれ。
ゼントラーディ兵士A: はっ。
[ マクロスの前方にリングをそなえた惑星が見える ]
ブリタイ: あの星は?
エキセドル: この星系の第5惑星です。やつらこの第5惑星にまぎれこもうというのでしょう。
ブリタイ: ふむ、ありうるな。
[ モニタに土星の拡大画面がうつる ]
エキセドル: あのリング内でECM(Electronic Counter Measures / 電子対抗手段)をかけられますと、所在ポイントを探知できなくなります。
ブリタイ: あまりにもとうぜんの策といえるな。
エキセドル: いかがいたしましょう。
ブリタイ: やつらの思いどおりにさせてやれ。第5惑星に誘いこめば、かえって袋のネズミ同然となる。

[ 輝とミンメイ、中華料理店「娘娘」に到着する ]
ミンメイ: 叔父さ〜ん! 叔母さ〜ん!
ミンメイ叔母: [ 店から出てきて ]どうしたの、ミンメイ?
ミンメイ: ほら、輝がもどってきたのよ。
ミンメイ叔母: ええ!?
ミンメイ叔父: ほう!
輝: 1ヶ月ぶりのごぶさたです。

[ 「娘娘」店内 ]
ミンメイ叔母: まあ、気のせいか、たくましくなったようね。
輝: いやあ。
町会長: きびしい訓練をうけとんのやろう?
ミンメイ: [ 輝の手をとって ]おすわんなさいよ。叔母さんたちも、輝は見せものじゃないのよ。
[ ミンメイ、輝を席にすわらせる ]
輝: 繁盛しているみたいですね。
[ ミンメイ叔父、食べものと飲みものを運んでくる ]
ミンメイ叔父: たいしたことないな。さっ、熱いうちに食べるな。
[ フォッカーが入ってくる ]
フォッカー: 輝、ここにいたかあ。[ 駆けよって ]まもなく、出撃命令が出るぞ。宿舎にもどれ。
輝: お、俺、もう出撃ですか?
フォッカー: そうよお。いま命令が出た。新入隊員のなかで5人が正式に実戦部隊配属だ。おまえもそのひとりだ。
輝: ええ〜。
ミンメイ: うわあ、おめでとう、輝!
輝: ん、ん、お、俺…。
フォッカー: さ、グズグズするな。はやく来い!
[ フォッカー、輝の手を引っぱって連れてゆく ]
輝: うわっ、た。それじゃみなさん、また…。
ミンメイ: がんばってね!
ミンメイ叔母: [ 呆気にとられて見おくる ]あ、ああ…。

[ フォッカーと輝、軍宿舎の前を歩いている ]
フォッカー: 今日から、おまえも一人前の軍人だ。宿舎も、いままでの雑居部屋から個室になる。
輝: へえ。
フォッカー: ただし、個室になったからなおさらのこと、不謹慎な行動は慎むように。いいな。
輝: 先輩とはちがいますよ。
フォッカー: [ 前から来る未沙たちに気づいて ]お…!
[ フォッカー、敬礼する。私服の未沙、ヴァネッサ、キム、シャミーが敬礼して立っている ]
輝: ん、ああ! [ 下着売場で会ったことを思いだす ]
[ 未沙も気づく ]
未沙: あなたは…!
輝: あ、ああ…。
フォッカー: なんだ、早瀬中尉を知ってるのか。
輝: え、ええ、まあいろいろと。
キム: やだあ、この人。
シャミー: わあ、ミスター・ランジェリー。
ヴァネッサ: なに、どうしたの?
キム: [ ヴァネッサにこっそりと ]あのね、ランジェリー・ショップにいたの。
ヴァネッサ: ええ、うそ〜!!
未沙: フォッカー少佐。あなたの後輩で、優秀な新入隊員ってこの人ですか?
フォッカー: そのとおり。
輝: [ 敬礼して ]一条輝です。
未沙: [ 敬礼して ]わたしは早瀬未沙。一条輝…、どっかで聞いたことのある名前ねえ。
輝: [ 思いだす ]ああっ!
未沙: [ 気づく ]あっ!
[ 回想 ]
未沙: これがその民間人ですか。どうりでなにも知らないわけねえ。
輝: なんです、このおばさん!
未沙: おば…!
フォッカー: ふははは。早瀬中尉も輝から見ればただのおばさんかあ。ふっふふふ。
[ 回想終わり ]
未沙: あのときの民間人ね!
輝: あんときのおばさん!
未沙: [ 怒る ]ん、まあ!
輝: うわっ、失礼しました!
フォッカー: これからは上官なんだから、言葉にはせいぜい気をつけろよ。
輝: ん、はいっ! [ 敬礼 ]
未沙: こんごともよろしくお願いするわ。
[ 未沙、輝の横をとおりすぎるが、立ちどまって ]
未沙: [ 皮肉なふうに ]ところで、どんな事情か知らないけど、男の人があのような店に出入りするのはあまり好ましくないわね。失礼。
[ 輝、顔を赤らめる ]
シャミー: エッチ!
輝: ええうっ! [ ため息 ]ふう〜。

[ 土星に接近するマクロス ]
未沙: 艦長、電子妨害装置を作動させました。しばらくは敵艦に所在地を知られないと思います。こんごの対策は?
グローバル: 奇襲をかける。
未沙: 奇襲!?
クローディア: 奇襲?
未沙: 艦長!
グローバル: 土星をぬければどうせまた追われる身だ。思いきって奇襲をかけ、活路をひらいてみたいのだ。
クローディア: でも艦長…。
グローバル: 危険は承知の上だ。
クローディア: わかりました。斉動をかけて、臨戦態勢に入ります。
グローバル: うむ!
[ グローバル、背の低いブリッジ出口の天井に額をぶつける ]
グローバル: んん、いってえ…。
クローディア: はあ…。
未沙: ああ…。

[ 奇襲作戦に参加するバルキリーのパイロットたちが一堂にあつめられている。輝もそのなかのひとり ]
上官A: 明日、われわれは敵艦が土星リングに入りしだい、ただちに奇襲をかけることになった。いまさらわたしはなにもいえん。ただ、きみたちのパイロット魂を見せてほしい。それだけだ。会っておきたい者がいたら、今夜のうちに別れを惜しんでこい。以上だ。

[ 輝、夜の公園にいる。走ってくる足音が近づいてくる ]
輝: ん?
ミンメイ: はあ、はあ、はあ、ごめん、はあ。待った?
輝: べつに。
ミンメイ: ねえ、急用っていったいなに?
輝: 明日の朝、出撃することになった。
ミンメイ: へえ、ほんと! 軍人になってはじめてのお仕事ね。
輝: ミンメイ…。
ミンメイ: あなたは優秀なパイロットだもん。きっと立派にやれるって、みんなで噂してんだから! [ 輝の浮かない顔を見て ]どうしたの?
輝: いや、べつに…。
[ 公園の噴水にライトがついて、水が吹きあがる ]
ミンメイ: うわあ。
[ ミンメイ、着ているピンクのワンピースを示して ]
ミンメイ: ねえ輝、これ?
輝: へえ、女の子みたいだ。
ミンメイ: ふ〜んだ。せっかく一緒に買った服、着てきたのに!
輝: ん、ごめんごめん。よく似あうよ。
ミンメイ: ほんとう?
輝: ああ。
ミンメイ: あはっ、よかった!
輝: 記念写真、撮っとこうか?
ミンメイ: ん、わたし、写真うつり悪いから…。
輝: そんなことないさ。さあ、こっちへ来て。
[ 噴水の前に立つ輝とミンメイ。輝はカメラ・ロボットを呼ぶ ]
輝: カメラ!
[ 草むらからカメラ・ロボットが出てきて、輝の前に来る。輝、料金を入れる ]
輝: さあ、ならんで。
ミンメイ: ええ。
[ ミンメイ、笑って輝の横にならぶが、やがて輝の腕をとって組む。シャッターが落ちて、ロボットから写真が出てくる ]
ミンメイ: まあまあね。
輝: よく撮れてるよ。
[ ミンメイ、腕時計を見る ]
ミンメイ: わたし、そろそろ帰んなくちゃ。男の人とふたりきりであんまり長くいると、叔父さんたちが心配するのよ。
輝: そう。
ミンメイ: ええ。じゃ、気をつけてね。もっとお話ししたいけど、明日はがんばってね。[ 走りさりながら ]またね、バイバイ!
輝: [ 独白 ]バ〜イ。俺、明日になったら、もういないかもしれないんだよ、ミンメイ。
[ 輝、写真を見る ]

[ マクロス・ブリッジ。モニタ越しに技師長が報告する ]
技師長: 艦長、バリア・システム作動可能です。
グローバル: おお、そうか!
技師長: しかし、マクロス全体を覆うエネルギー用量をどうしても得られません。
グローバル: そうか、マクロスはたしかに大きすぎる。限界があるか…。
技師長: 艦長、苦肉の策です。ごらんください。
[ モニタにマクロスの図が示される ]
技師長: 敵の攻撃にそなえて、このようにバリアをはります。万一、敵が弱点を襲ってきたときには、バリアを移動して防ぎます。
グローバル: なるほど。
技師長: この操作は、バリア・システム班が担当します。以後、これを「ピンポイント・バリア」と呼んでください。
グローバル: ん、よくやってくれた。
[ クローディアとキムが、グローバルの背後からモニタを見ている ]
クローディア: [ あきれて ]せこいバリア。

[ 軍の宿舎12号棟。フォッカーが輝の部屋のドアをノックする ]
輝: どうぞ。
フォッカー: やっぱりまだ起きていたか。
輝: 先輩。
フォッカー: 明日ははやいんだぞ。
輝: でも…。
フォッカー: 興奮するのはわかるがな、ヒツジの数でも数えてはやく寝ろ。
[ フォッカー、ドアを閉める ]
フォッカー: [ ドアの外でつぶやく ]はじめての出撃だ。無理はないが、戦いに出るまで時間があるだけ、つらいところだな。
[ 眼を閉じる輝。脳裏に、巨人のゼントラーディ兵士の姿がよぎる。眼をあけて、写真立てを見る。ミンメイとふたりで、公園の噴水前で撮った写真が入っている ]
輝: ミンメイ、眠れないよ。

[ アイキャッチ ]

未沙: [ 艦内放送 ]バルキリー隊に告ぐ。奇襲作戦は、カッシーニ空域において遂行する。各部隊を7班に編成し、氷塊のなかで待機せよ。繰りかえす。奇襲作戦はカッシーニ空域において遂行する。
[ 輝、部屋から出てフォッカーに敬礼する ]
フォッカー: よく寝たか?
輝: ええ、ちょっと。
フォッカー: 俺もな、はじめてのときはおなじだった。まあひと晩ぐらい眠らなくっても死にゃあせんよ。
輝: 先輩。
未沙: [ 艦内放送 ]バルキリー隊各隊は、空母プロメテウス艦内で人員点呼、確認を急げ。
[ 走る輝。バルキリー発進準備 ]
フォッカー: バルキリー・スカル大隊、発進!
[ フォッカー機、発進 ]
輝: バルキリー…ん、んん! バルキリー・スカル大隊23番機、一条輝、発進します!
未沙: 了解。
[ VF−1Jバルキリー(一条機)発進。各機がぞくぞくと飛びたってゆく ]
未沙: [ 通信 ]オレンジ、パープル、ローズのバルキリー各中隊は、前方のリングをぬけ、カッシーニ空域R−18ポイントに移動。敵艦を主砲軸線上に誘いだせ。
[ バルキリー隊が氷塊のなかを飛行する ]
輝: [ 独白 ]なんでみんな、あんなあぶなっかしい飛びかたをするんだ?
[ 一条機、氷塊の外を飛んでいる ]
未沙: スカル23番機、なんて飛びかたするの! あなたミーティングでなに聞いてたの。そんな派手な飛びかたじゃ、敵に見つけてくれっていわんばかりじゃないの! ここはアクロバット会場じゃないのよ。
輝: だって、みんなあぶなっかしい飛びかたしてるから、俺…。
未沙: [ 怒る ]だまって指示にしたがいなさい!
輝: んん! わかりましたよっ!
未沙: 上官に向かってその態度はなに? まわりを見なさい。横着してるのはあなただけよ!
輝: ううん、了解、了解。
[ 輝、氷塊に入る ]
輝: 思ったよりむずかしいもんだよ、こりゃ。
フォッカー: スカル・リーダーより各機へ。これより、惑星の影のゾーンに突入する。氷に気をつけろ。計器に気をくばれ!
輝: 影のゾーンて、あれか。
[ 一条機、影のゾーンに入ると暗闇でなにも見えなくなる。とつぜん巨大な氷塊が眼の前にあらわれる ]
輝: うわあ!
未沙: スカル23番機、スピードが落ちてるようだけど。
輝: ん、そんなこといわれても、なにも見えないんだもの。
未沙: あら、さっきの勢いはどうしたの?
輝: [ 勘にさわる ]んん、ちっ、自分たちだけ安全なところにいるおばさんなんかに、なんで指示されなくちゃなんないんだ?
未沙: はっ…。
クローディア: [ 未沙に ]作戦前だってのに、上官の悪口は慎んでもらいたいものよねえ。
未沙: いいんです、気にしてませんから…。
グローバル: 早瀬くん。バルキリー隊が所定の位置につくまでどのくらいだ。
未沙: あと5分ほどの予定です。
グローバル: よしっ! 敵艦がリングに進入した直後に主砲を撃つ。発射態勢に移ってくれ。
クローディア: 了解。
[ マクロスの主砲が前方に向けて稼働する。マクロス、降下して土星リングの氷塊に身を隠す ]

[ ブリタイ艦ブリッジ。モニタにゼリル艦長が映しだされる ]
ゼリル: お呼びですか、ブリタイ司令官殿。
ブリタイ: ゼリル艦長。第5惑星内に入りこみ、艦を捕獲してほしい。
ゼリル: はっ!
ブリタイ: できれば無傷でな。
ゼリル: わかりました。

[ ゼリル艦、砲撃開始 ]
フォッカー: 来たぞ!
[ 一条機の近くで爆発が起きる ]
輝: うわあ!
フォッカー: 攻撃開始!
[ 惑星の影のゾーンから出てきたバルキリー隊が、奇襲を敢行 ]

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
エキセドル: んんん、微弱な戦力で攻撃を仕掛けてくるとは! やつら、あまりにも戦闘を知らなさすぎます。
ブリタイ: われわれがあの艦隊を手に入れるため、手加減していることを知らぬとみえる。この際だ、われわれの恐ろしさを徹底的に教えてやれ!

[ ゼリル艦からリガート部隊が発進し、バルキリー隊と交戦 ]
ヴァネッサ: 敵艦、主砲右エリアに接近中。敵艦捕捉。
グローバル: いいぞ、艦を浮上させろ。主砲発射だ!
[ 氷塊からマクロスが浮上、主砲をかまえる ]
ゼントラーディ兵士B: 敵艦です。
ゼリル: んん。

クローディア: 主砲発射します。
[ 主砲が作動しない ]
クローディア: どうしたの?
乗組員A: 主砲が発射できません。ピンポイント・バリア・システムを接続した際に、なにかしらの支障を起こした模様です。
グローバル: なんてことだ…。

[ ピンポイント・バリア室 ]
クローディア: [ 通信 ]ミサイル接近。ピンポイント・バリア展開。
[ バリア・システム班の3名がうなずく ]
パナップ: はいっ!
ポッキー: はいっ!
メイ: はいっ!
[ マクロス船体にちいさな円形バリアが3つあらわれる。バリアはオペレータの操作により自由に移動できる。敵ミサイルが接近するが、着弾点にピンポイント・バリアがまわりこみ被弾しない ]
パナップ: ああん、間にあわない!
ポッキー: いやあ、横から襲っちゃいや、前から来て〜!
ゼリル: な、なんだあれは!? くそお、小馬鹿にしおって!
[ さらに敵の攻撃がつづく ]
メイ: や〜ん、そっちはダメえ。
クローディア: 完全に包囲されました。
グローバル: ううう…。
未沙: 艦長、バルキリー・グリーン、ブラウン中隊全滅。ローズ中隊もかなりの打撃をこうむっています。
グローバル: 頼りはスカル隊のみか…!
[ フォッカー機の背後にせまるリガート2機を一条機が撃墜する ]
フォッカー: 輝、ありがとよ!
輝: 先輩、なぜマクロスは主砲を撃たないんですか!?
グローバル: もはやこれまでか…。
未沙: 艦長、ピンポイント・バリアのエネルギーをダイダロスの艦首に集中することは可能でしょうか?
グローバル: できると思うが。
未沙: やってください! あたしに考えがあります。
グローバル: よろしい、まかせよう。
未沙: キムにシャミー、デストロイドをダイダロスの艦首に、大急ぎであつめて。
キム: はい。
シャミー: はい。
未沙: クローディア、マクロスを敵艦に突撃させて。
クローディア: わかった。

[ 一条機がミサイルの爆発でバランスをくずし、落下する ]
輝: うわあああ!
[ 輝、ゼリル艦に墜落寸前にバトロイドに変形して難をのがれる ]
輝: うわった、いててて…。
[ 一条機、あとずさりした拍子に敵艦のエアロックのなかに落ちる ]
輝: エアロックだ。
[ 一条機、立ちあがり2、3歩進む ]
輝: うわっあああ…。
[ 出会いがしらにゼントラーディ兵士と遭遇する。相手も恐怖で顔が蒼白になっている ]
ゼントラーディ兵士C: あああ…。
輝: うう、ああ…。

ゼントラーディ兵士D: 敵艦が突っこんできます。
ゼリル: 撃てっ! 撃ちまくれ!
[ マクロス、敵艦に接近する ]
未沙: ダイダロス…、アタック!
[ マクロス、右舷の強襲揚陸艦ダイダロスの艦首にピンポイント・バリアをはり、敵艦艦首に突っこませる。ダイダロスは敵艦の装甲をつき破り、司令室まで到達する ]
ゼリル: なんだ!?
[ ダイダロスの船首部がひらくと、なかにはデストロイド・トマホーク、およびデストロイド・モンスターが配置されている ]
ゼリル: ああっ!!
[ デストロイド隊、ミサイル一斉射撃 ]
ゼリル: ぎゃ〜!!
ゼントラーディ兵士E: うわ〜!
[ 輝と対峙していたゼントラーディ兵士も爆発に巻きこまれる ]
ゼントラーディ兵士C: うわあ!
[ ゼリル艦が内部から破壊されてゆく。輝、エアロックから脱出 ]
輝: [ ダイダロス・アタックを見て ]うわ、こ、これはいったい!?
[ マクロス、ダイダロスを引きぬいて待避。ゼリル艦爆発、撃沈 ]

[ マクロス・ブリッジ ]
クローディア: [ 未沙の肩に手をおいて ]やったね。
未沙: ええ。
キム: すっごいわあ!
ヴァネッサ: ダイダロス・アタック。
シャミー: ファンになっちゃいそう!
[ グローバル艦長、無言で2、3度ふかくうなずく ]

[ ブリタイ艦ブリッジ ]
ブリタイ: 増援部隊を呼ばねばならぬな。
エキセドル: は、はい。

ナレーター: 母艦を撃破され、戦意を喪失した敵の戦闘ポッド群は、またたく間に掃討されてしまった。もちろんフォッカーをはじめ、輝たちが活躍したことはいうまでもない。しかし輝の脳裏からは、あの敵兵士の恐怖の顔がどうしても消えさらなかった。あのとき輝は生身の人間にたいして、どうしても銃の引き金をひけなかったのだ。フォッカー先輩も最初はそうだったというだろう。戦闘機どうしの戦いでは、平然と引き金をひける自分。輝は心の片隅が、徐々にではあるが乾いてきているのを感じていた。

[ 次回予告 ]

ナレーター: 火星。そこには統合戦争の折に見すてられた、宇宙基地があった。マクロスは補給物資をもとめて、火星に進路を向けた。そしてそこは、未沙のあわい思いをこめた地でもあった。
次回、「超時空要塞マクロス」、「バイバイ・マルス」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(6)
リン・ミンメイ(6)
早瀬未沙(6)

ブルーノ・J.グローバル(6)
クローディア・ラサール(6)
ロイ・フォッカー(6)
ヴァネッサ・レイアード(6)
キム・キャビロフ(6)
シャミー・ミリオム(6)

技師長(2)
パナップ(初) - バリア・システム班
ポッキー(初) - バリア・システム班
メイ(初) - バリア・システム班

ブリタイ・クリダニク(5)
エキセドル・フォルモ(4)
ゼリル(初)

町会長(5)
ミンメイ叔父(リン・シャオチン)(5)
ミンメイ叔母(リン・フェイチュン)(4)
よっちゃん(5) - セリフなし

男A - 町会長の相棒役
店員A - 洋品店
上官A - バルキリー隊員に奇襲作戦遂行を告げる
乗組員A - マクロス
ゼントラーディ兵士A - ブリタイ艦
ゼントラーディ兵士B - ゼリル艦
ゼントラーディ兵士C - ゼリル艦内で出会いがしらに輝と対峙する
ゼントラーディ兵士D - ゼリル艦
ゼントラーディ兵士E - ゼリル艦

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スタッフ

脚本 … 富田祐弘
絵コンテ … 石黒昇
演出 … 高山文彦
メカ作監 … 板野一郎
キャラ作監 … 美樹本晴彦
原画 … 栫 裕 山崎茂 門上洋子 島田英明 坂田筆男
動画 … 内田義弘 森川定美 梅沢千秋 志村芳子 渡辺麻由美

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ノート

「ピンポイント・バリア」、「ダイダロス・アタック」初出。とくに敵戦艦に強襲揚陸艦ダイダロスを突撃させ、装甲をつらぬいた上で、艦首からデストロイド部隊がミサイルを一斉射撃、敵艦内部から破壊するダイダロス・アタックはきわめてダイナミックな攻撃であり、見る者を驚かせる。

輝の初陣。フォッカーがひきいるVF−1バルキリー・スカル大隊に23番機として配属された。階級は軍曹だが、新兵にもかかわらず赤と黒のパーソナル・カラーで塗装がほどこされた小隊長機VF−1Jバルキリーを使用。
この特別待遇については、フォッカーの後輩への心づかいという説と、もともとエアレーサーだった輝の操縦技術の高さを見こまれたという説がある(もっとも説得力があるのは、「主人公だから」という身も蓋もない説だが)。

未沙がダイダロス・アタックを考案し、マクロスの危機を救ったことで、未沙がたんなる一航空管制官にとどまらず、マクロスにおいてきわめて重要な存在であることが印象づけられている。

輝と未沙は第1話「ブービー・トラップ」からすでに言葉をかわしたことのある間柄だったが、ほんとうの意味でおたがいを知りあうことになったのは本話から。

エキセドルが土星のことを「この星系の第5惑星」といっているのはまちがい。通常どおり太陽から数えれば土星は6番めにあたり、ぎゃくに冥王星から数えたとしても4番めにあたる。

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